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柳と蝗

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第二章

「是非お教え下さい」
「この話をだな」
「はい、どうか」
「西南から腹の大きな雌驢馬に乗った女が来る、その女に頼むのだ」
「そうすればですか」
「蝗を追い払える」
「そうなるのですね」
「だからな」 
 それでというのだ。
「その女にな」
「頼むのですね」
「明日その女がこの城に来る」 
 知事がいる街にというのだ。
「そうなるからな」
「だからですか」
「頼むのだ、いいな」
「それでは」
 知事は男に何度も感謝の言葉を述べて頭を深々と下げた、夢の中でそうして目覚めてすぐに自身の館を出てだった。
 夢の中で言われた女を探した、自らそうすると。
 目の前にその女、腹が大きな雌驢馬に乗った女がいた。妙齢で着飾った美しい女だった。その女を見ると。
 知事は彼女に声をかけて自身の屋敷に来る様に頼んでだった。
 そしてだ、そのうえでだった。
 屋敷の中で丁重にもてなし馳走をしてからだ、彼女の前に膝をつき深々と頭を下げてそのうえで頼み込んだ。
「夢で言われまして」
「それでなのですか」
「貴女が今この州を苦しめている蝗を追い払えると」
「夢で言われたのですね」
 女はそのことに眉を顰めさせて言った。
「そうなのですね」
「左様です」
「わかりました」
 女は目を怒らせて頷いた。
「私は確かにです」
「蝗を追い払えますね」
「何しろ私が蝗の神ですから」
「だからですか」
「蝗を追い払えます、ですが」
 それでもとだ、女は怒った顔で言った。
「そなたに話した男が誰かわかりましたので」
「そうなのですか」
「彼には罰を与えます」
「どうか穏便に」
「殺すことはしません」 
 決してというのだ。
「ですからそのことはです」
「安心していいですか」
「はい、ですが」
 それでもというのだった。
「罰は与えます」
「そうされますか」
「ですがこの州は荒らさず」
 決して、そうした言葉だった。
「そのうえで、です」
「去って頂けるのですか」
「そうします」
 このことを約束するのだった。
「必ず」
「それでは」
「その様にします」
 女は強い声で言うと知事の前を後にした、そしてだった。
 蝗は田畑を荒らさなくなった、ただひたすら州の柳の木の葉ばかりを食べた、そして柳の葉を食い尽くすとだった。
 何処かへと去った、それで州は救われたが。
 その後でだ、知事ははっとなって言った。
「夢のことだが」
「緑の衣の」
「痩せた方ですね」
「位の高い冠を被られた」
「あの方は柳の神だったのだ」
 こう言うのだった。 
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