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保生樹

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第一章

               保生樹
 中国の苗族の話である。 
 金鶏山の麓の小さな村に劉保生という男がいた、彼は両親と共に毎日熱心に働いていた。太い眉と長方形の顔を持つがっしりとした身体の大男だ。
 彼は日々働いていたが両親は年老いていて彼が一番働いていた、そうして日々を過ごしていたがそんな中でだ。
 村が日照りに襲われた、それで大変なことになった。
「作物が採れないぞ」
「こんな酷い日照りではどうにもならない」
「草の根でも食うしかないが」」
「その草の根まで食い尽くした」
「これからどうすればいいんだ」
「わし等は飢え死にするしかないのか」
「これは困ったぞ」
 村人達は日照りとそれがもたらす餓えに苦しんだ、それは劉の家も同じで彼の家も食べるものがなくなってしまった。
「困ったな」
「ええ、本当にね」
 劉の年老いた両親も餓えに苦しんでいた、そのうえで皺がれた顔で話すのだった。
「こんな日照りははじめてよ」
「わし等も長く生きているつもりだが」
「ちょっとね」
「もう食べるものがなくなった」
「村の周りにも」
「これからどうする」
 夫は妻に問うた。
「一体」
「そう言われてもね」
「どうにもならないな」
「飲みものもないし」
「このまま飢え死にか」
「村の皆と一緒にね」
「せめて水があれば」
 劉は両親の話を聞いて言った、彼もかなりやつれている。
「違うよな」
「ああ、それだけでな」
「全く違うわ」
 両親もそれはと答えた。
「本当にね」
「それだけでな」
「俺ちょっと井戸か水が出るところを探すよ」
 劉は水があればという両親の言葉を受けてこう言った。
「そうするよ」
「水か。何処かにあればいいが」
「何処にもないでしょう、今は」
「蟻の巣があればその近くに水が湧いているっていうし」
 劉は子供の頃村の長老に言われたことを思い出した。
「それじゃあだよ」
「蟻の巣をか」
「まずは探すのね」
「そうするよ」
 こう言ってだった。
 劉は蟻の巣を探した、村の周りだけでなく近くの山々の中にも入ってそうした。そしてようやくだった。
 蟻の巣を見付けた、それは檜の根本であり。
 掘ると忽ちのうちに水がこれでもかと溢れ出た、それで彼はすぐんこの水を村まで引こうと思ったが。
 そこに自棄に顔が険しい鎧兜を身に着けて槍を持つ男が出て来てだった、龍に対して起こる様にして言ってきた。 
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