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イベリス

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第百二十八話 酒も飲んでその八

「私だったらね」
「私もよ、耐えられないわよ」
「そうよね」
「もうおかしくなってるわ」
 こう咲に話した。
「確実にね」
「精神崩壊ね」
「それ起こしてね」
 それでというのだ。
「もうね」
「耐えられなかったわね」
「そうなっていたわ」
 こう言うのだった。
「私もね」
「そうよね、そんな地獄みたいなことにならなかったから」
 だからだというのだ。
「本当にね」
「よかったのね」
「今はそうも思うわ」
「そうね、失恋しても」
 それでもとだ、愛は咲に言った。
「ダメージが低いなら低いだけね」
「いいのね」
「そんなことになったらおかしくなって」 
 愛はまたこう言った。
「トラウマだってね」
「持つわよね」
「洒落にならないものをね」
 そこまでのものとをいうのだ。
「そうなるわ」
「そうよね」
「そう考えたら」
「私はずっとましね」
 咲は心から思って言った。
「同じ失恋でも」
「そうね、けれどね」
「けれど?」
「そういう目に遭ってもよ」
 愛は咲に真顔で告げた。
「こうして飲むわよ」
「その時も」
「お風呂に入ってね」
 今日の様にというのだ。
「それでね」
「こうして飲んで」
「忘れるのよ、そんな地獄みたいな目に遭っても」
 それでもというのだ。
「失恋はね」
「忘れてそれから前を向く」
「そうするものだから」
 だからだというのだ。
「若しそんな目に遭っても」
「それでもなのね」
「誰だって起こりうることだけれどね」
「そんな酷い失恋も」
「けれどね」
 それでもというのだ。
「失恋なんかよ」
「なんかなのね」
「そうよ、そんなのに囚われるなんてね」
 そんなことはというのだ。
「馬鹿馬鹿しいわよ、その人だって立ち直ったでしょ」
「そうみたいね」
 咲もその通りだと答えた。
「どうやら」
「そうでしょ、立ち直ってね」
「新しいちゃんとした人とね」
「お付き合い出来たでしょ」
「それで今は幸せみたいよ、お友達に裏切られて周りにからかわれても」
 そうなってもというのだ。 
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