| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

準備

『やるじゃねえかアルファ1!』

ダダダダダ!

『すげえ腕だぜアルファ2!』

ダダダダ! キュイン! ドゴォン!

『なんだこいつ!』

『撃て! 撃ちまくれ!』

 おー、空中爆撃機ですか? ボスですね。

「何よ! あんたやるわね!」

「鈴さんこそ!」

ドゴォン! ドゴォン!

『反対側に回り込め!』

『なんだこいつは!?』

「楽勝!」

「頂きですわ!」

ドォン!

『全員退避しろ!』

デレッデレッデレッデレーン!

―ALL Stage Clear―

「おー」

 派手な音楽と共にその文字が表記されてエンディングが画面に映し出されます。

 あの後結局一夏さんは用事があると先に帰ってしまいましたし、当初の予定通り水着は買ったので夕方まで遊ぶことになりました。
 メンバーは一夏さんと箒さんを除いた全代表候補生5人組。戦争を起こせるだけの戦力が日本のゲームセンターで遊んでいる光景はある意味シュールです。

 ゲームセンターの前には色々買い物をしたのですが、やっぱりこの規模のショッピングモールといえど銃器店はありませんでした。日本ですもんねー。『89式小銃』とか欲しかったんだけどなー。銃器店あるか鈴さんに聞いたら「あんた何言ってるの?」って顔されちゃったし……

 今は鈴さんとセシリアさんが『危険な嵐』というシューティングゲームで競っているところです。私とラウラさんは一緒に見学中。シャルロットさんはユーフォーキャッチャーをやりに行っています。

 しかしこの二人……鬱憤晴らしみたいなのを感じるのは私だけでしょうか?

 このゲーム、二人でやると互いで倒した敵数、点数、連射数が記録されるのでそれで競争することが出来るのですが……二人ともほとんど敵が撃ってくる前に撃破してましたね。
 でも記録の上では鈴さんの一歩リードでゲーム終了。順位は他の二人組みに比べてぶっちぎりで一位。

「ははん。アタシの勝ちね」

「ず、ずるいですわ鈴さん! あなたこのゲームやったことあるのでしょう!?」

「さあ? アタシはやったことないなんて一言も言ってないけど」

 あ、やっぱりやったことあるんですね。道理で敵の出てくる場所を先読みできていたはずです。

「さ、再戦を要求しますわ!」

「同じゲームじゃつまんないじゃない。違うのやるわよ」

 元々日本に住んでいたらしいですし、数年間一夏さんや友達と来ていたらしいですから日本のゲームセンターで鈴さんには勝てない気がしますよ。

「くだらんな。実際だったらいくら精鋭でもあそこまで一人で滅茶苦茶出来るわけないだろう」

「まあ、それがゲームですから」

 ラウラさんの冷静な物言い。なんと言うか楽しむというものがやっぱり他の人より無い気がします。

「だが3回目に出てきたサソリ型の兵器は良かったな。あれだけの機動力があれば一般兵器としては十分だ。市街戦にも役立つし検討してみる価値はある」

「へ?」

「1回目と2回目に出てきた足の長い奴はダメだな。遠距離からではただの的だ」

「あ、あのー」

「最後に出てて来たのなんぞ論外だ。発想は良いが止まってしまっては意味がない。正面にあれだけでかい砲門をつける意味も無いし護衛機も無しでは落としてくれと言わんばかりだ。だが内乱であるならば有効か? ふむ……」

 そう言いながらラウラさんはブツブツと独り言を言い始めます。
 案外楽しんでますね。やっぱり見る場所が一般の人とは全然違いますけど。

「あれ、勝負ついたの? 早かったね」

 声に振り向くとシャルロットさんが戻ってきていました。その両手にはかなり大きめのパンダっぽいぬいぐるみが入った袋が3つ。

「それ欲しかったんですか?」

「ううん。試しに一回やっただけで引っ掛かって一気に取れちゃって。僕こんなにいらないし一ついる?」

「あ、じゃあ頂きます」

 シャルロットさんの手からぬいぐるみを一つ受け取って中身を確認します。見た目はグダーとしたパンダって感じですね。この脱力感、中々可愛いです。

「あ、何? グダパンじゃない」

 これもいつの間に戻ってきたのか鈴さんが私の持っているぬいぐるみを見て言いました。どうやらこれの商品名は『グダパン』というらしいです。

「『グダパン』? なんだそれは?」

「見た目グダーっとしたパンダだから『グダパン』」

 ラウラさんの疑問に鈴さんが答えます。というよりそのまま過ぎますねそれ。

「そうですわ鈴さん! 今度はそれで勝負ですわ!」

 セシリアさんがぬいぐるみを見て思いついたように近くの丸い猫のような大きなぬいぐるみが置かれたUFOキャッチャーを指します。

「成功すれば物も手に入りますし勝負結果も一目瞭然。どうですの?」

「いいんじゃない? アタシは負けないけどね」

 あ、それなら……

「どうせなら一夏さんが喜ぶものにすればいいのに……」

「「それだぁ!」」

「ひぃ!」

 私のその呟きは聞こえていたようで、鈴さんとセシリアさんがグリン! と振り返ってきました。

「あ、でも私一夏さんが喜ぶものを知りませんわ……」

「ふふふ……」

 嘆くセシリアさんの横で鈴さんが不適に笑っています。

「はっ! 鈴さんまさか!」

「幼馴染のアタシに隙は無かった!」

 ああ、そう言えばそうでしたね。こういう時は幼馴染というのは便利です。

「さすが鈴さん! で、どれが一夏さんの喜ぶものですの?」

「教えると思ってんの?」

 ですよねー、教えるわけ無いですよね。

「な! そ、それはズルですわ! 公平に勝負なさい!」

「は! 恋は戦場よ! そんなこと言ってると置いていかれるわ! じゃね!」

 そう言うと鈴さんはゲームセンターの雑踏に消えていきます。

「あ! お待ちなさい!」

 セシリアさんがその鈴さんを追うようにゲームセンターの奥へと突入していきます。
 あー、見えなくなっちゃった……
 その場には私とシャルロットさんとラウラさんの3人が残されました。

「お二人は行かなくていいんですか?」

「へ? ああ、うん。僕はこういうの慣れてないから。これ取れたのも偶然だし、無駄遣いはやめておくよ」

 シャルロットさんは苦笑いしながら両手の『グダパン』を持ち上げてみせる。

「ラウラさんは?」

「そもそも一夏の欲しいものでないと意味が無いのだろう? ならばあいつが一緒にいる時に、あいつが欲しいといったものを目の前でとってやった方が良いのではないのか?」

「ああ、なるほど」

 確かに人によっては一緒にあのドキドキを共感したいという人もいますからね。しかもその場合一夏さんと一緒に遊べるという……

「しかもわざわざこの程度のものにチマチマ金を使うなら直接買い取ってしまった方が早いしな」

 そう言う思考ではなかったようです。

「……そうですか」

「ふふ、ラウラらしいね」

 私は完全に苦笑いでシャルロットさんはクスクスと笑っています。
 ラウラさんは軍属でしかも代表候補生。水着を買うときに聞きましたけど貯金は今まで使うことも無かったということで2000万ユーロくらいあるとのこと。本人でも多分ってつけて言ってたので本当に使う機会無かったんですね。
 1ユーロ100円としても20億の計算。
 そんなにあって一生で使いきれるんですかね。まあ貯金はいいことですけどこの感性は何とかした方がいい気がします。

「それよりカルラかシャルロット。先ほど二人のやっていたやつをやってみないか?」

 お? ラウラさんが自分でゲームの誘いを?

「自分で兵器(あれ)の構造を把握したい」

 あちゃー……

「付き合います……」

「ふふ、頑張ってねカルラ」

 頑張ります。


――――――――――――――――――――――――――――――

「お、重い……」

 ラウラさんは結局一緒にやっていた私を置いてきぼりに一人でハイスコアをたたき出し、あっさりと鈴さんとセシリアさんの点数を抜いてしまいました。ついていくほうも楽じゃありませんよ。ゲームの経験なら私の方が長いはずなんですけど……
 それに加えてIS学園に戻ってから保管室に寄ったらすごい重い箱を渡されました。中身的にあれしかないですね。楽しみですけど……これ荷物置いてから取りに行けばよかったなあ……
 あれ、部屋空いてる。ってことは箒さんいるんですかね?
 またラウラさんとかいう落ちじゃないですよねー…… 

「ただいま帰りましたー」
 
 右手で荷物を器用に支えながら左手でドアを開けて足で入れる隙間を広げ、身体を部屋に滑り込ませる。おお、電気がついている。ということは箒さんですね。良かった。

「わ、わ! カルラ! ちょっと待て!」

「へ? どうしたんです……か……」

 箒さんの焦った声に顔を上げると……私は思わず荷物を落としていました。
 全身鏡の前には水着姿の箒さんがいました。
 その水着はいつもの厳格な箒さんからは着てる姿が想像できない白いビキニタイプ。
 しかも縁の方が黒くなっているせいで色の作用により胸より下は細く、そして胸はより大きく見えます。
 その水着を着こなせる箒さんのスタイルのよさ……ああ、嫉妬にも似た感情が……

「ま、マジマジ見るな!」

 そんな私の視線に気づいたのか箒さんはベッドからシーツを剥ぎ取ると体に巻きつけて更にしゃがみこむことで隠してしまいました。
 いや、これはこれで裸にシーツみたいでいやらしいですよ。

「こ、これはだな! 私が選んだのではなくて……店の人に『彼氏がいるならこれでイチコロよ!』とか言われてつい……ではなくてこれはそのそうではなくてだなあ」

 そして顔を真っ赤にしながらそう言い訳する箒さん。
 え、何これ可愛い!

「箒さん」

「み、見るなぁ……」

 2,3歩歩み寄ると箒さんは少しだけ下がります。

 何でしょうこれ。すごい嗜虐心をくすぐられるんですけど!
 ゆっくりと足を一歩だけ進めてみる。

「うう……」

 箒さんが少しだけ下がります。
 また一歩だけ箒さんに近づきます。

「ううう……」

 か、可愛いい! なんですかこれなんですかこれ! いつものギャップも相まってものすごい可愛いんですけど!
 私は一足飛びに箒さんに近づいて両肩を掴む。

「箒さん!」

「ひ!」

「これで一夏さんもイチコロですね」

「ううう……」

 呻き声だけ出して耳まで真っ赤にする箒さん。
 今あの日本好きの友達の言っていることが理解できました!
 これが『萌え』なのですね!

 今日もまた新しい日本文化に触れることが出来ました。


――――――――――――――――――――――――――――――


 ふあ……少し夜更かししすぎましたね。箒さんももうとっくに寝ていますし、私も送られてきた『ドラグノフ』+PSO-1の整備を終えたら寝るとしましょう。
 えへへ~、前から欲しかったんですよねこれ。んー、重さといい大きさといいグッドです! 特に標準タイプですけどスコープ付き! 更にはサービスで銃剣もオマケ付きだ! 太っ腹ぁ!
 買ったの私で完全自腹ですけどね!

 ん? あれ、何だろ。マガジンに何か紙が入ってる……? しかも何か書いてある?

 ………これって……
 本気ですか……はあ……こんなギリギリに見つけてしまうなんて。私も運が悪いです。
 しかしいくら国からの指示を公に出せないからってこんな指示の出し方がありますか! 私の私物なんですよこれ!

 言っても始まりません。今から行ってもリース先輩起きてますかねえ。

コンコン

『おーい、カルラー? 起きてるか?』

「リース先輩?」

 なんという偶然、じゃありませんね。扉を開けるといつも通りジャージのリース先輩が立っていました。私もう寝巻きですよ?
 それ以前にここ一年生の寮なんですけどこんな時間にどうやって入ってきたんですか?

「よ、起きてたか。本国からの通達は来てるよな?」

「え、ええ。今からそちらを訪ねようかと」

 やっぱり根回しは万全ですか。だからジャージなんですね。

「んじゃちょうどいいや。行くぞ」

「は、はい。よろしくお願いします」

 そう言ってリース先輩と共に寮を出る。ってあれ?

「あのー、リース先輩? 他の学年の人は違う学年の寮には入れないはずでは? それにこの時間帯だと警備員もいますし警報機もついているはずですよね?」

「んー? そこら辺はちょちょいってハッキングをな」

 うわー……もう知らない。もう知らない!

「しっかしこんな直前にパッケージインストールとはなあ。私が実験用に持ち出してなかったらどうするつもりだったんだ?」

 さらっとすごいこと言ったこの人! え! いくら実験用でもその言い方だとまさか勝手に!?

「それ勝手に持ち出したんですか!?」

「内緒な」

 それってもしかしなくても……

「バレててそれで帳消しにしてやるって意味じゃないんですか?」

「あ、やっぱり?」

 はあ、機械の事になると目が無いんだから。
 ……着替え持って行かないと作業できないですねー。ふあ、眠いです。 
 

 
後書き
誤字脱字、表現の矛盾、原作流用部分の指摘、感想、評価等などお待ちしてます。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧