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金木犀の許嫁

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第五話 引っ越しの時その八

「それでだよ」
「生きていられるから」
「子孫がね。そう考えたら」
「神様も仏様もいるわね」
「そして信じているよ」
「そうよね」
「若し神様仏様がいなかったら」
 そうであったならとだ、佐京は話した。
「もうね」
「佐助さん死んでいて」
「幾ら十勇士でもね」
 強者で知られる彼等でもというのだ。
「死んでいたよ」
「そうだったわね」
「他の十勇士の方々もで」
「幸村公も秀頼公も」
「どの人達もね」
 まさにというのだ。
「お亡くなりになっていて」
「皆そうなっていて」
「俺達もいなかった筈だよ」
「あれだけ激しい戦いだったから」
 徳川家康の本陣に迫りそのうえで彼をあと一歩まで追い詰めた、そこまでの激しい戦いであったのだ。
「そこから生き残るなら」
「運が必要で」
「その運は誰がもたらしてくれたか」
「神様仏様ね」
「そうだよ、だから戦国時代の人達も」
 大名も武将もというのだ。
「皆ね」
「神仏を信じていたのよね」
「織田信長さんも」
 よく無神論だったと言われる彼もというのだ。
「あの人なりにね」
「信仰心あって」
「信じていたよ」
「そうだったわね」
「完全な無神論者なんて」
 佐京はそれこそと夜空に話した。
「共産主義者位だよ」
「あれはあれで宗教よね」
「うん、ただね」
 佐京は否定的な感じで言った。
「俺は好きじゃないから」
「共産主義は」
「そうなのね」
「何か凄く不寛容だから」
 そうした感じがするからだというのだ。
「嫌いなんだ」
「そうなの」
「だから」
 さらに話した。
「お願いするよ」
「神様仏様に」
「俺達のこれからを」
「幸せに暮らせる様に」
「皆ね。そして」
 そのうえでというのだ。
「ずっとね」
「その幸せが」
「続く様にしましょう」
「そうしよう」
 佐京も約束した、これで話は終わりだった。
 それで二人で校舎裏を後にしたがそこでだった。
 夜空はふとだ、横を歩いている佐京に尋ねた。
「私達が許嫁になったこと皆知ってるかしら」
「今は知らないと思う」
 佐京はこう答えた。
「まだ」
「まだなのね」
「けれどそのうちに」
「皆に知れ渡るのね」
「そうなる」
 朴訥とした感じで述べた。 
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