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馬車の秘密

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第一章

                馬車の秘密
 オックス=シュナイダーが経営している店の交易馬車は一度乗った者は彼がいる街に行くと必ず利用する様になる位人気である、それでだった。
 同業者のハンス=リックス、口髭を生やした茶色の癖のある髪の毛の恰幅のいい中年男である彼は首を傾げさせて言った。
「あいつの馬車ばかり人気があるのはどうしてなんだ」
「それであんたは商売あがったりだな」
「いや、この街は他の街や村と行き来が盛んでな」 
 居酒屋で一緒に飲んでいるパン屋の親父に話した。
「あいつの馬車も数に限りがあってな」
「あんたの店の馬車は多いな」
「だからその分な」
「あんたの店も儲かってるか」
「けれど何度も乗りたいっていうのはな」 
 旅人や行商人それに冒険者達がそう言うのはというのだ。
「やっぱりな」
「あいつの店の馬車か」
「ああ、どうしてだろうな」
「そりゃ何か秘密があるんだろ」
 肉屋の親父はビールを飲みつつ言った。
「やっぱりな」
「人気がある秘密か」
「ああ、それでだよ」
「人気があるんだな」
「そうだよ、人気があるには理由がある」
 親父は笑って話した。
「俺の店もだろ」
「あんたの店の肉は美味いな」
 ハンスは笑って言った。
「特にベーコンやソーセージがな」
「それにはな」
「理由があるな」
「俺と女房が丹念に燻製にしてるからだよ」
 ベーコンやソーセージのことを話した。
「だからだよ」
「それでだよな」
「だからな」
 それでというのだ。
「あいつの馬車が人気があるのもな」
「理由があるか」
「何なら調べればいいだろ」 
 親父はつまみに二人で食べているアイスバインの肉を切って食べた、そうしてからハンスに言った。
「そうだろ」
「そうだな、じゃあちょっと知り合いの行商人に頼んでな」
「あいつの店の馬車に乗ってもらってな」
「話を聞くな、まさか美味い飯を食わせてくれるとかな」
 ハンスもアイスバインを食べて言った、尚この店の肉は親父の店から仕入れた肉を使っていたりする。その為実に美味いが香辛料の使い方がいいのも人気の一つだ。
「奇麗なお姉ちゃんがいるとかな」
「馬車の中には」
「そんなのじゃないよな」
「それはないだろ」
 親父は笑って返した。
「流石にな」
「それはないか」
「ああ、飯は旅人や行商人が持ってるだろ」
「サービスであるとか」
「ないだろ、あと奇麗なお姉ちゃんか」
 親父はこちらの話もした。
「オックスの堅物ぶりを考えたらな」
「それもないか」
「売春宿じゃあるまいしな」
「あいつはそんな奴じゃないな」
 言われてみればとだ、ハンスも頷いた。
「やっぱり」
「だったらな」
「そうした理由じゃないか」
「ああ、それでだよ」
「どうしても知りたいならか」
「あんたの馴染みの行商人にでも頼んでな」
 そしてというのだ。
「あいつの馬車使ってもらってな」
「その後で話を聞けばいいか」
「ああ、それでどうだ」
「それがいいな」
 ハンスもそれならと頷いた、そのうえで言った。 
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