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楓の人さらい

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第三章

「だからだ」
「返してくれる」
「そうだというのですか」
「しかしそなた達わしが娘を返さねば思い切ったことをしそうだな」 
 二人を見てこうも言った。
「見ておった、酷い親を避けて馬で今の街まで逃げたな」
「それが何か」
「どうしましたか」
「随分と思い切ったことをした、そうした者達の申し出を断ると何をするかわからぬ」
 木の精は確かな声と顔で言った。
「この山を少しでも荒らされるとわしは困る、ではだ」
「娘を返してくれますか」
「そうしてくれますか」
「しかし条件がある」
 木の精は強い声で言った。
「娘を石に変えて返そう」
「石に」
「それにですか」
「その石をそなた達の今の家まで背負って帰るのだ、馬を使わずにな」
 ここまで乗って来たそれをというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですか」
「街までですか」
「帰るのだ、家まで着けば娘は石から元の姿に戻る」 
 そうなるというのだ。
「そしてそなた達は元の暮らしに戻れる」
「そうですか、ではです」
「そうさせて頂きます」
 夫婦は木の精に即座に答えた。
「私達としては」
「その様に」
「石は極めて重いぞ」
 木の精はこのことも言ってきた。
「普段の娘の十倍はだ」
「重い」
「そうなのですか」
「特別な石でな、それを馬を使わず家まで持って行けるか」
「必ず」
「そうします」
 夫婦は強い決意を以て答えた。
「そしてです」
「娘を返してもらいます」
「そこまで言うならだ」
 木の精も応えた、そしてだった。
 石になった娘を二人に渡した、すると木の精の言う通り極めて重かった。だがそれでも夫婦はだった。
 娘を交代でおぶって帰りだした、途中馬達二人が今住んでいる街に夜逃げをする時から一緒の彼等がだ。
 顔を向けて自分達が運ぼうかと目で言ってきたが。
 二人共だった、その重い石を背負いながら二人で言うのだった。 
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