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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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88話 AqoursのPartner



ガタン……ガタンゴトン————



「」ソワソワ
「……落ち着けダイヤ。」
「何を呑気な……東京ですわよ!?東京!!」
「知ってるよ。」


新幹線の中でツッコミが響く。


何を隠そう………俺と魁、そしてAqoursは再び東京へと向かっている。新幹線、俺と魁の正面に千歌と曜が座っている。その後ろに梨子と善子、その正面に花丸とルビィが座っている。そして3年生は通路を挟んで隣に。


最初に来た頃から随分経っている。その間に3年生が加入して、サウザーを追い詰めた。

一方でアークが完全復活したことで創設されたヒューマギアなるアンドロイドで構成された組織 滅亡迅雷.net………そして、アークの生みの親にして神話を改竄してきた邪悪な神 ナムロドが地上に蘇り、今までの常識では考えられないことが起こり続けている。

そして………


「鍵を握るのはスクールアイドルか————そしてGOD。」
「どうした?」
「いや……確かスナイプが話すには、スクールアイドルの根底には『奇跡を起こす』っていう考えがあるんだよな。ナムロドを消滅させるための。」
「あぁ。そう言っていた。」


俺の小話チックな質問に魁は普通に答える——————と、ここで魁が……暴露してしまった。


「しかし、そのスクールアイドルの元型が千歌のご先祖様だったとは驚いたなー」
「!!———おいバカ!!」
「え?———」


一瞬にして賑わいあっていた場所が静寂に帰す。Aqoursの9人は一斉に発言者の方を向き、目をぱちくりさせる。


「え……なにそれ?」
「あれ?知らなかったのか?」
「魁さん一体どういうことですの!?」
「みんな知らなかったか………かつてナムロドから世界を救うのに貢献し、人々を癒し、英気を与えてくれた太陽の巫女———高神千陽。彼女は千歌の500年前の先祖だ。」
「「「「「「「「「えぇぇーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」
「………」


言ってしまった。

千陽の事は口に出したくはなかった。彼女のことを知れば、宿命を千歌に背負わせる可能性だってある。そんな宿命はいらない。

しかしもう言ってしまったのだ—————案の定、場が混乱する。


「じゃあ千歌ちゃんには人を癒す力が!?」
「ないよ曜ちゃん!——————多分。」
「その間は何なのよ!?」
「そういうの善子ちゃんの世界だけだと思ってたずら……」
「例えるな!!」


ガヤガヤする9人を魁は一斉に取りまとめようとする。

「とにかく、お前たちがスクールアイドルとして結果を残し、世に知らしめることでナムロドの野望を打ち砕き、人々を笑顔にする………そういうことだ。」
「結局やる事は変わってないってことか。」
「でもそうなると余計ラブライブ優勝が必要になりましたわね……」


果南とダイヤは受け入れが早く済む。しかし彼らの中の概念は大きく変わってしまったはずだ————自分達は使命がある。その重荷を背負わせるのは不本意。


俺は密かに魁を睨む。






———※———



「ふぅ、疲れた〜」


プロテインドリンクを飲み干した竜介。夏場での戦闘で汗をかいた時には清涼飲料水は格別にウマい。そのプロテインはやがて竜介自慢の筋肉へと繋がってゆく。

だが、ゆっくりもして居られない。


「ミサイル発射地はどこなんだ……?祝、日本で数日間でロケットを発射できる場所は?」
「そうだね……」


祝は逢魔降臨暦なる本を開き、そのページ上にスケジュールの立体映像が映し出される。それを指でカーソルしてゆく。


「9日間でロケットを発射できるのは…この場所だけだね。」
「和歌山県……串本町か。」
「ここなら人の目も少ない。発車にはもってこいだね。」
「あぁ、しかしどうする?今から行けば間に合うが、ずっと張り込んでいれば発射地を変えられてしまうかも知れない。」


問題点が出た事で議論は滞る————しかし、作戦ブレイカーが発言する事でそれは破られる。


「サウザーをどうにかしよう。」
「————奴を倒しても、ミサイル発射は止まらないぞ。」

虎太郎の否定を受けても、竜介は話をやめない。

「俺たちが奴の計画を阻止したら……奴は終わりだ。才は前にそう言ってた。」
「終わり……?」
「奴が後味良く諦めるわけねぇ————奴は死ぬつもりだ。俺たちを巻き添えにな。」
「「!!!」」


才の推測………それはかなり的を得ている。そう思った2人は作戦を練り直す。


「しかしサウザーを倒しても、ナムロドが裏で操っている以上、ミサイル発射は止まらない可能性が高い。」
「…………俺に考えがある。」
「え!?」


祝が驚きを隠せない………珍しい限りの竜介の作戦。その内容とはいかに———





——————※——————



俺たち一行は新幹線から山手線に乗り換え、秋葉原までやってきた。ここはスクールアイドルの聖地でもあるが、千歌がすごい人物とコンタクトが取れたのでその集合場所が神田明神。その最寄駅がここなのだ。

さて、ダイヤとルビィがサインシートを持っているが————?


「何だそれ?」
「東京で、私たちがコンタクトを取れるかどうかの人物と言えば————これを持って行かぬわけには行きませんわ!!」
「圧倒的に勘違いしてないか……?」



おそらく————期待しているのは、μ’sの方々何だろうが、おそらく彼女らとはコンタクトは取れない。彼女らの個人情報流出はスクールアイドルの流行活動をしているために、非常にリスキーなもの。万が一そんなことが起これば、過激派か反対派に襲撃されてもおかしくない。

それほどまでにこの国は、心が荒んでいるのだ。

しかしμ’sに会いたい彼女らの気持ちもわかる。こんなことならスナイプに相談しておけばよかったな……思考するうちに、俺たちは神田明神の石階段へとたどり着く。


石段をカタカタと登る俺たち——————


『まもなく世界に大きな危機が迫っています……氣をつけてください、創造主様。』


「「「「「「「「「「……?」」」」」」」」」」


空耳……それにしてはあまりに聞き取りやすい声。それゆえに辺りをキョロキョロと見回す。どうやら聞こえたのは俺だけでなく、Aqoursの全員がキョロキョロしていた。

唯一聞こえなかった魁は疑問に思う。


「どうした?何かあったか?」
「大きな危機、創造主って……誰か言ったか?」

俺の問いかけに真っ先に梨子が否定する。

「私は言ってない……ていうか今のは誰の声でもなかったと思うわ。」
「でもこの辺りには人はいませんし……」
「まさか、悪魔の囁き!?」
「優しい声だったからそれはないずら。」


花丸の言う通り、明らかに優しい声だった———もっと言うなら、少し機械的だったような気もする。


しかしここで立ち止まっては他の参拝者に迷惑がかかるので、鳥居をくぐることにする。


大鳥居を潜り、参道を突き進む————そしてお宮が見えてくると、そこに見覚えのあるような2人組が見えかかる。


「ん……?あれは————」


近づくほどに見えてくる……パープルの髪色の姉妹。

礼拝を済ませた彼女らが振り返る。ちょうど俺たちが射程範囲に入ったところで。


「お久しぶりです…!Aqoursのみなさん———そして、伊口才さん。」
「お前らは……Saint Snow!」
「才、この姉妹は誰だ?」
「魁は入る時期的に知らなかったか。この2人は鹿角聖良と理亞——以前、東京でのイベントの時に知り合ったスクールアイドル……サウザー襲撃より前にあの舞台で演技できた数少ないスクールアイドルだ。」
「ほーん。」


あの時のことは正直、鮮明に喋りたくはない。それにこの2人について、俺はあまり好意を持てない。実力を持つ者……これは実力の無い者の妬みに近いかもしれないが、実力主義は少し場にそぐわないと俺の心の中では感じている。

だから千歌が彼女らに会いたいという考えはどうしても理解できない。


「「あぁ〜………」」
「ため息つくな、ため息を。」
「てか何のため息よ?」


ダイヤとルビィが落胆する。それを不思議に思った鞠莉がツッコむ。

さて話を戻して、この姉 聖良が提案をする。


「さて、ここで立ち話も難ですから———ある場所に行きませんか?」
「ある場所?」

梨子が聞き返す。

「皆さんも少しは行きたいと思ったことがある場所ですよ。」
「——————」


〜〜〜〜〜〜〜〜


俺たちが連れてこられたのは……まさかの振り出し。UTX学園。しかしそこは学校ではなく、スクールアイドルグッツやスクールアイドルの曲が歌えるカラオケなどが配備された聖地と化していた。


「まさかUTXがこんなになっているとは……!」
「正確にはUTX学園がその一部をスクールアイドルの聖地にしたような感じですが……」


魁の驚嘆に正確な答えを返す聖良———この人の性格は何となくわかる。所謂笑顔で毒を吐くタイプの人間だ。ある意味Aqoursの誰とも個性被りしていない。

さて梨子が紅茶をすする聖良に予備予選突破を祝う。

「予備予選突破突破、おめでとうございます!」
「coolなパフォーマンスだったね。」
「褒めてくれなくて結構ですよ。」
「!?」

祝意をそのまま受け取らず、謙遜———というより結果によりストイックなだけか。


「動画の再生数ではあなた達の方が上なんですし。」
「いやぁ〜///」
「それほどでも〜///」
「当然、天才演出家の実力
「はい乙、自慢は寝ても言うなずら。」


俺が曜とルビィの勢いに乗じて自慢しようと思った途端に、花丸に煽りスルーを喰らわされる—————え、花丸って文学田舎っ娘だったよな……?

このツッコミで善子の気持ちが……いやわからんわ。

しかし次の聖良の一言で現実に戻される。


「でも、決勝では勝ちますけどね。」
「………!」

この言葉とともに千歌の顔が険しくなるのがわかった。聖良はティーカップを置き、改まって口を開く。


「私と理亞はA-RISEを見てスクールアイドルを始めました。彼女たちの何が凄いのか……私たちも考えた事はあります。」
「答えは……出ました?」
「いいえ。ただ……勝ち進むしか無い。勝って、同じ景色を見るしかそれを解る方法はないんじゃないかって————」


確かにそれは一理ある————が、俺はそれが良いとは思えない。彼女らのやっているのは答えを探し続ける事の放棄。

千歌は語気を強めて言う。


「どうしても……勝ちたいですか!?」
「………?」
「勝ち進んで………その先は何があるんですか?」


その先————俺たちにとっての、その先……それは何だろうか。千歌の言葉によって少し自分が揺らぐ。廃校阻止も、ラブライブ優勝すらも通過点に過ぎない……では俺たちの真の目的とは一体何なんだ?

しかし千歌の答えに理亞はキツい言葉で返す。


「姉様、この娘バカ?」
「—————それは、勝ってみないとわからないと先ほど言いましたよ。」
「でも……」

千歌が口ごもる。

俺も何か言い返そうかと思った……ところが、魁が俺の肩を叩く。


「どうした?」
「————あれ。」


魁が指差す方向…………聖良のバッグ。

ストラップが2つ—————いや、あれは………ゴースト眼魂!?なぜ持っている……!?

その色は結晶で彩られたメタリックな紫とかなり傷ついた紫。よく見ると理亞のバックにもメタリックな紫の眼魂が付けられている。

俺は即座に聖良に尋ねる。


「おい、その眼魂……いや、そのストラップは何処で手に入れた!?」
「え……あぁ、これですか?これは———お守りみたいなものです。」
「ちょっと見せてくれ。」


そう言って俺が手を伸ばそうとすると……隣にいる理亞に激昂される。


「触らないで!!!」
「「「「「「!?」」」」」」

流石にみんなを驚かせてしまって場違いだと思ったのか、聖良が理亞を注意する。

「ちょっと理亞!いくら他人でもそれは失礼ですよ!!」
「姉様……でもそれは父様の———」
「どういうことだ?」

俺に事情を聞かれた聖良が渋々答える。

「私たちは幼い頃からほとんど父に会ったことがなくて、でもこんな変な形のお守りを私と理亞に形見として作ってくれました。」
「でも、2年前に父は不慮の事故で海外で亡くなりました————この傷ついたストラップは父が持っていたものです。」
「—————それは辛かったでしょう……?」

鞠莉は聖良に同情の声をかける。

「いえ————もう過ぎたことですから………」


静粛に包まれる空間————ただ、とんでもない事実が解った者が1人。



———————※———————



Saint Snowの2人から答えは得られず、帰路につこうとする俺たち————しかし。


「何か———まだ、もっと得られるよ。この東京で。」
「———?」


梨子が立ち止まり、そう言い放つ。

そしてある提案をする—————導かれるように………


「ねぇ、音ノ木坂———行ってみない?」
『?』
「前、私が我儘言ったせいで行けなかったから———もう過去に固執しない……今の私たちなら。行ったら何か得られるんじゃないかな?」
「梨子ちゃん……いいの?」
「うん!じゃあみんなはどう?」
「賛成!」
「いいんじゃない?見れば何か思うこともあるだろうし。」


曜と果南の流れに乗って、俺も賛成しようと思ったところ魁が遮るように話す。


「じゃあお前たちだけで行ってきてくれないか?」
「え〜!?」」」」」」」」」
「ちょっと急用が入ってな……すまん!!」
「って、オイ!!」


魁は俺の手首を持ってその場から立ち去る。



〜〜〜〜〜〜〜〜




「μ's……μ'sの母校!!!」
「なんか緊張する……ど、ど、ど、どうしよう!?も、もしμ'sの人たちに出逢ったりしたら……!」
「へ、平気ですわ!!その時は、さささ、サインと、写真と、握手……♪」
「単なるファンずら……」


ルビィとダイヤのオタクっぷりに困りツッコミする花丸。

才と魁はいない…………しかしそれだからこそ、解ることもあるのだ。


『答えは………すぐそこですよ。』


「!!!!!!!!!」」」」」」」」」




再び聞こえる声————千歌は走り出す。もっと……もっと………階段の先へ。



声はバラバラ。さまざまな声を出すAqours………でも、繋がっている。



そして、辿り着く。




「ここが……μ'sのいた———!!」
「奇跡を起こした———学校……!」



太陽が光る———音ノ木坂を今も輝かせる。そんな赤い太陽。



歓声など出さず————感慨に耽る9人。



「あの。」
「?」」」」」」」」」


神出鬼没かの如く、Aqoursに声をかけるのは—————珍しい全ての髪が白い若者………襟シャツを着ているが、木の箒を見るに、校務員。

この人物———そう、白木覗はイケボちっくな地声で話しかける。


「何か御用ですか?」
「すいません、ちょっと見学してただけで……」
「スクールアイドル……Aqoursですか?」
「知ってるんですか?」
「少し———ここに来る人もだいぶ増えましたからね。特にスクールアイドルが。」


梨子の疑問に飄々と返す覗。そして続け様に語る。


「10年間ここで警備員をしてますが……μ'sはここに何も置いていかなかった。」
「え?」
「彼女らは————モノなんかなくてもいい。モノは置いておけば、それは人形のように崇拝される……そんなモノいらないってな。」
「崇拝……?」

ダイヤは聞き返す。

「彼女たちはただ、勇気を出して道を切り拓いただけ……夢を次の世代に託した。いつか———世界中の人々を笑顔と感動で救える人たちにな。」
「————!」
「彼女たちは自分たちのやってきたことを0にした……思い出は残っているから。そして新しい夢が生まれることを知っていたから。」


覗は9人の前に立って、言う。


「彼女たちは本当に普通だった……そんな少女たちが土台を作ってくれたんだ。輝きを見つけるのは———君たちだ。自分たちが輝くには一体何が欠かせないか……それはもう《《隣》》にいるんじゃないかな?」


覗はそのまま正門に入ってゆく…………過去の遺物はただの偶像。心に残るモノ、目の前から消えるから永遠に残る。




心が—————繋がる。















『ありがとうございました!!!!!!!!!』



















9人は1つの赤い太陽になった。



 
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