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イベリス

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第百二十八話 酒も飲んでその十二

「忘れるってことは吹っ切るってことで」
「そうなの」
「それで痛みも克服するってことよ」
「そうなの」
「そういうことなのよ」
「今言ってることは」
「そうよ、だから忘れて」
 そしてというのだ。
「嗤わない」
「そうしていくことね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「そうしていってね」
「わかったわ」 
 確かな声で答えた。
「私もね、何かね」
「何か?」
「今日凄く大切な経験をして」
 そしてと言うのだった。
「学べたってね」
「思ってるの」
「辛いけれどね」
 今もというのだ。
「それでもね」
「そうよ、人間痛くて苦しい経験からもね」
「学べるのね」
「それは失恋もで」
 それでというのだ。
「咲ちゃんもね」
「そうした経験積んだのね」
「そのこと覚えておいてね」
「ええ」
 咲は愛のその言葉に頷いた。
「わかったわ」
「そういうことでね、それとね」
「それと?」
「矛盾することってあるから」
 愛はこうも話した。
「失恋は忘れてけれど痛みはね」
「覚えて人を嗤わない様にする」
「この場合忘れるは克服するで」
「乗り越えて」
「それでね」 
 そのうえでというのだ。
「前に行くことで」
「そうしたものでね」
 それでというのだ。
「痛さ苦しさはね」
「大事にしておくことね」
「それが人への思いやりで」
「それがない人は」
「碌な人じゃないってね」
 その様にというのだ。
「覚えておいてね」
「見える場所に入れ墨入れる様な」
「本当に碌でもない」
 そうしたというのだ。
「人よ」
「そういうことね」
「覚えておいてね、そういうことでね」
「わかったわ」
 咲は飲みながらも答えた。
「よくね」
「そういうことでね、じゃあ残りのお酒とおつまみは」
「全部飲んで食べて」
「そうしてね」
 そうしてというのだ。
「ちゃんとね」
「片付けて」
「そうしてから」
「寝るのね」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。 
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