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芸能界を去った理由

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第二章

「引退したのよ」
「そうだったんですね」
「それでね」
 さらに話すのだった。
「大学に進学して」
「OLになられたんですね」
「そうよ。アイドルのままでいられるか」
 また言うのだった。
「そこから別の存在になれるか」
「女優さんなりに」
「私ドラマとかバラエティとかどうもしっくりいかなかったし」
 出演してもというのだ。
「そういうことをメインのお仕事にはね」
「出来ないですか」
「そうも思って。アイドルからどうなるか考えて難しいと結論が出たから」
「引退されたんですね」
「それで未練はないわ」
「もう、ですか」
「私未練はない方だから」
 そうした性格だからだというのだ。
「そもそもね」
「そうなんですね」
「今の生活もいいし」
「OLで」
「お仕事して日課のジムで身体動かして」
「サウナにも入って」
「それでね」
 そうしてというのだ。
「満足しているから」
「いいんですね」
「芸能界だけじゃないし絶対じゃないから」
「そうした場所ですね」
「引退してもね」
 そうしてもというのだ。
「いいわ、アイドルでなくても生きられるし」
「そういうことですか」
「ええ、何でもないわ」
「そうなんですね」
「それでね」
 さらに言うのだった。
「今はこれから水風呂に入って」
「身体冷やしますね」
「そうしてまたサウナに入るわ」
「その方がいいですね」
「ええ、それじゃあね」
「水風呂行きましょう」
「そうしましょう」
 笑顔で言ってだった。
 佐竹は水風呂に向かった、それに甲斐も一緒だったが佐竹の顔を見れば明るかった。未練がないことは明らかだった。
 佐竹はアイドルだったことも引退した理由も過去として話した、そして今を生きていた。未練がない彼女を見て甲斐も他の誰もがいいと思った。隠しても後ろを振り向きもしていないそうした姿勢を見て。


芸能界を去った理由   完


                      2023・12・19 
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