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国境の緊張

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第一章

                国境の緊張
 インドとパキスタンの国境の話を聞いてだ、観光旅行が趣味のサラリーマンの若田部三太郎はその話をした同僚の篠原恒樹に言った。
「あの二国滅茶苦茶仲悪いからな」
「ああ、だからな」
 篠原は若田部にそれでと答えた、若田部が収まりの悪い茶髪をやや伸ばしていて面長の顔に小さな剽軽そうな目と小さ目の唇と薄い短い眉に高い鼻を持つ一七二位の痩せた背であるのに対して彼は一七五位のがっしりした体格で。太い眉とひし形の目に濃い唇と低い鼻に角刈りという外見をしている。
「国境もな」
「凄いことになってるか」
「お前どっちかの国に行ったことあるか」
「今度インドに行くつもりだよ」
 若田部はあっさりとした口調で答えた。
「それじゃあな」
「いい機会だからか」
「行ってみるな、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「実際にどんなのかな」
「見るか」
「ああ」
 そうすると答えた。
「それじゃあな」
「じゃあ見て来い、ただな」
 篠原は若田部に真面目な顔で述べた。
「あの二国の仲はな」
「世界でも最悪だよな」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「注意しろよ」
「迂闊に挑発しないことだな」
「どちらの国もな」
 こうした話をしたのだった、そしてだった。
 若田部は実際にインドに旅行に行きインドの色々な地域を観光し現地のものを食べたりしてだった。
 その国境に来た、するとガイドがこんなことを言った。
「ここはです」
「ええ、国境で」
「ゲートになっていますが」
「そろそろ閉鎖される時間ですよね」
 現地の褐色の肌に品のいい顔立ちの自分より三つ年上だというガイドに答えた。
「そうですよね」
「はい、今から」
「一体どんなのか」
「見所ですよ、ただ絶対にです」
「近寄らないことですね」
「半端じゃなく緊張していますから」
 ガイドは若田部に真剣な顔で答えた、そしてだった。 
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