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X ーthe another storyー

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第四十六話 結想その七

「今ね」
「そうなんか」
「入院している火煉さんのところにもね」
「届けてんな」
「そうよ、それで昴流さんにもね」 
 今は宣戦を離脱している彼にもというのだ。
「届けたわ」
「ほな皆食べてるんやな」
「姫様以外は」
「流石に姫さんはか」
「あの人は味覚もなくて」
「それでやな」
「ものを食べるにしても」
 それでもというのだ。
「流動食や点滴で」
「終わりやな」
「身体を動かせても」
「力でやしな」
「咀嚼をされるにも」
 その為に口を動かしてもというのだ。
「あの方は」
「味覚もなくてな」
「だからね」
「たこ焼きとかもやな」
「差し出しても」
 それでもというのだ。
「全くね」
「意味ないな」
「楽しめないから」
「たこ焼きも他のもんの味も」
「だから買っていないわ」
「そやな、あの人も可哀想やな」
 空汰は丁のことを真剣に考えて述べた。
「五感が全くなくてな」
「ただ夢見と贄のお仕事ばかりで」
「楽しみなんてな」
 それこそというのだ。
「全くな」
「ないから」
「そう思うとな」
「気の毒な方ね」
「ああ、ほんまな」
「そうね。私達の中で一番苦しいのは」
 そうした立場の者はというのだ。
「やっぱり」
「おひいさんやな」
「そうね」
「たこ焼きも食えんってな」 
 空汰は嵐が出したそれを受け取りつつ言った。
「ほんまな」
「残念ね」
「ああ、こんな美味いもん食えんって」
 実際に食べつつ言った。
「可哀想や」
「そうね」
「わいはこうして食えて」
 やはり食べながら言った。
「しかもな」
「しかも。どうしたのかしら」
「嬢ちゃんも一緒やしな」
 嵐には微笑んで話した。
「よかったわ」
「だからなの」
「ほんまな」
 こう言うのだった。
「何よりもな」
「そうなのね。ただ」
 嵐は空汰の言葉を聞いてこう返した。
「もう嬢ちゃんなんていいわ」
「その呼び名はかいな」
「嵐って」
 その様にというのだ。 
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