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ボスママより強い人

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第一章

                ボスママより強い人
 広島市にあるその団地は八条グループの広島市にある企業に勤務している社員とその家族の為の場所である。
 人が集まる場所では自然とリーダーが出て来るものでありそれはこの団地でもであった。そのリーダーはというと。
「ああ、南田さんの奥さんが言ってるならな」
「私達もね」
 この団地に住んでいる若夫婦がこんな話をしていた、名字を高橋といい夫の名は学といって色黒で細面で丸い目を持っている。やや癖のある黒髪で背は一七〇位だ。妻は幸といい黒髪を後ろで束ね大きな目が印章的な童顔で顔はやや丸い。背は一五六位で色白で胸はあまりないが半ズボンから出ている脚は奇麗だ。夫は八条水産広島支社妻は八条カードバトル広島店にそれぞれ勤務している。共働きでまだ子供はいない。
「そうしないとね」
「この団地じゃな」
「あの人が顔役だからね」
「ああ、所謂あれだな」 
 夫は妻に言った。
「ボスママだな」
「そうなのよね、ただ人のお話は聞いてくれるし横暴でもないし」
「弁えた人だからな」
「困らないけれどね」
「そうだな、あの人の旦那さんは」
 夫は彼女の夫の話をした。
「八条自動車のな」
「こっちの支社長さんよね」
「出来る人で人柄もな」
「出来た人ね」
「だからな」 
 それでというのだ。
「夫婦で評判はな」
「悪くないわね」
「それでゴミ捨てはか」
「今度からちゃんと分けることを徹底するから」
「うちもだな」
「気を付けていくわ」
 夫婦で部屋の中でこんな話をした、兎角この団地ではその主婦長内陽子の発言力が大きかった。陽子は一六七近い背で四十代半ばとは思えない位見事なスタイルで姿勢もよくホームベース型の顔で皺一つなく切れ長の大きな目と紅の微笑んだ唇が印章的な美人で長い黒髪をセットしている。そんな彼女に逆らう者は団地にはいなかった。
 この時まではそう思われていた、だが。
 ある日団地にある人が来た、すると。
「お、お久し振りです」
「いやいや、堅苦しいのはいいけえ」 
 好々老爺といった外見のラフな服装の老人が団地に来るとだ、いつも堂々としていて気さくに仕切る陽子がだった。
 直立不動といった感じで平伏せんばかりになって前に出て恐縮することしきりだった、これには団地の誰もが驚いた。
「えっ、長内さんが!?」
「あの長内さんがあんなに恐れるなんて」
「頭が上がらない感じだけれど」
「あのお爺さん何者?」
「うちの団地に何か用事があって来られたみたいだけれど」
「あの人確か」 
 ある主婦が陽子に上座に上げられんばかりの応対を受けている老人を見て言った。 
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