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人相は生き方次第

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第三章

「いいお顔じゃないわね」
「私子供の頃気持ち悪いって言ったけれど」
「これは」
「卑しい感じするわね」
「かなりね、生き方がね」 
 まさにそれがというのだ。
「出たわね」
「そうよね、どう見てもお坊さんらしい」
「人間性磨いた人じゃないわね」
「卑しい人よ」
「そうね」
「だから私子供の頃に気持ち悪いって思ったのね」
 千佳子はスマートフォンとテレビの両方を観つつ思って言った。
「生き方が人相に出ていて」
「ええ、子供だから卑しいっていうことはまだね」
「わからなかったけれど」
「嫌なものを感じたのね」
「人相にね」
「人相は生き方が出るから」
「そうよね」 
 娘として母の言葉に頷いた、そしてテレビは他のチャンネルに変えた。その時に丁度父でサラリーマンをしている次彦が仕事から帰ってきたが。
 そのふくよかな顔を見てだ、千佳子は母に言った。
「うちのお父さんの方がね」
「ずっといいお顔してるわね」
 母も頷いて応えた。
「そうよね」
「うん、普通のサラリーマンだけれど」
「尼僧のあの人よりもね」
「ずっといいお顔してるわ」
「いつも真面目に働いて家族を大切にしてくれる」
「そのお父さんの方がね」
 母娘で話した、だが父はそんな家族を見て何を言っているのかなとなった、そのうえで一家で夕食を食べたがその時だ。
 父もその尼僧の話を聞いてこう言った。
「あの人は偉そうで徳がある様に言ってるけれど」
「自分で」
「お父さんも思うよ」
 娘に夕食のおかずの鶏の唐揚げを食べつつ話した。
「いい人じゃないよ」
「そうよね」
「それで生き方がね」
「お顔に出て」
「ああなったよ」
「やっぱりそうね」
「お父さんが見てもね」
 こう言うのだった。
「お父さんも大した人じゃないけれど」
「自分でそう言う人は人相がいいものよ」
 母は笑って突っ込みを入れた。
「そう思って自分を振り返って努力するから」
「それでなんだ」
「幾ら住職さんでもね」
「ああした人は卑しい人相になるってことね」
 千佳子はまた言った、そしてもう一つのおかずの粕汁を口にした。そのうえで自分はああはなるまいと思うのだった。


人相は生き方次第   完


                     2023・10・24 
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