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X ーthe another storyー

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第三十一話 墓参その二

 草薙は星史郎の動きを見て優しい目で言った。
「大事に思ってるんだな」
「そうでしょうか」
「動きを見てわかったよ」
 こう言うのだった。
「毎月来てるだけじゃなくてな」
「それに加えてですか」
「ああ、あんたはな」
 実際にというのだ。
「今もご両親を愛しているな」
「そうだと思わないですが」
「あんたはそう思っていてもな」 
 星史郎自身がというのだ。
「けれどな」
「僕は、ですか」
「ああ、ご両親に愛されていてな」
 そしてというのだ。
「あんたもな」
「殺した時に何も感じませんでしたが」
「あんたが気付いていないだけだよ」
 そうだというのだ。
「実はな」
「痛みをですか」
「感じていてな」
「愛情もですか」
「あるさ」
「そうなのですね。僕は」
「そうですね」
 遊人も言って来た。
「僕もです」
「そう思われますか」
「はい、僕達にも親切ですし」
「普通に接しているだけですよ」
「それが普通ならですよ」
「僕は、ですか」
「人のことがわかっているので」
 だからだというのだ。
「親切です、そして」
「痛みもですか」
「感じています」
 そうだというのだ。
「間違いなく」
「誰に何をしても何も思いませんでしたが」
「そうは思わないですよ、では僕が死にそうならばどうしますか?」
「決まっているじゃないですか、助けますよ」
 星史郎は微笑んで答えた、雨の中で墓は次第に奇麗になってきている。
「お友達ですから」
「そうですね」
「はい、絶対に」
 こう言うのだった。
「そうしますよ」
「それが答えですよ」
「僕がどういった人間か」
「そうです」
「自分ではそう思っていても」
「実は違っていたりしますね」
「はい、主観と客観ですね」
 星史郎は遊人に顔を向けて微笑んで答えた。
「その違いですね」
「自分が見る自分と人が見る自分はまた違います」
「まさにそうですね」
「またその人それぞれで」
「客観も違いますね」
「ですがおおまかに言いまして」
「主観と客観に分けられますね」
 遊人にあらためて言った。
「そういうことですね」
「はい、そして僕達はです」
「僕は人の痛みがわかってですか」
「人の気持ちもわかる」
「そうした人ですか」
「例えばです」  
 遊人はここでこう話した。 
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