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水の宮殿

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第一章

               水の宮殿
 日本から来た観光客の工藤凛子はっきりとした目鼻立ちに形のいい顎と一六〇位の背で見事なスタイルの彼女はインドネシアのジャワ島に来てその話を聞いて言った。
「面白そうですね」
「うわ、日本人の好奇心が出ましたね」
 ガイドのシンドゥラ=マターン小柄で丸い顔に褐色の肌で黒い奇麗な短い髪と愛嬌のある顔立ちの彼女が凛子の話を聞いてこう返した。
「こうしたお話をしますと」
「日本人乗ります?」
「乗るんですよ、これが」
 シンドゥラは苦笑いで応えた。
「珍しいところに行きたがって珍しいものを食べたがって」
「観光で来たら」
「はい、それでです」
「いや、この島の海の底にですね」
「宮殿がありまして」
 シンドゥラは凛子にさらに話した、今ふたりはジャワ島中部のある街のカフェテラスで一緒に甘いジュースを飲みつつ話している。
「そこに行くことがです」
「この辺りのスルタンさんのですね」
「王家の守護神がおられます」
「イスラム教徒ですよね」
 ここで凛子はシンドゥラに問うた。
「確か神様は」
「細かいことは考えないで」
「ああ、そうですか」
「初代のセノパティ王が苦行の時にです」
「イスラム教苦行しました?」
「ですから細かいことは考えないで」
 それでというのだ。
「お聞き下さい」
「そういうことですか」
「それでその途中に驚くばかりの美人と出会い」
 そうしてとだ、シンドゥラは甘いジュースを飲みつつ話した。
「一目惚れして結ばれまして」
「苦行は?」
「ですから細かいことは」
「そうですか」
「ひあ、それで海底の宮殿に案内されまして」
 そうしてというのだ。
「そちらで数日過ごして夢の様な日々を過ごし」
「そこで一生幸せに過ごしましたか」
「いえ、数日後戻って来まして」
 それでとだ、シンドゥラは凛子に話した。ジーンズ姿が麗しい彼女に。
「王朝を開きました」
「インドネシアは元々多くの国がありましたね」
「そうです、それでです」
「この辺りはですか」
「そのマタラム王家の治める場所で」
 それでというのだ。
「ジョグジャカルタの王宮には水の宮殿がです」
「ありますか」
「かつてはスルタンのハーレムもあり」
 その宮殿にはというのだ。
「地下には通路が一つあり」
「ああ、何か如何にもですね」
「その美女、海の女王の宮殿に通じています」
「そうなのですね」
「そして代々のスルタンの第一夫人は女王なのです」
「代々の女王がですか」
「流石に親子で同じ人と結婚は」
 シンドゥラは苦笑いで自分と同じ甘いジュースそれを飲んでいる凛子に対して笑って話した。
「出来ないですよね」
「ギリシア神話じゃあるまいし」
「あの神話日本の怪しいゲーム並に酷いですからね」
「そうした漫画とか小説とか」
「ですから流石にそれは」 
 スルタンの代々の第一夫人が全て同一人物ということはというのだ。 
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