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魔法少女リリカルなのはvivid 車椅子の魔導師

作者:月詠
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十二話

 
前書き
ミルテvsアインハルト、後半戦開始!

クロムsideからの開始となります 

 
ミルテとアインハルトさんの試合が開始して、数分。戦局がひっくり返ろうとしていた


「“重ノ型”。あれを使われた時は流石に負けたよね」

≪はい。あの型には些かチートくさい技がありますからね≫

僕達がまだ初等科の頃、僕、ミルテ、アスはいつも模擬戦をして、鍛えあってたんだ。大体の戦勝率は僕がトップで二人に勝ち越してた

アスには隙をつかれて、何度か負けた事はあるけど、ミルテには完全な勝ち越しだったね

「でも、ミルテが唯一僕に勝った時に使ったのが、あの“重ノ型”だ」

あの時は驚いたなー。何て言ったって、逃げ道が何処にもないんだから……

「あの頃はあの技の仕組みすら理解できなかったけど、今ならちゃんとわかる。でも、鋭い洞察力を持ったアインハルトさんをどこまで混乱させられるかな?」

≪すぐに破られるような気もしますけどね≫

ロンドは何気酷いよね


ミルテside

「久々だね。これを使うのは……」

≪はい。一年最後の試合って事もあって、残留魔力も相当あります。いつも以上の威力が出るかも知れませんよ。レディ≫

それならそれで大いに結構だよ!

「私は今出来る全力の力でアインハルトさんに勝ちに行く!ただそれだけだよ!」

気を足に集中させ、地面を蹴る。そして、一瞬でアインハルトさんの後ろを取る

「ッ!?」

すぐに気付いたのか、前を向いたまま左手で受け止め、それを軸に回転し、反撃に繋いで来る

「それは予想済み!」

槍をそのままに、体だけしゃがんで避け、さっき同様の歩法で後ろに下がり、距離を取る

「さっきのはなんですか…?(まるで気配を感じませんでした。しかもあの間合いを一瞬で詰めて来るなんて……)」

「“縮地”って言われる歩法って私は聞いたかな。元々はクロムくんがよく使う歩法で、いろんな戦術に応用が出来るから、覚えておいても損はないって言われて覚えたんだよね」

でも、普通に反応してきたから驚いたよー。アインハルトさんは雷の変換資質でもあるのかな?

縮地は本来、気配も悟らせないのが完璧な形だから、私のはまだまだって事かな。いや、前のクロムくんみたいに完全に気配すら感じさせずに移動するのは普通は無理なような気がしてならないよ

「なるほど――――」

アインハルトさんが少し腰を落としたかと思ったら、

「こう言う事ですか」

自分の背後からアインハルトさんの声が聞こえた

「えっ!?」

そのまま顔に一撃、重いのをもらってしまう。空中で体勢を立て直し、少し距離を取ったところに着地する……

「はぁ……はぁ……」

おかしいよっ。私が半年かかった縮地をまだ荒いけど、たった一回見ただけであそこまで出来るなんて……!?

「私は敵に回しちゃいけない人を敵にしちゃったのかな?グングニル」

≪まさかあそこまでとは思ってもみませんでした。戦いのプロとは言いませんが、それに近い存在のようですね≫

「……(それにしても、さっきの一撃。左手で受け止めた時、もの凄い揺れを体に感じましたが、あれは一体……)」

でもさっきの一撃が効いてないってわけではないはずだよね!

「エシェル流、地響き!」

槍を地面に叩き付ける

「ッ!?」

すると、もの凄い揺れがアインハルトさんを中心とした特定の範囲で起こる

「くっ……!」

揺れが強すぎて、体勢を保っていられなかったのか、地面を蹴って上に逃げるアインハルトさん

「無駄だよ。エシェル流、振風!」

槍を何もない空に向かって振ると、何かに当たったように止まり、次の瞬間……

・・・・・
空が揺れた

「なっ!」

空での揺れでバランスを崩すアインハルトさん

「空駆け!」

            ・・・・・・・・・・・・
一度、地面を蹴って飛び、空に足をつけてさらに蹴る

「はぁ!!」

一瞬でアインハルトさんの真上まで移動し、アインハルトさんに向かって槍を振り下ろす

そのまま、地面に叩きつけられるアインハルトさん……

≪ブーストギア1st≫

空中で移動魔法を行使し、距離を取った場所に着地する

「なるほど……」

煙を振り払い、少し傷があるアインハルトさんが姿を現す

「収束魔法ですか」

「あはは……。うん。正解」

私が使う“重ノ型”の正体。それは収束魔法。でも、撃ち出す為の収束魔法ではなく、残留魔力を集めて束ねて、自分の力を最大限まで引き上げる。グングニルを介して、私にもその力は流れてくるって言うのがデメリットかな

「そうですか。(これは少し不利な状況ですね……)」

「さぁ……。行くよ?(アインハルトさんは収束魔法しか気づいてない。流石にこれを気づかれちゃうと、すぐに対処とられちゃうから、いいんだけどね)」

            ・・・・・・・・・・・・・
そう。アインハルトさんは収束魔法しか気づいていない

私としても、これを気づかれちゃうとこの不利な状況がさらに不利になる。だから、バレるのだけは避けたいけど……

「気づかれてない事を祈ろうかな!」

魔力収束を開始する。止まっていると格好の的になってしまうので、接近しながらだけど

でも、残留魔力がここまで大量にあると、出力制御が難しくなっちゃう可能性が高いんだよね……

「ま、でもそこはグングニルを信じるからね」

≪お任せ下さい。レディ≫

もう一度、縮地でアインハルトさんの後ろに回り込む

「同じ手では、格好の的です」

≪ブーストギア2nd≫

地面を滑るように一瞬でアインハルトさんの前に移動し、腹部へ叩き込む

「はぁ!」

アインハルトさんの体がくの字に曲がったと思った瞬間、その場から動けなくなった

「……掴まえ……ました…!」

少し息が荒いアインハルトさん。自分の体を見てみると、体中にバインドが巻き付き、完全に身動きが出来ない状態に陥っていた。

これってカウンターバインド!?

そんな、じゃあさっきの攻撃を全て先読みして、わざと当たった……?

「防御を全て捨ててカウンターバインドを狙うなんて!」

「――――いきます…!」

アインハルトさんが右腕を振り上げた。何かを打ち下ろすかのような構えにも見えた

「覇王……断空拳!!」


アインハルトside

「そこまで!勝者、アインハルト・ストラトス!」

「はぁ……はぁ……」

なんとか勝つ事が出来ました。ミルテさん。予想以上に強かった

             ・・
さっきの一撃だって、最後の直感が当たってなかったら、負けていたのは私だった……

だけど、あの力はやはり収束魔法だけの力ではなかった。でもわからなかった

「ありがとうございました。ミルテさん。またお手合わせお願いします」

倒れて意識のないミルテさんにそう言って、その場を離れる。最後に見えたミルテさんの顔はどこか笑っていたようにも見えました


控室に戻り、姿と服装を元に戻し、控室を出ます

「アインハルトさん」

その時、後ろに誰かから話しかけられました


クロムside

「クロムさん?どうしたんですか?」

待ち伏せ成功。ま、用って程の事でもないんだけどね

「まずはお疲れ様。強かったでしょ?ミルテ」

「はい。考えた以上でした」

まー。僕も見ていてわかったけど、ミルテはこの二年で一気に成長した。そして未だに成長し続けている。戦術も型もまるで渇いた砂が水を吸うかの如く覚えていく

「それと、医務室にはちゃんと寄って行こうね?」

「な、何故ですか?別に怪我とかは……」

「最後のミルテの一撃。少なくとも収束魔力の四割は使ってただろうから、アインハルトさんの体には何らかの影響が出るはずですよ?例えば」

時間差で骨にひびが入るとか

そう言った瞬間、アインハルトさんの表情が少し歪んだ

「やっぱりね。ほら、それくらいなら回復魔法で治すから、医務室に行くよ」

「で、ですが!ミルテさんはいいんですか!?」

「ミルテもアスも医務室で寝てるから、行くんだよ」

二人共くたばっちゃったからねー。一年で気絶して負けたのはあの二人だけだよ。ま、それほど他の試合のレベルが低かったって事なんだけどね

「それに、足も少し捻ってるよね」

「……捻ってなんていません」

それは肯定と同じ事だよ

「見様見真似で縮地を使ったんだ。着地に失敗して、足捻ってるよね。ちゃんと見てるからね?引き摺ってこそないけど、足に気を遣いながら歩いてることぐらい」

「……」

プイっと顔を背けるアインハルトさん

「ほら。行きますよ」

「あ、引っ張らないで下さい…!ちゃんと自分で歩きますから…!」

車椅子の動かすスピードでアインハルトさんを引っ張って医務室に向かう


「失礼します」

「あら?逢引きならお断りよ」

やっぱり来るんじゃなかったかな?

「誰が逢引きですか。ミルテとアスの様子はどうですか?」

「二人共、擦り傷とかは多いけど、別に骨が折れたとかひびが入ったとかはないわ」

あれで骨が逝ってないってすごいなー。リーヴァの一撃なんて絶対、肋骨の一本や二本持ってかれたと思ったんだけどな

「それじゃあ、こっちもお願いします」

アインハルトさんを前に出す

「あら?ミルテちゃんの対戦相手のアインハルトちゃんじゃない。どうしたの?」

「最後のミルテの一撃が時間差で骨にひびを入れたみたいなので、診断お願いします。治せるようだったら、治しちゃってください」

「わかったわ。いらっしゃい」

流石に観念したのか、大人しく先生の近くに行くアインハルトさん

「さて」

この模擬戦場に備え付けてある医務室のベッドは全部で五つ。内二つだけがカーテンが閉まっている状態。まだ寝てるのかな

「そーっと」

「俺は起きてる……」

一番端のベッドを覗いてみると、アスが起きていた

「みたいだね。リーヴァはどうだった?」

カーテンの中に入り、ベッドの横に車椅子をつける

「完敗……だ」

「そうかな?完全敗北ってわけではなさそうだけど?」

リーヴァだって、最後の方は立ってるのもやっとの状態だったろうし……

「でも、専用デバイスとオリジナルの魔法には驚いたね。いつからだい?」

「魔法は半年くらい前だ……。デバイスはつい二日前に届いた…」

二日か。よくあそこまで使いこなせたね。二日だとまだ慣れなくて難しいくらいだと思うけど

「二日徹夜して慣らした……」

なるほど、だから勉強がおろそかになっていたわけだね

「それにしても、アスが収束魔法に走るとは意外だったな」

数で攻めるタイプは複数操作を基本の戦術にするからね

「昔、お前俺に言っただろ…?」

「え?何を?」

「アスには必殺級の技や魔法がないよねって……」

あー確かに言ったような気がする。でも、あの時はまだ汎用型を使ってた時だったからね

「だから、俺なりにたどり着いた必殺級の魔法……。それが収束砲だ」

「でも、アス。今のレイヴンには収束魔法は負荷が大きいよ」

カートリッジシステムがないのも痛手だしね

「ああ。ホントは今回は使わない気だったんだがな……」

「最終的に使って、それを逆手にとられちゃ意味ないと思うよ?」

「うっ……」

ま、反省する点はいくつもあるってところだね

「そんなアスにとっておきな招待状」

「なんだ……?」

モニターを表示して、招待状の画面を映す

「これは?」

「どうやら試験休みを利用した特訓合宿らしいんだ。それに僕が誘われたから、道dゲフン!アスも誘おうと思ってね」

「今、道連れって言おうとしなかったか……?」

気のせいだよ気のせい。誰が親友を道連れすると思う?

「お前ならりやかねん……」

「信用ないなー」

ま、昔から色々とやってきたからね

「でも、何故お前に……?お前はその足だし、特訓には参加できないだろう?」

「いや、とりあえず説明するとね」


~回想~

昼休みが終わり、アス達が先に模擬戦場に行った後。教室でのんびりしてた時……

≪マスター。ノーヴェさんから通信です≫

「ノーヴェさんから?何だろ。繋いで」

≪はい≫

モニターが表示され、そこにノーヴェさんの顔が映る

「よっ。クロム。今、大丈夫か?」

「ええ。大丈夫ですよ」

「良かった。んじゃ早速なんだけどよ。お前、試験休みは暇か?」

試験休み?あー…別に予定は入れてなかったような気がした

「はい。暇ですけど」

「じゃあよ。合宿いかねぇか?」

「合宿……ですか?」

合宿って何の?

「ああ。特訓合宿なんだけどよ。あたしや姉貴もいるし、ヴィヴィオ達もくるんだ。どうだ?」

「嬉しいお誘いですが、この足ですし、皆さんに迷惑をかけてしまいます」

ホントに嬉しいお誘いだけど……

「いや、お前にはただの休養って意味でも来て欲しいんだよ」

「休養ですか?そこまで疲れてはいませんが……」

「アインハルトの面倒見たりで疲れてるだろ?主に精神面が」

あはは……。アインハルトさんが近くにいなくてよかった

「合宿場所は回りが森だし、安らげるだろう。1人がいやなら友達連れて来たっていいし」

「んー…」

確かに安らげるような気がしますけど……

「しかも魔導師ランクAAからオーバーSのトレーニングも見られる」

「ッ!?」

魔導師ランクAAからオーバーSのトレーニング。あの二人のレベルアップにはいいかも知れない。後は、理論だけだった物の試運転だって……

「どうだ?」

「ええ。友達も連れて行っていいとの事でしたよね?」

「ああ」

だったら、了承しようかな

「わかりました。二人ほど連れて行きます」

「ああ。ありがとうよ。んじゃ詳しい事は後でメールする」

「はい」

それで通信は切れた

~回想終了~


「ってわけだ」

「なるほどな……。確かに惹かれる物はあるな」

アスは少し考える仕草を見せ、こう言った

「わかった……。俺も試験休みは暇だ。今回の反省も含めて、一緒に行こう……」

「助かるよ。詳しい内容は後でメールするから」

「ああ」

さて、次はミルテか。起きてないと思うからメールうってっと……

「俺はもう帰るぞ……」

そう言ってベッドから出て、立ち上がるアス

「先生。もう大丈夫ですので……」

「あら?そう?だったら、気を付けて帰るのよ」

「はい。失礼しました……」

アスはさっさと帰ってしまった

「次はっと」

そっと、ミルテの寝てるベッドにカーテンをめくり、中を覗く

「まだ寝てるみたいだね」

ミルテは規則正しい寝息を立てて、眠っていた

「襲っちゃダメよー」

「誰も襲いませんよ」

あの先生の頭はそう言う事しかないのかな?

ミルテが寝ているベッドの横に車椅子をつけて、ミルテを見る

「ちゃんと治してもらってるね。でも一応」

ミルテの上に手をかざす

≪回復魔法開始します≫

僕の足元に鈍銀色のベルカ式魔法陣が展開され、ミルテに回復魔法をかける

少しすると、ロンドが止める

≪どうやらほとんど完治しているようです。補助として、擦り傷とかを念入りに治癒しておきました≫

「ありがとう。ロンド」

女の子だからね。傷痕なんて残ったら可哀想だからね

「ま、よく頑張りました。ミルテ」

優しくミルテを頭を撫でる

「実力差があったとは言え、あそこまでアインハルトさんを追いつめたなら満点だよ。ミルテとしては納得がいかないと思うけど……」

負けず嫌いなところがあるからね。昔は粘られたあげく、重ノ型を使われて負けたからね

「だから、もっと強くなろう?ミルテが強くなりたいって言うんなら、僕は協力するから」

聞こえていないってわかっていても話してしまうのは多分、普段は言えないからだと思う。面と向かってなんて悪いけど言えない

「じゃあ、僕はもう行くよ。また明日ね」

撫でていた手を離し、カーテンから出て、先生のところに行く

「先生。この後はお暇ですか?」

「あら何?お誘い?」

言い方が悪かったかな?

「いえ、もしお暇ならミルテとアインハルトさんを送ってもらいたいんですよね」

外はまだ明るいけど、二人共一応まだ怪我人だからね。無理して歩いて帰るのはオススメ出来ないかな。え?アスはいいのかって?男は多少の無理が付き物だからね

「クロムさん。私は別に1人でも……」

「ええ。別にいいわよ」

アインハルトさんの言葉を遮るように先生が言葉を重ねる

「ありがとうございます。では、僕はこれで失礼します」

そう言って、僕は医務室を後にした


先生side

全く。あの子はホントに食えないって言うかなんて言うか

「それで?起きてるんじゃないの?ミルテちゃん」

「ううぅ…。気づいてたんですか?」

カーテンを開けて、顔を赤く染めたミルテちゃんがこちらに来る

「ええ。その様子だと、クロムちゃんに何か言われた?」

「頭撫でられながら、一緒に強くなろう的な事を……」

思い出したのか、さらに顔が赤くなるミルテちゃん

「いいわねー。青春してて。さて、二人共、送って行くわ」

「いえ、それは先生に迷惑が…」

「大丈夫ですよ。もう普通に歩けますから」

アインハルトちゃんもミルテちゃんもそっけないわねー

「ダメよ。貴方達の保護者みたいな人からのお願いなんだから」

「………わかりました」

「わかりました」

渋々了承してくれた二人。さて、送りながらどんな事を聞きましょうかね


クロムside

「ロンド。明日はいよいよ僕達だね」

≪はい。大丈夫ですか?≫

「うん。大丈夫だよ。誰が相手になるかはわからないけど、少しだけ本気でやってみたいと思うんだ」

だから、ロンドには少し試してもらいたい事があるんだ

≪試してもらいたい事ですか?≫

「うん。これが出来れば、多分アインハルトさんと戦った時より力を出せると思うんだ」

前に聞かせてもらったけど、前にアインハルトさんと戦った時はロンドいわく、僕の全盛期の三分の一も出てないとか……

「せめて三分の一は出せるようにしたいんだ」

≪ですが、マスター。マスターは……≫

「うん。多分フィールドに立ったら、記憶が邪魔して戦えないかも知れない。でも、そろそろいい加減、乗り越えなくちゃさ」

この試験をその切っ掛けにしたいんだ

≪………。わかりました。それで?私が試す事とは?≫

「ああ、うん。家に帰ってから説明するよ」

僕も強くならなきゃいけないよね。いろんな意味で……


翌日。テスト最終日。全ての筆記試験が終了して、昼休み

教室でいつもの四人組で話している

「クロムくん。朝にも話したけど、合宿。ホントに私も一緒に行っていいの?」

「うん。明日は試験結果が渡されて、その後に四時限だけだから。終わったら、僕達は次元港に直行」

それが昨日、ノーヴェさんからのメールで知らされた詳しい内容だった

「次元港って事は合宿場所は他の次元世界か?」

「そう言う事になるね。アインハルトさんも参加するんだよね?」

「あ、はい。昨日、ノーヴェさんからお誘いいただきましたので……」

アインハルトさんは別ルートで合流だね。詳しいところにはそんな事、書いてなかったから

「私はノーヴェさんと合流してですね」

「じゃあ、次元港で会えるんだよね?」

「はい。ミルテさん」

ミルテとアインハルトさんは昨日の一戦から、さらに仲良くなった

「それじゃあ、今日はお前だな……。クロム」

「うん。わかってるよ」

昨日試した事も上手くいったし、大丈夫のはずだ

「頑張ってね。クロムくん!」

「頑張って下さい。クロムさん」

二人から応援されちゃ、負けるわけにはいかないかな

「一応、レイヴンで撮影しとくか……?」

「あ、うん。お願いしていいかな?アス」

「ああ……。了解」

キーンコーンカーンコーン

昼休み終了のチャイム。さて、これから模擬戦場に向かわなきゃならないね

「じゃあ、行ってくるよ」

「ああ…」

「いってらっしゃい」

「はい」

三人は後々、観客席の方に来るっては言ってたから大丈夫だね

「さて、ロンド」

≪はい。あれだけ試したんです。大丈夫です。上手く出来ます≫

うん。そうだね

僕は少しスピード上げて、模擬戦場に向かった


模擬戦場の控室は広く作られている。それはランダム組が圧倒的に多いからである

「やっぱり多いね」

≪そらそうですよ≫

速めに来たと思ったけど、もう十数人は来ていた

さて、組み合わせは……

控室の奥の方にランダムの組み合わせが掲載されている。別に試合前に呼ばれるから、見なくてもいいんだけど、対策とかを考えたい人とか見るんだよね

「僕は……あった」

第五試合。早い方だね

≪相手の方は聞いた事ありませんね≫

「んー…確かに、一年で強いって言われるのってリーヴァとかだもんね」

てことはほとんどわからないってとこかな

「待機してようか」

≪はい。試合は他の試合はどうしますか?サーチャーは予め飛ばしてありますから、リンクすれば見れますが……≫

「じゃあ、お願い」

昨日見ていたところに仕掛けたのか、その場所から見た映像がモニターに映し出される

さて、自分の試合までは観戦してようか


「クロム・エーレン。そろそろだ。準備しろ」

「あ、はい」

突然、扉が開き、先生がそれだけ言って、出て行った

とりあえず僕の前の四戦を見た結果。そこまでレベルは高くなかった

控室を出て、外にいた先生の後に続いてフィールドに向かう

「では健闘を祈る。無理はするな」

珍しいな。この先生がそんな事を言うなんて……

「ええ。ありがとうございます」

そうとだけ言い、フィールドに入る

「ッ!!」

フィールドに入った瞬間、頭の中で何かが暴れている感覚に襲われる

昔の記憶がドンドン、フラッシュバックする……

つい、片手で頭を押さえてしまう

≪マスター!!≫

大丈夫だよ。ロンド。逃げちゃダメだ。ちゃんと向き合うんだ……

「……すー……はー……」

大きく深呼吸をして、落ち着かせる

「うん。大丈夫。行けるよ」

≪はい!やりましょう!≫

フィールドの中心に行く前に車椅子のひざ掛けを掴んで、一気に立ち上がる

その瞬間、観客席がざわついた

「ロンド」

≪はい。浮遊魔法を起用します≫

                      ・・・
そして、足に浮遊魔法を使い、立っている状態に見せる

その状態で相手と間、三メートル地点まで行く

相手は汎用型デバイスで、剣型。近接系ですか

「ロンド。Set up」

≪Set up≫

バリアジャケットが展開される。僕のバリアジャケットは黒と鈍銀色を基本としたコートタイプの羽織に動きやすいタイプのズボン。そして手には指だけが出たレザーライトグローブ

≪あちらも準備は出来てるみたいですね≫

あっちもバリアジャケットを展開し、準備万端って感じだ

「では試験、開始!」

開始の合図と同時にシューターを二つ展開し、撃ちだしてくる

「へー。二発だけど、展開速いね」

でも、僕も一撃目の準備は終わってるんだよね。右手にバチッと電気が走る

「ま、届かないよ」

右手を振り、溜めておいた電撃をシューターにぶつける

「むっ……」

衝突した瞬間、大量の煙幕が視界を覆う

「煙幕弾……」

アスみたいですね。こんなに多くはださないけど

「はぁ!」

後ろからの襲撃。はっきり言って、まるわかりかな

「はいはい。わかってたよ」

少し首を動かして避け、腕を掴みそのまま背負い投げをする

でも、地面につく前に手を放したから、バウンドして吹っ飛ぶ

「煙幕弾で視界を覆い、後ろからの襲撃で最初の一撃を取るってところかな」

誰でも思いつくね。でも、このパターン昨日も見たような……

「それじゃあ、ロンド。行くよ」

≪はい≫

僕は魔力変換資質で変換した魔力を両手両足の指先に集中させる

「雷装……展開!」

僕の両手両足には巨大な雷の爪が展開された


アインハルトside

「あれは…?」

クロムさんの手と足に巨大な爪でしょうか?

「うわー。クロムくん。少しスイッチ入っちゃったのかな?」

「あいつがどんなつもりで立ってるように見せたり、雷装を使ったのかはわからんが……。いつものクロムではないな」

いつものクロムさんじゃない?一体どういう……

「ストラトスには少しわからないだろうな……。あの雷装、俺もミルテもクロムが使ってるのを見るのは実に二年ぶりになる…。それにあいつは立てなくなってからは、ずっと射撃系の魔法しか使ってなかった……」

「それがいきなり近接になるし、さっきの背負い投げだってブレがなくて綺麗に決まってるし。とても二年間、特訓の類をしてなかった人とは思えないよ」

一体、どう言う事なんでしょうか?


クロムside

「さて、行こうか」

縮地で相手の後ろに回り込む

「ッ!?」

反応が遅い

「轟雷双爪斬!!」

両手の雷の爪で相手を切り裂く。相手は空を舞った……

ま、非殺傷は解除してないから、少しの火傷と擦り傷で済むと思うよ

「しょ、勝者!クロム・エーレン!!」

圧倒的な速さでその試合を終えた


控室に戻る前にジャケットを解除し、車椅子に座る

「お前、まだそんなに戦えたんだな」

先生からそんな事を言われる

「ええ。まだ現役を引退した覚えはありませんから」

そう言って、僕は校舎の方に戻った


教室に戻り、帰る準備をする

「ふう。どうだった?ロンド」

≪雷装の展開には問題なし、虚空瞬動にも異常はなし。合格ですね≫

「良かった。後はあれに戻す事だけだね」

もう絶対に抜かないと決めた物を……

≪それはまた合宿中にしましょう。明日の準備もありますから≫

ま、仕方ないよね

「先に帰ろうとするな……」

アス達も戻ってきたみたいだし……

「ねぇクロムくん。これからみんなで明日からの使う物の買い出しに行かない?」

「買い出し?んー…確かに僕も色々と不足していた物があったから、行こうかな。アインハルトさんは?」

「私もご一緒します」

ま、アインハルトさんも女の子だって事で……

「それじゃあ、さっさと行こう……。ミルテがいるからいくら時間があっても足りない」

「それはどう言う意味かな!?アスくん!」

あー…確かにミルテの買い物はいつも時間がかかるからね

「速いとこ行こうか」

「クロムくんまで!?」

そんな会話をしながら、僕達四人は色々と物が揃うデパートに向かった


「あ、アインハルトさん!あっち、見てみよう!」

「え?ちょっミルテさん!?」

ミルテに引っ張って行かれてしまうアインハルトさん

「今回の生贄はアインハルトさんだったね」

「大体はお前だったからな……」

結構買い物をしてる時のミルテは疲れるんだよね

「ホントは俺もミルテも、一番聞きたがってるのはストラトスだと思うが、お前に聞きたい事がやまほどあるんだが……?」

「だったら、聞いてくればいいのに」

「ミルテは気を遣ったんだろう……。ストラトスはミルテの様子をなんとなく感じ取ってだろう」

だったらアスはなんなのさ

「空気を読んでだ……」

「そう。別に聞かれても困る事ではなかったのにな」

ま、そう気を遣ってもらってるなら、今はまだ話さないでおこうかな

「クロムくん!アスくん!こっちこっちー!!」

「元気だねー」

「買い物はミルテのストレス発散だからな……」

こんな感じで明日からの合宿に向けての準備が着々と進んでいったのであった


明日からの合宿。ノーヴェさんは療養って言ってたけど、多分休んでる暇はなさそうです


 
 

 
後書き
十二話です

今回は文字数が多くなってしまいましたが、次からはいつも通りの文字数に戻ると思います

更新スピードは頑張ってみます!

次のお話はいよいよ原作二巻の中心!オフトレに入っていきます!!

感想、評価、誤字報告、指摘待ってます

では次のお話で…… 
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