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急にお金が入って

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第一章

                急にお金が入って
 身内の遺産が入った、それでだった。
 普通のサラリーマン海原秀一郎は一夜にして大金持ちになった、貯金のあまりないアパート暮らしの二十代独身男がだ。
 一生使いきれないだけの財産と広い土地に豪邸を手に入れた、日本独自のかなりの相続税があってもだった。
 彼は大金持ちになった、それで言うのだった。
「夢みたいだな」
「おい、凄いことになってるな」
 その彼に親友で会社の同期の鈴木健三が言った、卵型の顔と黒いショートヘアに明るい顔立ちの彼とはまた違い細表で優しい顔立ちで茶色の髪を真ん中に分けている、二人共一七〇以上の背だが痩せている海原に対して鈴木はよく見れば筋肉質だ。
「お前大金持ちか」
「今はな、凄いよ」
「そうだな、それでこれからどうするんだ?」 
 鈴木は海原に居酒屋で一緒に飲みつつ尋ねた。
「会社とかな」
「会社?続けるよ」 
 海原はビールを飲みつつ答えた。
「そのままな」
「あれっ、家貰ったんだろ」
「ああ、豪邸な」
「そっちには移らないのか」
「移るよ、ただ通勤出来る距離だからな」
「豪邸に入ってもか」
「働くよ」
「そうするんだな」
「ああ、あと財産はな」
 そちらの話もした。
「ちゃんと管理して無駄遣いはな」
「しないか」
「しないよ」
 実際にというのだ。 
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