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ウルトラセブン 悪夢の7楽譜

作者:紡ぐ風
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オペレーション5_5 for 7 —終曲—

 セブンの周りを這いずり回り、のしかかっても反応しないことに満足したラルバスターはセブンから離れる。ラルバスターが這ったことでセブンの体勢はうつ伏せから仰向けに変わる。その瞳とビームランプに光が灯っていないことが、セブンが敗北した現実を突きつけてくる。
 「ラルバスターよ、お前の邪魔をする唯一の障害であったウルトラセブンはいない。世界中のエネルギーを奪い尽くすのだ!」
 ジスタード星人はラルバスターに指示を出し、ラルバスターは地中へ潜り、活動を始める。
 「あれがセブンを倒した怪獣か!」
 「早く逃げるぞ!」
 イギリスに現れたラルバスターはグリニッジ天文台を起点にイギリス中のインフラ設備に糸を吐き、エネルギーを吸収しきると、地面を掘り進めて行く。エネルギーを無尽蔵に吸収していくラルバスターは徐々に移動速度を上げ、またたく間に主要国家のエネルギーを奪い尽くしてしまった。
 「リョウト、そっちのスマホってそろそろ切れそう?」
 バッテリー切れになったスマホを地面においたアヤネはリョウトに聞く。
 「俺の方もそろそろバッテリー切れになる。俺達、相当スマホに頼りっきりだったんだな。」
 「そりゃ、情報集めんのだってスマホで充分だったし。」
 リョウトからの返事を聞いたアヤネはリョウトと話し始める。
 「キリヤマさん、あの怪獣を倒すために世界中の軍隊が動いているけど、全部怪獣のエネルギーにされたって、情報が入ってきたんだけど、地球はこれで終わりなのかな…」
 ニュースを観たナリユキは不安な瞳でマユカを見る。
 「私はこんなところで終わりたくない。」
 「そんなん私だって嫌だよ!」
 マユカの返答にアヤネは苛立つ。
 「それにしてもあの宇宙人、ジスタード星人だっけ?凄い執念だよね。俺達が生まれるずっと前から防衛隊の完全解体を企んでいたなんて。」
 アキヒサは状況を冷静に整理しようとする。マユカは祈ることしかできずにいた。

 「クソっ!ダンがやられるなんて!」
 フルハシは拳を握り壁を殴る。すると、スマホに着信が入る。
 「アマギか、どうしたんだこんな時に…わかった、すぐ向かう。みんな来るんだな。」
 フルハシは電話の相手であるアマギとの通話を終えると、車を走らせ目的地へ向かった。
 「久しぶりだな、みんな!」
 目的地である石切場へ向かうと、かつてのウルトラ警備隊のメンバーが集合していたのだった。
 「アマギ、俺達を集めた目的を教えてもらえないか?」
 キリヤマは話を切り出す。
 「みんな、ダンを救いたくないか?」
 アマギは質問する。
 「できることならしたいさ!」
 フルハシは真っ先に答え、皆その答えに頷く。
 「もし、それが出来るとしたら、どう思う?」
 「それは本当か!?」
 アマギの言葉にフルハシは反応する。
 「その前に、セブンに吐きつけられた糸を調べてみたんだ。調べた結果、糸がエネルギーを電気に変換してラルバスターに転送しているようだった。」
 「つまり糸を破壊できれば!?」
 「ああ、ダンを救えるかもしれない。」
 アマギは説明をする。
 「だが、どうやってそれを実行するんだ?」
 キリヤマはアマギに質問する。
 「そのことだが、ついて来てほしい。」
 アマギは小型の機械を操作する。すると、石切り場の一部が開き通路が現れ、アマギを先頭にキリヤマ達はついて行く。
 「みんな、これを見てほしい。」
 アマギは扉を開き、あるものを見せる。
 「これは!?一体どうして!ウルトラホークがここに!?」
 キリヤマが驚くのも無理はない。アマギが見せたウルトラホークは本来、ウルトラ警備隊解隊の際に全機解体されたはずなのである。
 「国際平和機構の方法を、懐疑的に感じていた支援者達の協力で、ついに全機復元出来たんだ。」
 アマギは喜びを隠せない声色で言う。
 「こいつさえあれば、百人力だ。」
 「そうね。まさか、ウルトラホークがあるなんて思わなかったわ。」
 ソガとアンヌも喜んでいる。
 「だが、ウルトラホークを出撃させるということは、国際平和機構の命令に背くことだ。今度は死ぬまで開放してもらえないかもしれないが、大丈夫か?」
 その光景を見ながらアマギは確認を取る。
 「大丈夫だと答えるとわかっていたから、俺達をここに呼んだんだろ?」
 キリヤマの言葉にソガは頷く。
 「俺達は今まで、何十回とダンに助けられたんだ。だったら俺達は、何百回だってダンを助けるんだ!」
 フルハシは力強く答える。
 「そうね。人間の底力、見せてあげましょう。」
 アンヌも了解し、キリヤマ達はウルトラ警備隊の大福に着替える。
 「ウルトラホークを飛ばせば、確実にラルバスターとジスタード星人は反応し、我々を狙うだろう。そこで、ウルトラホークはすべて囮としてラルバスターの相手に回り、マグマライザーでセブンの手足の糸を破壊し、太陽エネルギーの吸収でセブンを救う。この作戦で行こう。」
 キリヤマは作戦を立案する。
 「3号には新しく自動操縦の機能を搭載してある。3号には乗らず、マグマライザーに乗って行動するほうがいいでしょう。」
 アマギは補足する。
 「よし、作戦は大方決まったな。作戦の開始は日の出の時間、5時5分がいいだろう。作戦名は、『オペレーション 5_5 for 7』とする。」
 キリヤマは作戦の方針を固める。
 「待ってろダン、すぐに助けてやるからな。」
 フルハシは誰よりも早く準備を開始した。

 夜が明け、ラルバスターは再び地上に現れる。エネルギーを完全に失ったウィンダムは怪獣カプセルに戻っており、その跡地に現れたためセブンに近づこうとしていた。
 「目標発見、オペレーション 5_5 for 7、開始!」
 ウルトラホーク1号に乗り込んだ桐山の号令によって作戦が開始される。
 「…ん、この音は?」
 いつの間にか校舎の屋上で寝ていたマユカ達は飛行機のエンジン音のような轟音で目を覚ます。
 「そんな!あれは!」
 マユカは飛行するウルトラホークを見て驚く。
 「マユカ、あれが何か知ってんの!?」
 アヤネはマユカに尋ねる。
 「私は知っている、あのことを。」
 「あのことって、あの戦闘機のこと?」
 「うん、秘密…って言いたいけど、あんなふうに活躍していたら隠せないよね。」
 マユカはラルバスターにレーザー攻撃を行うウルトラホーク2号を見ながら答える。
 「本当は絶対言ったらいけなかったんだ、ウルトラホークが何なのか。」
 「ウルトラホーク?」
 「あれはウルトラ警備隊の主戦力、ウルトラホーク。地上や地底での活動用戦力、マグマライザーを搭載した3号に、宇宙空間では秒速600万mで飛行できる2号、そして地球防衛の要になる、α、β、γの3機が合体する1号があるの。」
 ラルバスターを攻撃するウルトラホークを見ながらマユカは説明する。
 「おのれ、地球人め!まだそんなものを隠し持っていたとは!」
 ジスタード星人は怒りを顕にしながらウルトラホークのエネルギーを奪うようにラルバスターに命令する。しかし、ウルトラホーク1号は高速で分離し糸を避けると、すぐに再合体し、ラルバスターを攻撃する。
 「嘘…あんな高速での分離合体なんて情報、私知らないんだけど!」
 マユカは目の前で繰り広げられる戦術に驚きを隠せずにいる。
 「キングジョーの解析をしていたデータが、こんな形で役に立つとはな。」
 β機を操縦しているアマギは得意そうな顔で言う。
 「ダン、今助けてやるからな!」
 3号から排出されたマグマライザーに乗り込んだソガはドリルを駆使してセブンの手足に纏わりつく糸を剥がしていく。
 「そっちが狙いか!ラルバスター、あのマシンを狙うのよ!」
 ジスタード星人はラルバスターにマグマライザーを狙うように指示を出す。しかし、
 「ホークミサイル、発射!」
 ウルトラホーク1号の主戦力であるホークミサイルによって行動が阻害される。そして、マグマライザーは糸玉を全て破壊する。すると、セブンの胸部に太陽の光エネルギーが収束してゆく。その光が落ち着くと、セブンの瞳とビームランプに再び光が灯り、セブンは立ち上がる。
 「よし、俺達のセブンが帰ってきたぞ!」
 キリヤマは喜びの声を上げる。
 「デュワッ!」
 セブンはウルトラホークに対して頷き、ファイティングポーズを構える。
 「何度立ち上がっても同じこと!ラルバスター、もう一度セブンのエネルギーを奪え!」
 ジスタード星人の指示を受け、ラルバスターは糸を吐くが、ウルトラホーク3号の銃撃により阻止され、それを見たセブンはアイスラッガーを宙に浮かせる。
 「よしアンヌ、ソガ、こっちも一斉射撃だ!」
 「わかったわ。」
 桐山の号令でウルトラホークも攻撃態勢を取り、セブンはアイスラッガーを両手で打ち出すウルトラノック戦法をラルバスターの頭部めがけて放ち、各ウルトラホークも主戦力となる武器でラルバスターの頭部に追撃する。一斉攻撃を受けたラルバスターは火花を散らしながら爆発する。セブン達が安心したのもつかの間、なんとラルバスターの破壊された頭部から抜け出すように機械じかけのアシナガバチのようなロボット怪獣が現れたのだった。
 「愚かな奴らだ。ラルバスターはただの幼虫、この放電機獣イマーグランドこそ、真の姿なのよ!」
 “ブゥオオオンッ!”
 イマーグランドは雄叫びを上げながら辺り一帯に電撃をばらまく。その電撃に被弾し、ウルトラホークは全機墜落する。しかし、キリヤマ達は墜落する寸前に脱出し、合流してイマーグランドを操るジスタード星人を探すために動き出す。
 「デュワッ!」
 セブンは果敢にイマーグランドに近づき、チョップの連打を浴びせる。
 “ブゥオオオンッ!”
 イマーグランドはセブンのチョップが落ち着いた瞬間に口から緑色の熱線を放ち、セブンにダメージを与える。
 「エメリウムの熱線を使えるなんて、セブンのエネルギーを吸っただけのことはあるわね。」
 ジスタード星人は満足そうに言う。だが、
 「見つけたぞ!」
 キリヤマ達に発見され、包囲される。
 「愚かな地球人、私に向かって発泡することが、どういう意味がわからないのか?平和であることを捨て、野蛮な民族であると、宇宙人を差別する民族であると、この宇宙中に広めることになるのだぞ。」
 ジスタード星人は余裕の態度を見せる。
 「それは違う!今までの我々は、侵略者に支配されていただけだ!これは、その侵略から開放されるための1発だ!」
 キリヤマは迷わずジスタード星人を撃ち抜く。
 「忘れるな、宇宙全体が、地球を求めていることを…」
 ジスタード星人は火花を散らし、爆散した。
 「デュワッ!」
 一方セブンはイマーグランドの放つエメリウム熱線に苦戦していた。しかし、熱線を避け続けると、イマーグランドからエメリウム熱線が放たれなくなる。
 “ブゥオン?”
 イマーグランドは何度も熱線を放とうとするが、熱線が出てくることはなく、チャンスと感じたセブンはすかさずワイドショットを放ち、イマーグランドは爆散し、セブンは朝陽へ向かって飛んでいった。
 「ねぇマユカ、私今やりたいことが見つかったかも。」
 「アヤネがそんなこと言うなんて珍しい。」
 「この5人でさ、いろんなことを話したいなって。」
 「いろんなことって?」
 「今までの歴史で起きたこととか、今私達が抱えている問題とか、そういうの。」
 アヤネは具体的ではないものの、やりたいことを話す。
 「それなら、議論系の同好会を作るのはどうだ?5人いれば、同好会としての設立は可能だろ?」
 アヤネの話を聞いてリョウトは提案する。
 「俺はその意見に賛成。価値観がみんな違うから、いい話ができるかも。」
 「活動時間は短くなるかもしれないけど、俺も賛成。最近、母さんも少しは俺の意見を取り入れてくれるようになったし。」
 ナリユキとアキヒサも賛成する。
 「同好会って、第一、部長とかは誰にするの!?」
 マユカは困惑する。
 「そんなん、マユカに決まってっしょ。マユカの祖父さんは昔ウルトラ警備隊の隊長やってたんだし。」
 「そんな、急に言わないでよ!まぁ、でも、あの文句しか言えない文芸部を辞めるのにはちょうどいい理由かも。それじゃ、早速活動申請書でも書こうか。」
 マユカ達は屋内に入り、階段を降り始めた。

 それから暫く経ち、キリヤマ達はレストランに集まり食事を取っていた。
 「にしてもダンの奴、もう少し残って挨拶くらいしていけばよかったのに。」
 フルハシは言う。
 「仕方ないでしょ。今回は調査でこっちに来ただけで、すぐに戻らないといけなかったみたいよ。」
 ワイングラスを置きながらアンヌは答える。
 「それより、国際平和機構が解体になったのは意外な事件だったな。」
 「おかげで、こうしてまた会えたんだ。それを喜ぼう。」
 ソガとキリヤマはワインを飲みながら語らう。ニミンダ長官が宇宙人であったことから国際平和機構に捜査のメスが入り、その結果役員の3分の2が侵略目的の宇宙人であること、何より日本支部長の白倉の正体もまた、地球の爆破を狙うバド星人であったことから、国際平和機構の安全性は崩壊し解体となり、その切っ掛けとなったキリヤマ達の活動は不問となったのだった。
 「なに、我々だけで解決できない事態に直面したら、ダンならきっと焦って駆けつけてくれるだろう。あいつはそういう奴だろ?」
 「確かにそうね。」
 キリヤマ達はダンとの思い出話に花を咲かせていたのだった。

 一方、M78星雲に帰還したセブンは、訓練施設でウルトラマンゼットの組手の相手をしていた自身の息子、ウルトラマンゼロを見ていた。それに気づいたゼロとゼットは組手を止め、セブンに近づいた。
 「親父、地球での調査は済んだのか?」
 「ああ、急を急ぐほどではなかったから、お前達の組手を見たくてな。」
 「ゼットの奴、まだまだって所だろ?」
 「なんだ?二万年早いのか?」
 「親父!俺の口癖でからかうな!」
 ゼロとセブンのやり取りを見ていたゼットは対応に困っていた。
 「ゼット、お前が地球で出会った青年、確かハルキ君といったか?彼は、どんな感じだ?」
 そんなゼットにセブンは話しかける。
 「ハルキですか?真面目で、真っ直ぐで、いいやつだと思います。ハルキ、セブン大大師匠と話しますか?」
 ゼットは自身と一体化した地球人、ハルキに尋ねる。
 “いいんですか!?是非とも、話を聞きたいっす!”
 「了解。セブン師匠、ハルキと話してみますか?」
 「いいのかい?ハルキ君、ゼットとは上手くやれているようだね。」
 “いえいえ、セブン師匠やゼロ師匠の力を借りなければ、俺達はまだまだっすから。”
 「そんなことはないさ。ウルトラマンに大切なものは、何より平和を愛し、儚き命を守り抜こうと思う精神だ。それが身についているんだ。君のお父さんは、きっと立派な方だったんだろう。」
 “そうっすね。怪獣相手に自分の命を擲って、逃げ遅れた人を逃して、最後は子供を庇って…”
 「嫌な話を思い出させてすまなかった。」
 “そんなことはないっす!そんな父がいたから、俺はストレイジに入隊して、ゼットさんに出会えたんすから!”
 「お父さんの志は、しっかり君の心に宿っているみたいで、君のお父さんも浮かばれているだろう。さて、そろそろゾフィーに報告に行かないといけない。2人とも、頑張るんだぞ。」
 セブンは訓練施設から出ていき、ゾフィーの所まで向かった。
 「どうだったセブン、何かわかったか?」
 「うむ、80の派遣を考えたほうがいいかもしれない。」
 「80の派遣?まさか、あのエネルギーの正体はマイナスエネルギーというのか?」
 「ああ、時代の変化で、性質が大分変化してしまったから最初は気づかなかったが、あれは確かにマイナスエネルギーだった。急を要するほどではないが、警戒しておいたほうがいいかもしれない。」
 「そうだったのか。アブソリューティアンとの一件が片付いたら、話しておこう。長旅、ご苦労だった。」
 ゾフィーと合流したセブンは調査結果をゾフィーに報告し、セブンの地球での新たな戦いは幕を下ろした。

 それから少しの時が経過し、マユカ達はファーストフード店に集まっていた。
 「結局、同好会の申請は却下されちゃったね。」
 マユカは残念そうに言う。
 「まあ、明確な活動内容を書けないし、仕方ないか。でもまあ、話すことが目的なら、こうやって放課後集まれればどこでもできるじゃん。」
 リョウトはマユカを励ます。
 「そこじゃないと思う。まず、ウルトラ議論同好会って名前に問題があったんだと思うんだけど。」
 「確かにダサイとおもうけど、それくらいダサければ、アタシら以外入部してこないからアタシらだけの同好会って感じだし、別に嫌じゃないけど。」
 アキヒサのツッコミにアヤネは返す。
 「まずは、同好会のスローガンみたいなものを決めない?その方が、みんなモチベーションが上がるでしょ?」
 ナリユキは提案する。
 「だったらあれじゃね?マユカが文芸部で笑われたあの1文。結局、あの1文が事実だったし、それが切っ掛けで同好会を作ったんだし。」
 その提案にアヤネは更なる提案をする。
 「それでいいの?それなら、この同好会のスローガン、それは─」
 『地球は、まだ狙われている。』
          完 
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