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イベリス

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第百二十七話 告白その七

「それでな」
「すっきりすることですね」
「風呂はいいものだよ」
「身体が奇麗になってですね」
「気分もすっきりするからな」
 それ故にというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「ああ、ここはな」 
 是非にと言うのだった。
「そのお風呂屋さんに行って」
「そうして」
「気分転換してな」
 そのうえでというのだ。
「帰ってな」
「お酒ですね」
「もうこうした時は後先なんてな」 
 それこそというのだ。
「考えないでな」
「飲むんですね」
「そうしてな」
 そのうえでというのだ。
「完全にだよ」
「忘れることですね」
「失恋は覚えておくことじゃないんだ」 
 マスターは断言した。
「絶対にな」
「忘れないといけないことですね」
「ああ、それでまたな」
「また、ですか」
「誰か好きになればいいさ」
 こう言うのだった。
「落ち着いたらな」
「よく聞いてきました」
 咲は俯いて答えた。
「漫画やアニメでも小説でも」
「読んだり観てきたよな」
「そうでした、ですが」
「自分もそうなることがあるんだよ」 
「今の私ですね」
「そうなるな、本当に」
「それで、ですね」
「風呂に入ってな」
 そうしてというのだ。
「酒も飲んで」
「忘れることですね」
「ああ、思いきり風呂に入って」
「サウナとかですね」
「一旦熱くなったら水風呂に入るんだ」
 そうしろというのだ。
「それで身体を一旦冷やして」
「また湯舟やサウナに入って」
「そうしたことをとことん繰り返してな」
「身体を奇麗にして」
「気分もすっきりさせてな」
 その様にしてというのだ、マスターは咲を真面目な顔でそして優しい目で見ながらそのうえで話した。
「家に帰ったらな」
「お酒ですね」
「もうとことん飲むんだ、あとな」
「あと?」
「もう秋だろ」
 今度は季節の話をした。
「秋は恋愛の秋っていうな」
「そうですね、読書に芸術にスポーツに」
「食欲もでな」
「恋愛もですね」
「恋愛にはこうしたこともあるってな」
 その様にというのだ。
「何でもないさ」
「そうですか」
「ああ、だから忘れなよ」
「そうします」
 マスターにこくりと頷いて答えた。
「それでお姉ちゃんにも話します」
「頼りになる人がいたらな」 
「それならですか」
「頼れよ、ただここで突っぱねるならな」 
「頼った人が」
「嬢ちゃんが言う人はないな」
「お姉ちゃんは違います」
 愛の人柄を思い出しつつ答えた。 
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