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神木の強み

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第一章

                神木の強み
 寛治七年、西暦で言う一〇九三年のことである。
 時の帝堀河帝は頭を抱え父君であられる白河院に言われていた。
「いや、これはです」
「困ったことになったのう」
 院も難しい顔で言われた、出家されており頭は剃られ丸いお顔で眉は太くあられ全体的に細く色白で穏やかな感じの帝とはまた違う雰囲気であられる。
「この度は」
「左様ですね」
「興福寺の者達があそこまで強気だとな」
「前から強い力を持っていましたが」
「それがだ」
 院はさらに言われた。
「これまで以上にな」
「強気であります」
「朕としてはだ」
 院は本朝を治める方として言われた。
「なるべきな」
「穏やかにでありますな」
「ことを済ませたいか」
「はい、朕もです」
 帝も言われた。
「そのことは」
「帝もであるな」
「左様です、しかし」
「うむ、興福寺の方はな」
「どうしてもです」
「近江守を許せぬときた」
「蒲生にあの寺の領がありますが」
「近江守がその領の奴を勝手に使役に用いてな」
「そして春日大社の社領のことで」
 興福寺のある大和国の社のというのだ。
「揉めまして」
「興福寺はな」
「これ以上はないまでに怒っています」
「朕達としては穏やかに済ませたいが」
「あちらは僧兵もいますし」
「朝廷もな」
「迂闊なことは出来ませぬ」
 朝廷には侍がいる、それでも興福寺の僧兵達は多く強い、それで帝も憂いてこの度言われるのである。
「侍の数は僧兵達を抑えるには少ないかと」
「うむ、だからな」
「迂闊にはです」
「手は打てぬ」
「どうしたものか」
 帝も院も頭を抱えておられた、そしてお二方がどうすべきかと悩んでおられるその間に興福寺は思わぬ動きに出た。
 院はその報を聞いて仰天して言われた。
「何と、春日の神木をか」
「はい、奉じてです」
 報を届けた公卿も我を保つのに必死である。
「そして上洛してきています」
「これはいかん、すぐに帝と話そう」
「それでは」
 院は自ら言ってご自身が動かれる前に来られた帝と話に入られた、院は致し方ないといった面持ちで言われた。
「これは仕方ない」
「近江守をですか」
「処してな」
 そうしてというのだ。 
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