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馬車の秘密

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第三章

「藁は暫くすると蚤が出るだろ」
「ああ、それか」
「まして馬も一緒だからな」
「尚更だな」
「だから定期的に替えないとな」
「そうそう、あの人の馬車は蚤もな」
 行商人もそれはと応えた。
「いなかったよ」
「そうなんだな」
「新鮮な藁だったよ」
 シーツの下はというのだ。
「そうだったよ」
「だったらな」
「あんたもだな」
「わしもそうする」
 強い声で言い切った。
「そしてこれからはな」
「あんたの店の馬車も人気が出る」
「そうなる様にするな」
「そうか、じゃあそうしろよ」
「絶対にな」
 こう言ってだった。 
 ハンスは実際に自分の店の馬車の中にシーツと藁を入れてかつ藁は定期的に交換する様にした、するとだった。
 彼の店の馬車ももう一度乗りたいという者が増えた、それでその分繁盛する様になったがここでだった。 
 それを見てだ、オックスひょろりとした長身で金髪碧眼で高い鼻を持つ彼は驚いて言ったのだった。
「まさかわしの」
「言わないぞ」
 ハンスはそのオックスに言った。
「まあこれからも商売はな」
「やっていってか」
「競争でだ」
「お互いのいいところはか」
「採り入れていくか」
「見て聞いてな」
 具体的には言わないがこう言うオックスだった。
「それでか」
「そうだ、そういえばだ」
 ここでハンスはふと気付いてオックスに言った。
「あんた最近車輪の木を替えたな」
「気付いたか」
「今は樫だが」
 その木を車輪に使っているがというのだ。
「それはわしの店の」
「あんたも言わないだろ」
 オックスはやや目を背けさせて答えた。
「まあそれはな」
「そういうことか」
「お互いってことでな」
「それじゃあな」
「ああ、兎に角か」
「そうだ、この街は人の行き来が多い」
「馬車を使って他の街や村にな」
 オックスも言った。
「それでわし等も商売をしている」
「だったら競争しながらな」
「一緒にやっていくか」
「そうしような、まあ馬車なんてな」
 ハンスはこれ自体の話もした。 
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