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金木犀の許嫁

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第一話 お見合いその三

「八条大学は」
「それで高等部もだから」
「知らないな」
「猿飛佐京君ね」
「そうだ」
「ご本家の人がいるってことは聞いてたわ」 
 夜空にしてもというのだ。
「けれどね」
「それ以上はか」
「知らなくて」
 それでというのだ。
「お話したこともなかったわ、確かうち元々鹿児島にいたのよね」
「そうよ、猿飛家は元々愛媛出身でね」
 今度は母が答えた。
「真田幸村公に従ってね」
「長野、大阪って渡って」
「暫く和歌山にいて」
「大坂の陣で負けたでしょ」
 豊臣家が滅んだこの戦でというのだ。
「それで幸村公が秀頼公をお護りしてね」
「ご先祖様も鹿児島に落ち延びたのね」
「そうよ、十勇士の人達全員がね」
「鹿児島まで落ち延びて」
「そこで暮らしていたのよ」
「江戸時代の間ずっと」
「歴史では秀頼公も幸村公もあの戦いで死んだことになってるけれど」
 大坂の陣ではというのだ。
「実は生きていて」
「鹿児島、薩摩藩にまで落ち延びていて」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「江戸幕府崩壊までそこで暮らしていたのよ」
「幸村公の子孫と十勇士それぞれの子孫が」
「それで猿飛家も残っていて」
「うちはその分家ね」
「そうよ、明治時代に十勇士のお家がそれぞれ関西に出て」
「八条グループで勤務しているのね」
「幸村公のお家もね」
 主筋であるこの家もというのだ。
「八条家グループの企業で働いておられるわ」
「そうなってるわね」
「それで秀頼公は」
 真昼は彼のことを話した。
「ずっと鹿児島におられて」
「そこでお亡くなりになったのよね」
 夜空は姉に応えた。
「けれど息子さんはね」
「こっそり木下家に養子に入って」
「それで分家してもらって大名になって」
「ずっとお家残ってたのよね」
「幕府も見て見ぬふりしていて」
 その人が実は豊臣家の者であるということをだ。
「豊臣家がどうとか言わないと」
「それでよしだったのよね」
「大坂の陣の後捕まえて処刑したことになってたから」
「それで終わったと公にはなったから」
 だからだというのだ。
「それで済ませて」
「秀頼さんのお家は続いていたわね」
「ずっとね」
「それで私達は今ここで暮らしているのよ」 
 母があらためて言ってきた。
「明治から猿飛家から分家して」
「それでよね」
「今こうしているの、ただ猿飛家は忍者のお家だけれど」
「うちは忍者じゃないわね」
 夜空はそれはと答えた。
「そうよね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「うちは普通よ」
「サラリーマンのお家ね、私料理部だし」
「趣味はお料理でね」
「そうだしね」
「将来は料理関係のお仕事よね」
「それに就きたいし」
 そう考えているからだというのだ。 
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