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イチイの実

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第二章

「何でも北の方で実る」
「そうした実ですか」
「ギリシアのさらに北の国に実るとか」
「そうなのですか」
「この地では非常に珍しい木の実なので」
「それを私に差し出してですか」
「許して欲しいとのことです」
「木の実はいつも食しています」
 イシュタルは傲然として言った。
「ですから」
「並のものではですか」
「許しません」
 波立つ豊かな長い黒髪をたなびかせて言った。
「ですから」
「これかですね」
「食べてみてです」
 そうしてというのだ。
「決めます」
「そうですか、では」
「これより食します」
 こう言ってだった。
 女神は赤い丸いその実を手にした、そして一口齧った。従神達は女神の艶めかしい唇が実を食べ舐めるのを見ながら言った。
「如何でしょうか」
「味は」
「如何でしょうか」
「そしてどうされますか」
「戦のことは」
「許します」
 これが女神の返事だった。
「実に甘く美味しいです」
「そうなのですか」
「美味しいのですか」
「その木の実は」
「そうなのですね」
「はい、私を侮辱しましたが」
 エレキシュガルの方が美しいと言ってだ。
「それを許します」
「わかりました、ではです」
「あの方にもお伝えします」
「そうします」
「そしてです」
 イシュタルはさらに言った。
「この実の名前ですが」
「イチイというそうです」
 持って来た従神が答えた。
「あの方が言われるには」
「イチイですか」
「北の寒い場所にある木に実る」
 そうしたというのだ。
「暑い場所にはかえってです」
「ない実ですか」
「左様です」
「寒い場所には何もない」
 イシュタルはここでこう言った。
「そう思っていたけれど」
「違いますね」
「こうしたものもありますね」
「左様ですね」
「そのことを知ったわ。それなら」 
 女神は妖艶に微笑んで述べた。 
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