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ここ一番で頼りになる

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第一章

               ここ一番で頼りになる
萩野司は通っている高校のワンゲル部では目立たずあまり頼りにされていない、参加することに意義がある部員だと思われている。
 面長で優しい顔立ちで黒髪をマッシュルームカットにしている、背は一七〇位でひょろりとしたスタイルだ。
 雑用は無事にこなすがそれだけでいざという時に頼むとかやってくれとか言われるタイプではなかった。
 その彼が所属しているワンゲル部が小学校の野外活動のアシスタントをしたが。
「基本的なことをな」
「教えてチェックしてですね」
「子供達に教えていくからな」
 部長の前川与志則大柄で筋肉質で岩の様な顔の彼は部員達に太い声で答えた。
「言うならアシスタントだ、ただな」
「ただ?」
「子供達の安全は絶対だ」
 このことも言うのだった。
「勿論野外活動の引率の人もいるけれどな」
「野外活動センターのですね」
「それでうちの顧問の先生もな」
 大人もしっかりいるというのだ。
「そうだけれどな」
「それでもですね」
「俺達も一緒にいるならな」
 それならというのだ。
「子供達の安全はな」
「守ることですね」
「そうしていくぞ」
 こう言って実際にだった。
 ワンゲル部か小学生達の野外活動のアシスタントをして子供達に何かと教えていた、その中に荻野もいてだった。
 雑用をそつなくこなしていった、前川はその彼に言った。
「いつも通りでいいからな」
「僕はそうですか」
「ああ、無理をしないでな」
 一年生の彼に三年生として言うのだった。
「やっていてくれ」
「僕の出来ることで」
「人は今出来ることを最大の力でやっていけばいいんだ」 
 温かい声での言葉だった。
「そしてな」
「そのうえで、ですか」
「そうしていったら少しずつでも成長するからな」
「僕もですか」
「今出来ることをな」
 そうしたことをというのだ。
「いつも通りしてくれ」
「全力で、ですか」
「お前が思う限りな、それで頼むな」
「わかりました」
 それならとだ、萩野も頷いた。そうしてだった。 
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