真犯人はお前だ

　　　　　　　　　　　　　　　真犯人はお前だ
　夕食前におかずのメザシが何匹かなくなっていた、家の主婦である藤山佳乃はこのことに気付いて眉を顰めさせた。黒髪をショートにしていてやや面長の顔で色白で二重のアーモンド形の目で細く奇麗な眉とピンクの唇を持っている。背は一五七位でバランスのいいスタイルだ。
　その彼女が息子の朔太郎にこのことを言うと。
「今晩メザシなんだ」
「知らなかったの？」
「メザシと何かな」
　母に逆に聞いてきた、夫そっくりの顔で小さな細い目と太い眉の顔である。面長で一六〇あり小学六年では高い方である。
「それで」
「若布とお豆腐のお味噌汁にほうれん草のおひたしよ」
「そうなんだ」
「ええ、あんたがつまみ食いしたんじゃないわね」
「今メザシって言われてね」
　それでというのだ。
「わかったんだよ」
「それなら違うわね」
「メザシなんだね」　
　息子は今度は面白くなさそうに言った。
「僕お魚焼いたのなら秋刀魚の方がいいのに」
「今秋刀魚高いから」
　それでというのだ。
「我慢してね」
「仕方ないね」
　息子はいささか面白くなさそうに答えた、佳乃はそれを見てだ。
　息子をメザシを食べた犯人から外した、それで今度は娘の茉由自分そっくりの小学五年生の娘に尋ねたが。
　娘はメザシがなくなったと聞いてだ、こう言った。
「私今塾から帰ったばかりじゃない」
「それはそうね」
　母も言われて頷いた。
「丁度ね」
「晩ご飯メザシって朝に聞いたけれど」
　それでもというのだ。
「もう焼いてるのね」
「それでなくなったのよ」
「何匹か」
「そうなったの」
「そうなのね」
「あんたも知らないってことね」
「だから今帰ったばかりだから」
「そうね、そして有り得ないのは」
　母は自分から言った。