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イベリス

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第百三十一話 吹っ切れてその十一

「最後甲子園で巨人に負けて」
「巨人が優勝して」
「勝ったらな」
「阪神が優勝で」
「それでな」
 昭和四十八年最終戦である。
「ボロ負けしたんだよ」
「九対零で」
「そうなってな」
 それでというのだ。
「もうな」
「ファンの人達が激怒して」
「そしてな」
「球場で大暴れして」
「大変なことになったんだよ」
「選手の人達が殴られたり」
「王さんもな」 
 この人もというのだ。
「止めようとした解説やってた村山さんもな」
「村山実さんですね」
「ガチの阪神の人なのにな」
 それでもというのだ。
「殴られたんだよ」
「滅茶苦茶ですね」
「本当にな」
 実際にというのだ。
「そんな有様になったんだよ」
「有名なお話ですね」
「俺まだ生まれてなかったけどな」
 その頃の話だがというのだ。
「もうな」
「大変なことで」
「今もな」
「言われてますね」
「あんな時もな」
「最後の最後で負けても」
「それでもな」
 どうしてもというのだ。
「紳士的にな」
「受け入れてですね」
「一人で泣けばいいんだよ」
 そうすればというのだ。
「本当にな」
「そうですよね」
 咲もそれはと頷いた。
「やっぱり」
「ああ、そうしたこともな」
「覚えておくことですね」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「正しくな」
「本当にそうですね」
「ああ、お互いにな」
「マスターもですね」
「当然だよ」
 それはというのだ。
「本当にな」
「そこもですね」
「そしてな」
 それでというのだ。
「やっていこうな」
「そうします」
「それじゃあな。それとな」
「それと?」
「ヤクルト今年あと少しでも」
「頑張ることですね」
「そうだよ」 
 何といってもというのだ。
「最後の最後までな」
「そうですよね」
「応援もな」
 自分達もというのだ。
「ちゃんとな」
「応援することですね」
「そうだよ」
 まさにというのだ。
「皆頑張ってるんだ」
「チームの」
「だったらな」
「応援することですね」
「チームが辛いなら」
 そうした時ならというのだ。
「するんだよ、いいよな」
「そうします、辛い時こそ応援するですね」
「頑張るんだよ、辛い時に頑張れば」
「チームも報われますね」
「その時の努力がな」
「応援も同じですね」
「やっぱり報われるんだよ」
 そうなるというのだ。
「ずっと強いチームなんてないさ」
「いい時も悪い時もありますね」
「そのこともわかることだよ」
「ですね、応援もしていきます」
 咲はマスターに明るい笑顔で応えた。
「ヤクルトも」
「俺は西武でな」
「お互いに応援ですね」
「そうしような、日本シリーズで会おうな」
「ですね、前も会いましたけれど」
 このカードは三度あった、一九九二年と一九九三年そして一九九七年である。一九九二年以外はヤクルトが勝っている。
「またですね」
「会おうな」
「その時は敵味方ですね」
「けれどお互いにな」
「応援しましょう」
「そうしような」
 マスターも笑顔になっていた、咲もそうだった。もう咲は前を向いていた。完全にそうなっていた。


第百三十一話   完


                   2023・10・15 
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