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イベリス

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第百二十二話 知れば知る程その六

「小山さんの分も皆さんの分も」
「煎れてくれますか」
「そうさせてもらいます」
 こう言うのだった。
「今から」
「有り難うございます」
「礼には及びません、好きだからすることなので」
 微笑んでだ、速水は礼を述べる咲に返した。
「ですから」
「いいんですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「私も飲みますし。ミルクティーで宜しいですね」
「お願いします」
 これが咲の返事だった。
「煎れて下さいますし」
「私の飲みたいもので、ですか」
「いいです」
 こう言うのだった。
「本当に」
「わかりました、それでは」
「宜しくお願いします」
 咲は笑顔で応えた、そうしてだった。
 他の店の者達と共に速水が煎れてくれたミルクティーを飲んだ、その紅茶はとても甘く美味しかった。
 その紅茶を飲んでだった、咲はこの日も仕事に励んだ。そしてだった。
 家に帰って夕食と入浴の後で勉学に励んだ、だが勉学が終わるとだった。
 自然と近藤に考えが及んだ、それは寝るまで続いた。
 何時しか彼のことを一番考える様になった、それで喫茶店でマスターに言った。
「最近どんどん」
「どんどん?」
「近藤さんのこと思って」
 そしてというのだ。
「考えます」
「そうなってるんだな」
「はい、やっぱりこれって」
「ああ、言わなくていいよ」
 マスターは微笑んで言った。
「そのことは」
「そうですか」
「けれどそうなったら知りたいよな」
 笑顔でだ、マスターは咲に言った。
「余計に」
「あの人のことを」
「そうだよな」
「はい」
 咲は一言で答えた。
「教えて下さい」
「それじゃあな、教えられる限りな」
「教えてくれますか」
「ただストーカーにはならないでくれよ」
 マスターは笑ってこのことは釘を刺した。
「それはな」
「はい、そうなったら」
「犯罪だからな」
「そうですよね」
「本当にな」
 念を押して言うのだった。
「くれぐれもな」
「そのことは注意して」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「やっていってくれよ」
「つきまとったりしないことですね」
「見てもな」
 それでもというのだ。
「くれぐれもな」
「そうします」
「じゃあ話せることを話すな」
「お願いします」
 咲はマスターから近藤の話をメモまで取って聞いた、そしてだった。
 そのうえでだ、マスターにカウンターの席で頭を下げて言った。 
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