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その頃生まれてなくても

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第三章

「長い間ね」
「優勝してなかったな」
「まあ横浜もね」
 このチームもというのだ。
「DENAね」
「あそこは三十八年シリーズに出てなくてな」
「やっと日本一になって」
「一九九八年だったな」
「その頃からもうね」
「シリーズに出たの一回でな」
「日本一になっていないわ」 
 このことも話した。
「まあDENAについてはね」
「僕好きでも嫌いでもないからな」
 寿は特に何も思わない感じで述べた。
「あそこは」
「私もよ。嫌いじゃないけれど」
 千佳も言った。
「好きでもね」
「ないな」
「これといってね」
 こう言うのだった。
「試合に勝ったら嬉しくて」
「負けたら悔しくてな」
「そうだけれど」
 それでもというのだ。
「別にな」
「何とも思わないわね」
「巨人以外はな」
「嫌いじゃないのよね」
「選手は知ってるよ」
 そちらはというのだ。
「戦うんだし」
「どんな選手かチェックはするわね」
「けれど」
 寿はそれでもと話した。
「それ以上はないよ」
「私もよ」
「やっぱり阪神が第一だよ」
「私はカープよ」
「けれどあそこも優勝からかなり離れてるんだな」
「そうね。パリーグだとロッテね」
「いや、あそこは」
 ロッテと聞いただけでだ、寿は暗い顔で応えた。
「二十一世紀二回も日本一になってるよ」
「そのうち一回がっていうのね」
「うち負けたよ」
 その暗くなった顔での言葉だった。
「ものの見事に」
「三十三対四ね」
「二〇〇五年に」
 この年にというのだ。
「負けてるから」
「あれは凄かったわね」
「だから優勝していないとはね」
「思えないのね」
「僕としては」
 こう妹に言うのだった。
「そうだよ」
「まあそれはね」
 千佳も言われて頷いた。
「そうね、しかしチームによって」
「長い間優勝していないチームがあるよ」
「どうしてもね」
「私思うけれど」
 千佳は兄に真剣に考える顔で話した。
「巨人はもうずっとね」
「ああ、優勝どころか」 
 寿は即座に真面目な顔で応えた。
「最下位でいいよ」
「ずっとね」
「あそこは本当に万年最下位でいいよ」
「同感よ、何が球界の盟主よ」
「まだ言ってるかな、あそこ」
「言ってるでしょ、何があっても変わらないチームだから」
 悪い意味でだ、巨人の腐敗は永遠のものであるのだ。 
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