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金木犀の許嫁

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第三話 お見合いその七

「何か」
「こちらの認識と違うか」
「そうね」
 両親も否定しなかった。
「どうもね」
「お見合いで絶対と思ったが」
「随分フランクね」
「ご本家はな」
「いやいや。それでもここで決まると思っているよ」
 佐吉は笑って応えた。
「お互い気に入ってくれると」
「そうなんですか」
「僕はな、勘で」
「勘ですか」
「忍者のね」
 まさにそれでというのだ。
「思ってるよ、ここでね」
「夜空ちゃんとですね」
「うちの佐京はお互いに気に入るとね」
「それで、ですか」
「真昼ちゃんも含めて同居してくれて」
 この家にというのだ。
「仲よく暮らしてくれるってね」
「私達がいない間ね」
 神世も言って来た。
「そうなるってね」
「まあ武士の家のしきたりだと」
 佐吉はまた言った。
「お見合いで決まりと殆どな」
「思うわね」
「秀ちゃんがそう思うのも当然だな」
 その彼を見て言うのだった。
「それは。しかし今時お互いの気持ちを考えないお見合いもな」
「ないわよね。だからまずは二人でお話してね」
 神世は笑顔で言った。
「佐京と夜空ちゃんでね」
「それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
「庭に茶を用意してある」
 佐吉は笑って話した。
「そこで抹茶とお菓子を楽しみながらな」
「お茶を楽しむ」
「そうしたらどうだ」
「それなら」
 佐京が応えてだった。
 そうして夜空は佐京と二人で庭に行かされた、木々に池があるその庭の真ん中に敷きものがありそこにだった。
 茶器があった、夜空はそれを見て目を丸くした。
「用意してあるの」
「お父さんとお母さんがしてくれた」 
 佐京は夜空の横からぽつりと答えた。
「朝に」
「そうだったの」
「俺もしようと言ったけれど」
 それでもというのだった。
「主役だからと断られた」
「お見合いの」
「そうだった」
 感情の見られないぽつりぽつりとした言葉だった。
「これは」
「有り難いわね」
「本当に。ただ」
「ただ?」
「俺茶道は不得意だから」
 それでというのだった。
「あまり美味しいお茶煎れられないけれど」
「あっ、それは別にね」
 夜空は佐京にすぐに返した。 
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