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ソロの石板

作者:テンツク
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第1話 出会い

ロイドが爆発が起こった場所に着き、まず目に入ったのは、地面にできた直径1メートルほどのクレーターだった。そして、そこから2メートルほど離れた岩に寄り掛かる様に倒れている黒髪の少年とそれを心配そうに見る赤髪の少女サリーだった。サリーは白いローブの上に白いマントをはおっているせいでまるで白い鳥のようだった。

「あ、ロイド?」

しばらくするとサリーはこちらに気付いたらしく呼び掛けてきた。

「お前テントで待ってるって_____」

「爆発音が聞こえたから。」

「……そうか。」

発言を遮られ少し苛ついたがそれどころではない。ロイドはやや駆け足で倒れている少年に近づいた。息はしているようだが右のこめかみの辺りから顎にかけて血が流れていた。

「大丈夫かな……」

「息はしてるし命に別状はないだろうが……なんでこんなところに倒れてんのかが気になるけど……多分爆発の_____」

「地雷踏んだってこと?」

「いやいや踏んでたら吹き飛ばされて即死だろ。」

「じゃあ爆発の直前に避けたけど爆風でふっとばされたと?」

「だろうな。だとすれば時間差で爆発するタイプだ。」

ロイドは辺りを見回し岩の出前に落ちていた小さな破片のような物を拾う。この破片で地雷の種類を特定できないかと太陽の光に透かす。

「……流石にこれだけじゃわかんねぇな。」

軽く呟き破片を投げ捨てる。そして辺りを見回し他にも破片がないか探すが見当たらない。

「あっ!ロイド!」

「どうした?」

慌てたようなサリーの声に少し驚き後ろを振り向く。すると少年が少しだけ動き小さな呻き声が聞こえた。

「……っ…ぅ……」

「大丈夫?立てる?」

サリーが手を差し出すと少年は素直にその手に捕まり、ゆっくりと立ち上がった。

「大丈夫?気失ってたけど。」

「ありが……っ!」

少年はお礼を言いかけたが途中で顔をしかめ血の流れるこめかみに手を当てた。

「大丈夫かよ?今救急セットを……」

「今私が魔法で治すから動かないでね?」

「あー……えっと」

無視されて戸惑うロイドを無視してローブの中から腕の長さほどの杖を取り出す。その杖は先端が2つにわかれており、それが球状の青い水晶を包み込むように固定していた。

「マジック・オブ・ヒーラー」

サリーが杖を傷口に近付けて唱えると緑色の光が傷を包み僅か数秒で完全に傷が塞がった。

「あ、ありがとう。ところで君たちは?」

「俺はロイド=アステルム。こっちは_______」

「私はサリー=カラムジャン。近くにある『ヘヴン・エンジェル』ついうギルドに2人で入っているの。」

サリーがロイドの言葉を引き取り、少年に向き直った。フードがついた上着は大きすぎるのか袖を折って自分に合ったサイズにしている。背丈や、雰囲気的には自分達とあまり変わらないが逆に少し幼い顔立ちをしている。

「あなたは?こんなところで何を?」

「えっと……僕はカリス=ブライアルム。とある人を探して旅しているんだ。」

「旅?」

ロイドが思わず聞き返した。この辺りには盗賊のアジトがあり、近くの村は村民を皆殺しにされたり、焼き払われたりとかなり酷い状況になっているため近付く者はほとんどいない。にも関わらず特に危険なこの山までわざわざ登ってくるのは不自然だった。

「あー……カリスだっけ?ここ盗賊のアジトとかがあってかなり危険なんだけど……」

ロイドの問いかけにカリスは首をかしげた。

「いや、初耳なんだけど……」

するとカリスのことをジッと見ていたサリーが口を開いた。

「でも旅をするときは事前に情報収集しておくものじゃないの?」

「いつもはそうしているけど今回は人がいなかったし、村もなかったから人が居るところを探すために山に登ったけどいきなり爆発が起こってしまって……」

「あー……そういうこと。」

ロイドが納得した声でサリーに呼び掛けた。

「どうする?」

「んー……とりあえずギルドに連れてった方がいいんじゃない?」

「まぁそうなるわな。」

しばらくしてサリーがカリスに言った。

「悪いんだけど私達と一緒にきてくれる?」

「え、いや僕は人をさがさないといけないし……」

「でもここはかなり危険だから私達がタウンまで送っていくわ。町の方が情報も集めやすいでしょうし。」

「そうそう!この辺りは危険だからなぁ?お嬢ちゃん?」

突然後ろから声がしてサリーがふりむくとほぼ同時に盗賊の腕がサリーを羽交い締めにし、ナイフをつきつけた。

「ちょっ!いつの間に!?放してよ!」

「さぁてめぇら武器を捨てろ。さもねぇとこい_______」

盗賊が脅しの言葉を言い終わるまで早く、乾いたおとが響きロイドが撃った弾丸がナイフに直撃しナイフが宙をとんだ。

「サリー!」

「わかってる!」

盗賊が怯んだ隙にサリーが素早く杖を取りだし呪文を唱える。

「『マジック・レベレンス・インハパクト』」

呪文が唱え終わった直後大きな衝撃波が発生し盗賊がふきとばれた。

「ぐうぅ!」

盗賊はそのまま思いきり地面に叩きつ
けられてうごけなくなった。

「死んだ?」

「いや、気絶してるだけだろ。」

完全に地面で伸びている男を見て2人が話している後ろでガサリと音をたて茂みが小さく揺れる。2人が気付いた時には既にナイフを持ったもう一人のとうぞくがとびかかっていた。

「はぁぁっ!!」

しかし2人にナイフが当たる寸前でカリスが飛び出し、服の内側に隠していた木刀を居合切りの様に叩きつけた。

「うげぇ!!」

盗賊は痛々しい叫びを上げ地面に倒れる。そこにロイドが銃口を向けて言った。

「ロープコマンド」

ロイドの声と共に銃口から蛇の様に這い出した縄が盗賊をきつく縛り上げた。

「な、何を……」

「黙れ。」

盗賊の言葉をロイドが遮り、ミノムシのように丸まった盗賊を崖の近くまで蹴って転がして行くのを見てカリスが意見した。

「あー……ちょっと?流石に殺すのは」

「殺さねぇから安心しろ。まぁ、こいつの答え方にもよるがな。」

そのままロイドは盗賊を縛り付けている無数の縄の内の三本を近くの木にくくりつけ、そのまま蹴り落とす。

「ひぃっ!?」

「カリスさん?ギルドの皆がああいう人じゃないから誤解しないでね?」

「ああ……はい。」

ロイドの冷酷な態度を見てサリーが慌てて言うがそれもきこえていないロイドは崖に宙吊りになっている盗賊を脅す。

「さてと、アジトの場所をいってもらおうか。言わないとここから落とす。」

「だっ、誰がてめぇなんかに!」

盗賊が虚勢を張るが半分泣きそうになっていた。

「そうか。1本目。」

「ひぃっ!?」

ロイドがロープを1本切ったことにより、ガクンと盗賊が下がる。

「とっとと言え。場所は?」

盗賊は情けない声で聞き取れないことを叫びながら暴れたがロイドが2本目のロープを切るとすぐに収まった。

「これで最後だ。アジトの場所を言え。」

ロイドは判決を待つ囚人に死刑を言い渡すかのようにゆっくりと、しかしはっきりと言った。すると盗賊はもうたくさんだとばかりに叫んだ。

「わかった!滝だ!滝だよぉ!滝の裏に隠されてる洞窟だよぉ!!わかったら早く上げてくれぇ!!」

「……オッケー。サリー頼むわ。」

「了解。『テレムソレール』」

サリーが呪文を唱えた瞬間、盗賊の目が虚ろになり、体から力が抜けた。

「おっけー。眠らせたからあげていいよ。」

「了解。」

ロイドが盗賊を上げている間にサリーは携帯電話を取りだし何処かに電話をかけた。

「あ、はい。サリーです。……はい。終わりました。……はい。わかりました。あ!あと欠けてたのも見つかったんですが……はい。ありがとうございます。はい……はい。では後程。」

サリーは携帯電話を切ると盗賊を木の下に寝かせているロイドの元へ向かった。

「やっと終わった……」

「ロイド!嬉しいニュース!」

「どうした?」

「一緒でもいいってさ!」

「何が?」

「え?だから……ほら、私達のところって1人たりないじゃん?色々あったし……」

「あぁー、でもしょうがないだろ。別に2人で………お前まさか。」

「うん。カリスも連れて行っていいってさ。」

あまりにも突然なことに呆れた表情しかだせなない。

「……待て。今日会ったばかりだぞ?」

「別に日数とか関係ないじゃん。」

「いやいや……それに本人に許可とってないだろ。」

「あぁ……ギルドが云々ってやつなら一緒に行くことにしたよ?よく考えたらギルドにいた方が情報入るかもしれないし……」

あっさりと答えられロイドは思わずため息をこぼした。

「ギルダーってかなり大変だぞ?魔物討伐とかくるし、今日みたいなことはしょっちゅうだし。てかお前戦えんのか?」

「あぁ……剣技なら少しはできるよ?」

「まぁサリーがあそこまで言ってるならもう何言っても聞かないだろうし……もういいや!とりあえず、よろしくな。」

軽く笑い手を差し出す。カリスはロイドの手をしっかりと握り、ロイドもまたカリスの手をしっかりと握った。
カリスは2人の仲間と出会い、新しい世界に足を踏み入れた。いつも通りの風も違うようにさえ感じる。
カリス、ロイド、サリーはゆっくりとギルドへと向かって行った。そしてカリスは何故か消えた弟、ホルンをとても身近に感じた。 
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