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ポプラの嘘

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第一章

                ポプラの嘘
 この時ゼウスは困っていた、それでいつも傍に置いて愛でている少年ガニュメデスに対して言った。
「実は頼みがある」
「といいますと」
「うむ、実はスプーンを落としてしまったのだ」
 ガニュメデス、見事な鳥の巣の様な金髪で中世的な顔立ちに湖の目と瑞々しい肌を持つ少年に話した。
「銀のな」
「ゼウス様が大切にされている」
「しかもただ落としたのではない」
 ガニュメデスにさらに話した。
「森の中に落としてしまったのだ」
「森のですか」
「普通の森ならすぐに探せるが」
 それでもというのだった。
「その森の持ち主はハーデスだ」
「ハーデス様ですか」
「もっと言えばハーデスの妃のな」
「ペルセポネー様のものですか」
「そうだ、わしは天界の神でだ」
 そこを治める神でというのだ。
「ハーデスは冥界であるな」
「それぞれ治める世界は違います」
「そうだ、あの森は冥界の領域となるからな」
 ゼウスは難しい顔でさらに話した。
「天界の神であるわしはだ」
「迂闊には入られませんか」
「入るにはハーデスの許しが必要だが」
「確か今ゼウス様は」
「あの者と喧嘩しておるな」
「そうですね」
「この前賭けて揉めてな」
 そうなってというのだ。
「喧嘩中だ」
「左様ですね」
「だからな」
「それではですね」
「その森に入るのは難しい」
「だからですか」
「そなたに行ってもらいたい」
 こうガニュメデスに言うのだった。
「そなたならハーデスも文句は言わぬ」
「そうなりますね」
「わしに何か言ってもな」
「従者である私には」
「それは言わぬ、だからな」
「ここはですね」
「そなたがその森まで行ってな」
「スプーンを見付けて持って帰ればいいですね」
「そうしてもらう、実はペルセポネーもだ」
 ハーデスの妃であるこの女神のことも話した。
「わしはあの者とも今な」
「喧嘩をされていますか」
「たまたまあの者の侍女の一人が気に入ってな」  
 それでというのだ。
「言い寄ったらな」
「ペルセポネー様が怒られましたか」
「自分の侍女だからと言ってな」
「あの方はゼウス様の娘ですが」
「父親でもしていいことと悪いことがあると言ってだ」
 手の仕草を入れてぼやく様にして話した。 
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