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狂乱の宴

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第一章

                狂乱の宴
 この時魔王グラシャラボラスは悩んでいた、牙が生えた中年の男の学者の姿で背中には蝙蝠の翼がある、黒髪で学者の服は黒い。
 彼はその悩みの中でだ、魔界の自身の宮殿において家臣達に言っていた。
「次の宴だが」
「どういったものにするか」
「それが問題ですね」
「どうにも」
「魔王達をはじめとしてだ」
 魔界において自分と同じく君主を務める彼等と、というのだ。
「魔界の名士達が集まる」
「そうした宴だからこそ」
「我々も考えなくてはなりませんね」
「一体どういった宴にするか」
「それを」
「今まで様々な宴を開いたが」
 それでもとだ、魔王は言った。
「今回はどういったものにするか」
「それが問題ですね」
「果たして」
「魔王や名士の方々に喜んで頂くか」
「食事にだ」
 それにというのだった。
「催し、歌に踊りとだ」
「それに酒です」
「何かとありますが」
「どういったものを用意して」
「そして催すか」
「全く以て考えますね」
「宴の度に」
「よくだ」
 グラシャラボラスはさらに言った。
「人間達は魔界の催しというとだ」
「混沌としてです」
「生贄が捧げられ」
「乱乳騒ぎとなる」
「そんなものだと思っていますね」
「生贄なぞ要求しない」
 魔王はまずそれを否定した。
「そもそもな」
「はい、それは中南米の神々にです」
「かつてのカルタゴの神々です」
「ギリシアでもありましたが」
「今時生贄なぞ」
「要求しない、モロクもだ」
 この魔王もというのだ。
「今はだ」
「生贄を要求されないです」
「かつては魔界で生贄というとあの方でしたが」
「中南米の神々も要求しなくなりましたし」
「ましてやグラシャラボラス様は」
「そんなものはいらぬ」 
 魔王ははっきりと言い切った。
「しかも混沌というが」
「魔界には魔界の秩序があります」
「サタン様を頂点とした」
「法も存在します」
「混沌とは正反対です」
「宴も秩序立ってだ」
 そうしてというのだ。
「行われる、また乱痴気もな」
「そうした宴もありますが」
「やはり上品なものではありません」
「ましてや今回は公のものです」
「誰もが正装して参加します」
「私は乱痴気騒ぎをする趣味はない」 
 自分自身の嗜好の話もした。 
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