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わんねー あいつに責任とってもらう だけど好きになっただけヤ

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第6章
  6-1

 眼が覚めて、年が明けていた。あっ いけないと 慌てて近くにあったもこもこしたタオル地のルームウェアに着替えて、台所に行くと湯気が立って、ばっちゃんが動いていた。

「おはようございます ばっちゃん ごめんなさい 寝坊してしまった」

「まだ 寝てればいいのにー ・・・ 顔を洗ってきたら、鰤焼けるかい?」

「うん 焼けると思う」

 戻ってくると、コンロに魚網がもう赤くなっていた。タレに浸かっている鰤の切り身。

「2枚ずつでいいよ その方が早いから・・ やけどに気をつけてネ」

「うん 島でも やってたから大丈夫」

 焼いていたら、紳おじちゃんが帰ってきたみたいで顔をのぞかせた。

「おはよう いい匂いがするね」

「あっ おじちゃん おはよう 今?」

「ああ 遅くならないように始発で帰ってきた シャワーしてくるよ」と

「実海ちゃん 焼けたら 着替えてきなさいネ プリーツのスカート買ってあげたでしょ それと白いブラウスねっ 上はチョッキで寒くないかしら 寒かったらカーディガンでもいいわ」

「へっ このままんじゃぁダメなの?」

「ダメ! 新年のご挨拶だからね」

 赤と白のタータンチェックのスカートに襟にお花の刺繍がしてある白いブラウス。少し、寒いけどローズピンクのベストとに着替えた。そして、クリスマスの時に買ってもらったヘァピンを着けてみた。お正月はまわぁまんまーもこんな調子だったのかしらと思いながら

「ばっちやん これでいい?」

「ああ かわいいね お上品だわ テーブルの上の電熱でお餅焼いてくれるかい? 粉をよくはたいてね それと、服を汚さないように気をつけて 4つと実海が食べる分」 ばっちゃんもいつの間にか着物に着替えて、エプロンをしていた。そして、奥の座敷にお料理とかを運んでいた。

 お餅が焼きあがったら、ばっちゃんが煮〆の人参、里芋、椎茸とかまぼこをお椀に入れて、最後に柚子と三つ葉を載せて汁を入れてお椀の蓋を閉じていた。蓋付きなんだぁーと私が見とれていた。島に居た頃は元旦の朝はこんな豪華なお料理が並んで無くて、朝6時頃、お雑煮と伊勢海老のウニソース焼きだけで簡単にお祝いして、直ぐに、おとんとまわぁまんまーは民宿の宿泊客の朝食の準備に出て行っていたのだ。

「実海ちゃん 一つ お盆に乗せて運んでちょうだい これで、おしまいネ」と、ばっちゃんは3つ持って行った。

 座敷には、じっちゃんが着物姿で座っていて、紳おじちゃんも・・・スェットスーツ姿のまま・・・。皆が揃って

「あけましておめでとうございます」と、口々に・・

「今年もみんな 元気でな おめでとう」と、じっちゃんが盃を掲げていた。みんなも・・・私は、グラスに入った冷たいお茶だった。

「実海が我が家に来て、初めてのお正月だなー 久々に華やかだ 代わりに、基君も寂しがっているだろう 後で、電話しような!」

「どうだろう おとんは初潜りとか言って いつも海に入ってるからー まわぁまんまーも民宿のお客さんに追われているからー」

「そうかー 正月でもお客さんが居るんだ」

「うん 初潜りとか釣りの人」

「実海ちゃん 後でお着物ネ 用意してあるから 絢が着たものだけど 初詣に出掛けるから・・」

「へっ? 着物?」

 青地に牡丹と桜の花が散りばめられてて蝶々が飛びまわっている。お化粧もしてくれて、唇も紅くしてもらっていた。

「そのヘァピン 実海ちゃんに似合っているわよ 彼から?」

「ううーん ちがいますよーぅ 紳おじちゃんに、この前・・」私は、さっきからしてたんだけど、今なの?

「おぉー やっぱり 着物着て化粧すると絢にそっくりじゃのー 絢が帰ってきたみたいだ なかなかの美人だ なぁ 紳」と、じっちゃんも驚いていた。紳おじちゃんはこの前、お化粧した私を見ているので、笑っているだけだった。

駅まで歩いて行って電車なのだ。途中、じっちゃんとばっちゃんは知り合いに会う度に新年の挨拶をしていて、私のことを自慢げに紹介していて、お決まりの、可愛いネとか絢ちゃんそっくりとか言われていたのだ。紳おじちゃんは、明け方にお詣り済ませたし、これからしばらく寝ると言っていた。

 駅を降りてもすごい人並で私はじっちゃんの袖をしっかりと離さないで歩いていたのだ。商売の神様だからと、お賽銭も紙幣が飛んでいるのを唖然としていたら、祭壇の前では、じっちゃんと逸れてしまって、私は人並に押しつぶされていた。

 自分の思う方に行けなくて、流されるままに・・・。ようやく、人込みを避けて、お守り売り場の横のほうにポツンと立って居たら、ばっちゃんが見つけてくれて

「実海ちゃん あの人は?」

「うん 逸れちゃった」

「もおー しょうがない人ね! 頼りないんだからー」と、ブツブツ言っていて、そのうち、じっちゃんと合流したら、ばっちゃんは小言を言ってるようだった。

 じっちやんが人込みは避けて、さっさと家に帰りたいと言っていたので、お詣りだけで帰ってきた。だけど、帰りにも色んな人に出会って、挨拶をしていたが、私は、じっちゃんは、早く紳おじちゃんとお酒を飲みたいんだろうなって思っていた。

 帰ると紳おじちゃんは起きていて、風呂に入ったんだよと言って、Tシャツ姿だった。ばっちゃんは、早速、お酒の準備をしていて・・・

「ばっちゃん 何 手伝ったらいい?」

「そうだね お着物汚れるし 氷の準備と・・ 最初はビールだから、コップを運んでちょうだいな それと、そこの小鉢と 実海ちゃん 苦しいかい? だったら、もう、着替えるかい?」

「ううん せっかくだし もう少し 着たままで・・」

 食卓には、昨日受け取ってきた押しずしとちらし寿司、お煮〆に、さっきばっちゃんが切っていた冷凍していたというお刺身に数の子とか筋子が並んでいた。私等には、おつゆも用意してくれていた。

「どうだ 今年も身を固める気は無いんか?」と、じっちゃんはビールを継ぎながら

「そーですね ず~ぅっと こんな感じですかね」と、紳おじちゃんは頭にあの人のことを思い浮かべてるんだろうか。

「まぁ 仕方ないのー けど 実海の前だが 本町の孫の顔を見たいのー」

「それは 申し訳ないですが こんなに可愛らしい孫が居るから幸せってもんでしょ」

「そうだのー それに 元気一杯だしな 幸せだわ 欲を出すとバチが当たるのぉー」

 そして、夜になった頃、紳おじちゃんがTV電話を繋いでくれて、私は着物姿を家族に見てもらっていたのだ。まわぁまんまーは、自分の小さかった頃を見てるみたい やっぱり、私の娘なんだね 楽しくやっているんで安心だわ と、感激していた。
 
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