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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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フェアリー・ダンス編
世界樹攻略編
  星を喰らう狼








スルトの拳を紙一重でかわし、バックで距離をとる。


「セイン、アルセ!!範囲攻撃が来るぞ!!」

「わかって……くっ!?」


攻撃の余波で2人の体勢が崩れる。追撃を加えようとするスルトにその巨体に比べるとやや小さめな竜が襲いかかった。


「グオオオォォォォ!!」

《……ふん、この程度か》


吹き飛ばされるレックス。傷ついた仲間に回復魔法の光が降り注ぐ。ヴィレッタの援護は回復だけと決めたので、支援火力はない。


《小さき妖精達よ。今ならまだ見逃す。ここを去れ》

「く……こいつ、随分とお喋りなAIだな……」

「多分コアに近い、上位のAIなんだろ」

「ケ……、道理で動きが違うわけだ」


このまま戦闘を続けても勝率は低い。

だが……


「立ち去るわけにはいかねぇんだよ。俺達はアルンへ行くんだ!!」

《では我を倒してみるがいい》


手のひらに炎球が現れ、辺りを高熱で焼き始めた。これはまだましな攻撃だ。《ムラサメ》で切り裂くことができる。厄介なのは物理攻撃で、これは受けたら即死だ。

ゴウッ、と飛んでくる炎球を切り裂き、スルトに向かって飛翔する。


「おおおおぉぉぉぉっ!!」


鼻先を斬りつけようと、剣を振りかぶる―――気がつけば、地面に叩きつけられていた。


「が……ぁ……」

《とるに足らぬ小さき者達よ。ぬしらは我には勝てぬ。どんな大義があるとしても諦めることだ》

「レイッ、立て!!潰されるぞ!!」

「連れてくる!!」

「バカッ、やられるわよ!?」

「旦那ぁ!!」


――そうだ、来るな。お前達までやられたら立て直すのが大変だ。


《さらばだ。弱小なる者よ》


スルトの拳が降ってくる。くそ……体が動かない。その時、頭に何かが響いてきた。これは……沙良が現実世界から送ってきたメッセージ。和文モールスだ。ナーヴギアに繋いでおいたPCから送られているようだ。


――やつがきづいた、みてる。


(……そうか)


まぁ、監視カメラとか盗聴器とか壊したり、あいつのことコソコソ調べ回ったしな。()()()()()


(さて、)


倒れたままにやり、と笑うと行動を開始する。降ってくる拳を自分の拳で受ける。


パァァッン、と音がしてスルトが吹き飛ばされる。


「「「「は?」」」」


ポカンとするパーティーメンバーは取り合えず無視。


「よお、スルト。てめえ普段はこんなとこにいねぇよな。つーわけで排除決定。悪く思うなよ?」

《な、何なのだお前は!!こんな力、どこから……!!》


ムラサメを拾うと、立ち上がりつつあるスルトに突っ込む。


《ぬぅ!!我を地に倒した屈辱……許さぬ!!》

「黙れってんの」


スルトの厚い胸板にムラサメの斬撃がヒットする。


《ぬぅん!!》


裏拳で俺を払おうとしたその手首を斬りつけ、左手を切り飛ばす。


《ぐおぉぉぉっ!?》

「この力の出所だっけか?教えてやるよ」


次いで左肩、右腕と斬りつけ、スルトの眼前、20mのところに滞空する。刀の先端をスルトに向け、肩の後ろに引き付ける。

片手剣スキルでいう《ヴォーパル・ストライク》のカタナ版。

カタナ単発重攻撃《崩天突》。

眉間に刺さったムラサメは奥へ奥へ埋まっていく。


《があああぁぁぁ!!》

「それは、《強き心》。俺はそれを示してくれた人を助けに行く。――邪魔を、するな!!」


ビシッ、とスルトの動きが止まり、派手な音をたてて爆散した。


「ふぅ……」


その場にしゃがみこむのは意志の力で止める。あいつが見ているとしたら弱みを見せるのは癪だ。



「おう、旦那。やったな」

「レイの規格外さにはもう慣れたつもりだったけど……」

「あはは、アイツと拳で殴りあったの?バカ?」

「ていうかあんた人間?」


女性陣からの言葉が痛い……。

俺勝ったのに、何で?


「あー、疲れた。アルンってもう少しだろ?とっとと行こうぜ」


カタナを納めるとアルンに向かって歩き出す。その後を様々な思いを抱きながら続く仲間逹。

が、突如として現れた黒い影に行く手を阻まれる。


「くそ……またか!!」


即座にそれぞれの武器を構えて後退する。

スルトよりは小さな二匹の狼その名は――《The Skoll》と《The Hati》


「解説のハンニャさん……」


ハンニャは突っ込みたそうな顔をしていたが、淀みなく目の前の怪物について話始める。


「……《神々の黄昏(ラグナレク)》で太陽と月を喰らうフェンリルの子供、《スコル》と《ハティ》だ」

「皆、まだ行けるか?」


強敵との連戦に消耗はしていたが、当然、と頷く仲間達がとても頼もしかった。







__________________________________










Sideセラ




剣を抜いて構える。


「セラ!ここだと不利よ。一か八かルグルーまで走る!」

「……そうね」


確かに、こうも狭いと追尾魔法の餌食だ。剣は抜いたまま反転し、2人に続いて走り出す。隠れるのは無駄だ。さっきキリトが感じた『見られている』という感覚はやはり、トレーサーのもので、反応が消えた辺りに来ると再び、トレーサーを出されて終わりだ。

問題はどこでトレーサーを付けられたか、だが、メイジの技量次第では幾らでも可能だろう。


「お、湖だ」


道が石畳の道に変わり、湖の中央に架かる巨大な橋の向こうにこれまた大きな門が現れた。


「どうやら逃げ切れそうだな」

「油断して落っこちないでよ。水中に大型のモンスターがいるから」

「ウンディーネがいれば話は別だけどね」


その瞬間、後方から魔法の球体が飛んできた。それは3人を外れ、10mほど先に着弾した。


「………っ!!」


橋の表面から巨大な岩壁が高くせり上がり、行く手を塞いだ。


「セラ!」

「わかってる!」


風属性の上位魔法を詠唱し、岩壁に叩きつける。が、岩壁はびくともしなかった。


「……相性が悪すぎる。迎え撃つしかない」

「仕方ないわね……」


キリトの提案でヒール役になったリーファの前へ、キリトの横に並ぶ。


「あの、できればセラも回復役になって欲しいんだけど……」

「私は他人を回復する魔法は使えません」

「え!?」

「ご心配には及びません。あなたに合わせます。私はお兄様の妹ですから」


会話は小声で行っているため、リーファには聞こえない。だが、キリトはその声に裏打ちされた自信を感じた。


「……頼んだぞ」

「お任せを」


サラマンダーが見えてきて飛び出したのは同時、3人の盾を掲げる前衛にまずキリトが飛びかかった。


「セイッ!!」


ガァーン!!という大音響と共に剣が盾を横一文字に薙いだ。HP減少は約1割。それも後方からヒールが飛んできて回復してしまう。直後、紅蓮の業火が2人に降り注いだ。

しかし、盾防御をされた時に敵の作戦を見抜いたセラの障壁に大部分が相殺される。


(……マナポーションを飲んでる余裕はない。障壁は後3回が限度ね)


「うおおっ!」


長期戦は不利と思ったのか、キリトの攻撃スピードが上がる。

だが、前衛の強固な盾に阻まれ、思うように立ち回れない。


(煩わしい……)


躊躇いは僅か、3度目の一斉砲火をに障壁で防ぐ。


「パパ、今です!!」


キリトが呪文を詠唱しているのは気づいていた。

それに、さっきの障壁にはリーファのもあった。

爆炎が晴れ、現れたのは――その頭は山羊のように長く伸び、後頭部からは湾曲した太い角が伸びている。丸い目は真紅に輝き、牙の覗く口からは炎の息が漏れている。

その姿は《悪魔》そのもの。


――後に、レイにその話をすると彼は少し嬉しそうに言った。『そいつは、キリトがでかい壁を乗り越えて倒したボスモンスターだ。そういう意味じゃ、それはキリトの強さそのものかもな』


その姿に怯んだサラマンダーの陣形が崩れた。その隙を見逃す彼女ではない。盾装備3人の頭上を跳躍で飛び越えると、後衛のメイジ逹を次々に葬っていく。

遂に1人になった哀れなメイジに悪魔(キリト)鬼神(セラ)がドスンドスン、ツカツカ歩み寄る。


「2人とも!!そいつ生かしといて!!」


そういえば色々吐いてもらわなきゃいけなかったわね。チャキ、と男の首筋に剣を当てると、顔面を蒼白にさながら叫んだ。


「こ、殺すなら殺しやがれ!」


ザクッ。……おっと。


「セラ!ま、待ってったら!」

「……ごめん。つい」

「意外とえげつないですね。ねぇは」

「ね、ねぇ?」


む、めんどくさいことに……。その時、元の姿に戻ったキリトが首をコキコキ鳴らしながらやって来た。


「いやあ、暴れた暴れた」


その口調はのんびりとしている。サラマンダーの隣にしゃがみこみ、肩をポンと叩く。


「よ、ナイスファイト」

「は……?」

「いやあ、いい作戦だったよ。俺1人だったら速攻やられてたなー」


……そう言えば以前、どこかで聞いたことがある。


「さて、物は相談なんだがキミ」


大人の取引に口を使わない。


「これ、今の戦闘で俺がゲットしたアイテムと金なんだけどな。俺達の質問に答えてくれたら、これ全部、キミにあげちゃおうかなーなんて思ってるんだけどなぁー」


主に、金品が話すのである。


「……これも有るわ」


取引は即座に成立した。







____________________________________








男の話を要約すると、昨日の戦闘でキリトがある《作戦》の邪魔になる、と判断したサラマンダーの上層部が兵隊を緊急召集したらしい。

《作戦》の細部は分からなかったが、男も下っ端のようなので、こんなものだろう。

やれやれ、と首を振ると、キリトがこっちをじー、と見てくる。


「な、何ですか?」

「いや、やっぱり似てるなーって」


キリトはリアルの情報に関わることなので、リーファに聞こえないよう、オフレコにしている。


「……本当ですか?」

「うん、似てる。今の首を振る仕草とか」


確かに、螢兄……というか家族全員の癖に、やれやれと首を振る動作がある。そこがまた彼女は嬉しい気がした。


「なーに、コソコソ話してるのよ!!」

「わぁ!?」


リーファが微妙にいじけた様子でいきなり振り向いてくる。


「んー?言ってごらん、セラ?」


ぐぐぐ、と顔を近づけてくる。


「い、いや。モンスター気分はどうだったのかなぁー、って訊いただけだよ!」

「ぼりぼりかじってましたね~」


リーファの肩でユイが楽しそうに注釈を加える。


「そういえば……、味とか、したの?サラマンダーの……」

「……ちょっと焦げかけの焼肉の風味と歯ごたえが……」

「わっ、やっぱいい、言わないで!」


その時、私は確かに見た。キリトの目がキュピーンと光り、不意にリーファの手を掴むと――。


「がおう!!」


一声唸ると大きく口を開け、リーファの指先をぱくりと加えた。


「ギャーーーーーーッ!!」


その後、キリトが綺麗な放物線を描いたのは言うまでもない。







___________________________________









Sideアスナ




巨大な樹の枝に吊るされた金の鳥籠――いや、これは檻だ。


「キリト君……」


誰よりも愛する少年の名を呼ぶ。彼は無事に現実世界に帰れたのだろうか?自分だけが生き残り、彼は死んでしまったのではないか……そんなことを思うととてもやりきれない。

だが、アスナを捕らえている張本人が先日、その恐れを拭い去ってくれた。


『彼……キリガヤ君とか言ったかな?本名は。先日、会ったよ。向こうでね』


須郷はアスナの心を挫くためにいかに彼がまぬけだったかを嬉々として語ったが、最後になるにつれて怒気を露にした。


『それと……あのガキもだ。水城螢……あいつは病室の監視カメラと盗聴器をぶっ壊していきやがった!!クソガキが!!』


話によると、彼は何故かアスナの両親と共に病室にやって来て、見舞っていった。その際に、須郷が設置した不快な装置を全て壊していったらしい。

それを聞いて、アスナはとても安堵した。彼は須郷の企みに気がついている。そう感じた。


「なら、きっと2人とも……」


彼らは直にここにやって来るだろう。自分を助けるために……。


「やあ、ティターニア。今日は面白いお土産があるよ。一緒に見よう」


ガシャ、と音がしてこの世界の支配者が入ってくる。


「…………」

「ククク。そう睨むなよ。今の君には嬉しいことだろうさ」


空中に映像ウインドウを作り出し操作すると、ウォン、と音をたてて映像が映し出された。


「…………っ!!」


吠える巨大な影。その周りに倒れる数人のプレイヤー達。

ただ1人、敵に立ち向かい吹き飛ばされる1つの影。そのプレイヤーもやがて地面に倒れ込む。


「……レイ君!!」

「ははは。そうだ。あのガキだ。きっと君を助けに来てくれたのさ。残念だったねぇキリガヤ君じゃなくて。あ、でも彼もダメだから。コイツらの前に送り込んだ《スルト》は倒されたけど。この消耗した状態じゃ無理だね。アハハハハ」


アスナはぐっと歯を食いしばる。須郷は彼の前に強敵をわざと配置し、ここに来させまいとしているのだ。


「さあ、ゆっくり楽しもう。彼がいたぶられ、消えていく様をね……」


須郷の目にはギラギラとした憎悪の光があった。






 
 

 
後書き
ハハハざまあみろ調子に乗ってるからボコられるんだ!

レ「うるせぇ!ていうかおまえどっちの味方だよ!」

いや、もちろん須郷は気に入らないよ?でもお前がやられてるのを書くのが楽しくてしょうがない。

レ「たち悪いな、この駄作者め」

何とでも言え!お前はもう助からない!

レ「…………」




※展開はちゃんと考えてありますよ。 
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