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ボロ家じゃない家

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第二章

「このお家って。電気ガス水道は通ってるけれど」
「趣のあるいいお家じゃない」
 恵は昔ながらの日本の農家英の実家を見て言った。
「趣があって」
「そうかな」
「このお家にずっと暮らしてたのね」
「僕も家族もね。家は姉さんが結婚して跡継いでるよ」
「それで今から」
「両親にね」
 二人にというのだ。
「恵ちゃん紹介するよ。姉さん夫婦にもね」
「わかったわ、けれどボロ家なんてとんでもないわよ」
 恵は強い声で言った。
「古いお家でも凄く奇麗だし」
「まあ掃除はしてるよ、不便もね」
 これもというのだ。
「特にね」
「感じたことないのね」
「言われてみればね」
「それならね」
 恵はさらに言った。
「いいでしょ、私はそう思うわ」
「じゃあボロ家と思っていたのは」
「英君の主観だったのよ」
「そうなんだ、それじゃあ」
「ええ、今からね」
「家の中に入ろう」
「案内お願いするわね」
 恵は笑顔で応えた、そうしてだった。
 英の両親に紹介してもらった、するとお互いにいい印象を持って結婚への大きな一歩になった。そのうえで恵の両親に英を紹介もしたが。
 こちらもお互いにいい印象を持てた、そして二人は結婚し英そっくりの息子である潔が出来て毎年お盆に英の実家に行ったが。
「暮らしていてもね」
「いいお家なんだ」
「日本の風情があって」 
 恵は夫に笑顔で話した。
「ガスも電気でも上下の水道もあるから」
「問題ないんだ」
「いいお家よ。というかボロ家でも快適に暮らせたら」
 それならというのだ。
「外観はどうでもいいでしょ」
「そうなるんだ」
「私にとってはね」
「そうしか考えもあるか。人間も外見じゃないけれど」
「お家もよ。というかこのお家外観もいいわよ」
 こちらもとだ、こう夫に言ってだった。
 彼の実家への里帰りも楽しんだ、その時の恵の顔はとても明るい笑顔だった。


ボロ家じゃない家   完


                   2023・8・25 
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