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漆龍

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第二章

「おい見たか」
「見たぞ」
 二人で驚きの顔でそうした。
「漆があるぞ」
「川の底にな」
「それもあんないい漆はない」
「見たことがなかったな」
「ああ、あの漆を拾って売るぞ」
「そうするぞ」
 兄弟で話してだった。
 すぐにその漆を採って持って帰った、すると兄弟は大儲けをしてそれぞれの家はかなりの財産を得た。
 それからも二人は時々その川に潜ってそこの漆を採っていたがそれを見てだった。
 隣の村の米介実に卑しい顔をした強い者には媚び諂い弱い者はいたぶり何事にも卑しく浅ましいその村どころか近所一帯の嫌われ者である彼がだ。
 家族にこんなことを言った。
「隣村の安佐衛門と十兵衛の兄弟随分儲けてるな」
「ああ、漆を採ってな」
「ならわしもだ」
 米介は卑しい笑顔で言った。
「是非な」
「漆を採ってか」
「儲けてやる」
「おい、しかし漆はな」
「ああ、わしはかぶれん」
 まずはこう返した。
「それに漆が多くある山も知っている」
「そうなのか」
「だからな」 
 それでというのだ。
「その山に入ってな」
「漆を採ってか」
「儲けるぞ」
「それでその山は何処だ」
「ああ、その山はな」
 米介はその山の名前を話した、すると家族はこう言った。
「おい、その山はな」
「何だ?」
「奥に火を吐く龍がいてな」 
 そしてというのだ。
「迂闊に入ったらな」
「その龍に取って食われるか」
「そうなるぞ」
「ははは、そんなの会わないといいだけだ」
 米介は家族の話に笑って応えた。
「だからな」
「行くのか」
「ああ、儲けて来る」
 こう言ってだった。
 米介はその山に入った、だが帰って来ることはなく。
 気になった隣村の者が漆を採りに行ったのでいなくなったことから縁があると思い安佐衛門と十兵衛に事情を話すとだった。
 二人は顔を見合わせてだ、それで話した。
「それってな」
「ああ、龍にやられたな」
「そうだな、あの山だとな」
「そうなったな」
「あの山も漆は多いけどな」
「龍がいるからな」
 それでというのだ。
「わし等も奥に入らないが」
「あいつは入ったな」
「ああ、しかし嫌な奴でもな」
「骨位は拾ってやらないとな」
 兄弟で話してだった。
 そうして実際に神社や寺でお札やお経、龍に対する魔除けを貰ってからそのうえでその山の奥に入るとだった。
 そこの淵から赤い龍が出て来た、龍は二人を見て言った。 
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