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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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越えられない壁

 
前書き
先週なぜかサイトにログインできなかったため一週間更新が遅れてしまいました。
そろそろ暑さも落ち着いてきそうなので頑張って頻度を上げていきたい・・・ 

 
グラシアンside

何も見えない真っ暗な空間。いや、空間じゃない。顔に何かが張り付いているような感覚があるということは、視界を塞ぐための何かが付けられているのだろう。そんなことを考えていると、不意に視界がクリアになり目の前に扉がある壁が入る。

「中に入るとこんな感じなのか。なんか殺風景っていうーーー」

恐らく俺の順番ということで視界が晴れたのだろうと考えながら一人言を呟いていると、隣に見覚えのある人物がいることに気が付き動きが止まる。

「一夜?」

俺の隣にいるのは魔法による目隠しをされている一夜。そんな彼にも俺の声が聞こえていたのか、返事が返ってくる。

「メェーン。まさかもう遭遇したのか?グラシアンくん」
「いや、俺もこの部屋がスタートだ」

まさか同じ部屋からスタートすることがあるのかと思っていたところ、他の人影はない。俺たちだけが特例なのかはたまた他にも同様な条件の奴がいるのか、そんなことを考えていると脳内に聞き覚えのある声がしてくる。

『グラシアン選手、一分以内に好きな扉を選ぶカボ』

念話で通達してくるということは今が誰のターンなのか他の参加者にはわからないということ。さっきのくじ引きが白紙だったのは運営だけが順番を把握するためだったということか。

「どの扉がいいと思う?」
「見えてない私にそれを聞くのか?」

最初なんてどの扉を開けても一緒なので一夜に問いかけてみるが、こいつらしい真面目な回答が返ってくる。そもそもここがどの部屋なのかもわからない上にゴールも自分たちで推察しなければならないのに、どの扉が正解かなんてわかるはずがない。

「ここでいっか」

ガコッ

とりあえず目の前の扉のドアノブを回してみると扉を開くことができた。それと同時に脳内に再度、マトー君の声が聞こえてくる。

『正解ですカボ!!そのまま次の扉も選ぶカボ』

どうやら正解ごとに念話で教えてくれるらしい。成功する限りは自分のターンであることを考えると、次も当てておきたいと思ったが・・・

「!!」

俺はそこであることに気が付いた。

「なるほど。これで部屋の位置を特定するわけか」

進めば進むほど情報が入ってくるのはありがたい。そう思いながら俺は次の扉へと手を伸ばした。

















シリルside

『グラシアン選手!!二つ目の扉も見事正解です』

一番手であるグラシアンさんが難なく二つの扉を解錠する。ただ、昨日のような盛り上がりは今のところない。だってそんな盛り上がるほどの何かが起きているわけではないのだから。

「地味だね」
「地味ね」
「地味ですね」

ルール説明の時は頭を使うゲームだと思っていたけど、始まったのを見ていると何とも絵面が地味だ。だって扉に手をかけて開くか開かないかをやっているだけ。実況席もそれ以上のことが言えずに困っているようにも見える。

『ああっと!!グラシアン選手、三つ目の扉は開くことができませんでした!!』

二つ目の扉から正面に見える扉へと手を伸ばしたグラシアンさんだったけど、それは失敗に終わりターン終了。次のターンは四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のロッカーさん。

「はぁ・・・目隠しされてるグレイ様も素敵」

そんな中隣でうっとりとした表情でいまだターンの回ってきていない参加者の一人を眺めているジュビアさん。うちがウェンディを出した途端にグレイさんが出てきていたので、恐らくジュビアさんとの戦いを回避したかったのだろう。

『おっとロッカー選手!!いきなり失敗です!!』

悔しそうな表情のロッカーさんの姿が魔水晶(ラクリマ)ビジョンへと映し出される。しかも今回の彼の失敗は見ていた側からすればタメ息を付きたくなるようなものなのだ。

「しかしこれ、カミューニの性格の悪さが滲み出てるわね」
「そうですね。まさか全員角部屋からのスタートなんて思っても見ないでしょ」

そう、実は今回の八人の参加者は四つの部屋へとそれぞれ移動され、スタートとなっている。それも角の部屋から始まっていることから、二つの扉は何の部屋もない壁へと繋がっている扉。つまり正解は実質的に二択しかないのだ。もちろん見ている俺たち側からすればだが。

「しかも正解を私たちが知ってるから見えるけど・・・」
「これは最初で躓く人が多いですよ、きっと」

実は全員が配置についてからカミューニさんが言っていたのだが、最初の正解は今全員が正面を向いている扉なのだ。つまり視界が開けて最初に目に入った扉に何の疑問も抱くことをせずに手を伸ばせば最初の正解が得られる。

ただ、もちろんそんな簡単に目の前の扉に手を伸ばすことなんかできない。迷宮という名前からしてそんなことを運営側がしてくるとは微塵も思っていないだろうから、全員が全ての扉を見て周り、結果正解から離れてしまうという仕組みだ。

『続いて人魚の踵(マーメイドヒール)のベス選手も失敗です!!』
「次はウェンディか」

前の三人が終わったことで次はウェンディのターン。彼女は目隠しが外れると一度周りを見回し、すぐ隣にいる男に目を見開いていた。

















ウェンディside

私の順番になったからでしょうか、真っ暗になっていた視界が開けました。そして部屋の中を確認すると、隣に私の倍はあるのではないかというほどの大柄な男性が目に入ります。

「この人は・・・」

隣にいるのは狩猟豹の頭(チーターヘッド)からの参加者であらグレイティスさん。でも、私は一つ気になった点がありました。

「あれ?この匂い・・・」

消臭魔水晶(ラクリマ)を使っているからかほぼ無臭になっているグレイティスさん。しかし、この至近距離だからでしょうか、微かに匂いがします。それも覚えのある匂いが。

『ウェンディ選手、一分以内にお進みくださいカボ』

困惑している私に念話で語りかけてきたのはマトー君。その声で今の状況を思い出した私は扉に向き直ります。

「そうはいっても・・・」

ただ、今ここがどこなのか、そしてゴールがどこなのかもわからないこの状況。どの扉を選べばいいのか皆目検討が付きません。ただ一つを除いては。

(あれが本当なら、正解の扉はこれのはず)

ゲーム前に得ることができた数少ない情報。そのうちの一つが本当ならと、私は目の前の扉へと手を伸ばしました。

















シリルside

『ウェンディ選手成功です!!』
「ふぅ」

無事に正解の扉を開くことができたウェンディ。そのことに安堵の息を漏らしていると、両隣にいるカナさんとルーシィさんがニヤニヤとこちらを見ていることに気が付いたため、咳払いしてビジョンへと意識を戻す。

「よく正解できたわね」
「たぶん・・・カミューニさんがゲームを考案したって聞いたからですね」

ミラさんも驚いたような声を出しているけど、ウェンディは恐らく最初のカミューニさんの言葉から今の回答にたどり着いたんだと思う。彼の性格の悪さならきっとこちらの疑心暗鬼を利用してくると踏んで、最初は目の前の扉を選ぶべきだと悟ったんだ。

「でもここからはノーヒント。どう進むのが正解なのかしら」
「進め方は三通りと言ってましたけど・・・」

しかも三通りのうちの一つは一回しか出てこない。実質は二通りと言うことになる。ただそれがどんな進み方なのかわからない限りは正解を確定することはできない。

『ウェンディ選手失敗です!!続いてーーー』

彼女もさんざん迷った結果左側にある扉を選択したが失敗。残念そうにしている少女は次のターンまでの間しばらくその場で待機することになっていた。
















あれからしばらく経つが、なかなか展開が進んでこない。それもそのはず、ほとんどの参加者がなかなか正解の扉を見つけることができず進むことができないのだ。

『皆さん、なかなか進みませんね』
『うむ。これは相当難しいゲームになるだろうね』

これには実況席もなんといえばいいのかわからず困惑している様子。そんな中、みんなが迷宮をさ迷っている様を見て笑みを浮かべている者がいる。

『当然だろ?そう言う風に作ってあるんだからな』

それはゲームの発案者であるカミューニさん。彼は自身の思惑通りになっているからか、非常に楽しそうにしている。それはもうムカつくぐらいの笑顔で。

『正解を解き明かすのも自分、そして周りの奴らの進行状況もわからなければ気持ちは急いていく。そしてその焦りはますます泥沼へと自らを誘うんだ』

その言葉通りになかなか進めずに焦ってしまったのか、グレイさんがまさかの同じ部屋にて連続失敗。頭のいい彼だからこそと言うべきか、思考の沼にハマっているのが見てとれる。

『今現在一番進んでいるのは剣咬の虎(セイバートゥース)のグラシアン選手!!・・・で合ってますか?』
『あぁ。合ってるよ』

一本道というのが救いか、開けた扉の枚数が多ければ多いほど進行できているのは言うまでもない。現在一番進んでいるのはグラシアンさん。彼はすでに11枚の扉を突破しており現在トップ。他の参加者たちが軒並み3、4枚しか進んでいないところを見るとすでにダントツのトップと言っていい。

「このままだとグラシアンが勝つのか?」
「いえ・・・」

少しずつ進む枚数が増えているグラシアンさんを見ると彼は何かを理解したかのように見える。それは恐らく正解の道筋なのだろうと理解するのには時間はかからない。だけど・・・

「ただ進めばいいわけじゃないのが、このゲームですから」

このゲームはただ進んでいくゲームじゃない。そしてそれは気持ちが焦っていればいるほど忘れてしまい、無防備になるトラップがある。

















第三者side

扉のドアノブを見つめるグラシアン。彼はそれを見て確信を持ったのか、ニヤリと笑みを浮かべている。

「やっぱりな。これで回答はわかった」

彼はそう言うと扉へと手をかけノブを回す。それは正解だったようでそのまま次の部屋へと進み、また扉を開く。

「ずいぶんと手の込んだやり方をしやがって。危うく騙されるところだった」

迷う様子もなく扉を開け進めていくグラシアン。その表情からはすでにゲームを攻略したという自信が満ち溢れていた。

(二通りっていうのは嘘じゃない。ただ、注目すべきはすべての部屋を通るということ。もしそうなると二方向にしか進めないのではゴールができない。かといってただ適当に二方向・・・この場合は左右だが、それを選んでいたら頭脳戦も何もない。恐らく常に対角線上に同様のルートが出るようなマスを当てはめてのゲームになっているはず)

カミューニの思考を完全に理解したグラシアンは迷うことなく扉を開け進めていく。一人だけ次々と進んでいくその様を見て、観客たちは沸き上がっていた。

「これはグラシアン選手、法則を解き明かしたのか!?みるみる迷宮を進んでいく!!これはこのままゴールへと辿り着けるかぁ!?」

これには実況席のチャパティも興奮している。ただ、その横にいる青年だけは不敵な笑みを浮かべていた。

「大事なルールを忘れてるねぇ、チャパティさん」
「大事なルール?」
「そう。これは一人でやるゲームじゃない。進んでいけばいくほど、リスクも伴うということだよ」

初めはその言葉の意味がわからなかったチャパティとヤジマは顔を見合わせる。しかし、グラシアンの進んでいく先を見て彼らもそれに気が付き、観客たちもそれを理解した。そして・・・

ガチャッ

「グラシアン選手!!グレイティス選手と遭遇です!!れ

グラシアンは自身の進行ルートにいた敵との遭遇に見回れていた。

















「本当にあの場所にこのタイミングで到達できるとは・・・何者だ?あやつは」

長い髪をした女性はグラシアンを見ながら驚愕したような声でそう呟く。それを聞いていたショートヘアの女性はニヤリと笑みを浮かべて答えていた。

「そりゃあ今回のターゲットになるくらいだからな。それに、あいつにも一太刀入れたらしいぞ」
「へぇ。あの子の買い被りじゃなかったんだ」

クスクスと楽しげな雰囲気を醸し出している二人。その後ろにいる青年は不安げな雰囲気を出しており、彼女たちの隣にいる人物は興味がないのか座り込んで今にも眠りそうになっている。

「さて、それじゃあ見せてもらいましょうか。最強ギルドに所属していた同士の戦いを」

















グラシアンside

目の前に佇む大男。その男の雰囲気から察するに、こいつはここで待ち構えていたのだろうとすぐに理解できた。

「待っていたぞ、グラシアン」
「やっぱり俺か」

大方予想はついていたが、こいつの待ち人は俺だったらしい。そうなるとこいつの正体はーーー

『それではルールに則り、これよりグラシアン選手vsグレイティス選手のバトルを開始します!!』

色々と考えたいこと、整理したいことはあるがその時間を与えてはもらえない。でも、それでいいかもしれない。その方がもしかしたら平常心で挑めるかもしれないのだから。

『それではこれより30秒間のバトルタイム!!スタートです!!』

有無を言わせることもせずに開始されるバトル。しかしその時間は短い。この時間で決着がつくことは早々ないはず。そう思っていた俺の心を見透かしていたのか、目の前の男は目にも止まらぬ速さで接近すると鍛え抜かれたその腕を振り抜いてくる。

「ぐっ!!」

その拳の重さ、速さ、全てが今まで戦ってきたどの敵よりも上だった。その鉛のような拳を受けた俺は思わず倒れそうになったが、それを懸命に堪える。

「幻竜の・・・」

倒れてしまえばそのまま相手は次の一撃を放ってくることは目に見えている。案の定男はすでに反対の拳をかざしており、こちらが危機的状況だったことを理解するのは容易かった。

「咆哮!!」

しかし、向かってきている相手ならば対処法は容易い。広範囲魔法のブレスならばただでさえも狭いこの部屋では逃げることなどできるはずがない。そう思っていた。だが・・・

「!!」

相手の取った行動は俺の予想の斜め上を行っていた。

「がっ!!」


















シリルside

グラシアンさんが放ったブレス。それは間違いなくグレイティスさんを飲み込んだはずだった。しかし、彼は回避行動も防御姿勢も取ることなくそれを喰らうと、怯む素振りもみせずにバランスが崩れて倒れそうになっていた彼の顔面へと拳を突き刺し、地面へと叩き付ける。

「なっ・・・」
「強いですよ!!あの人!!」

自らもダメージを受けているはずなのにそれを感じさせないほどの力で一撃を与えた男性に言葉を失うカナさんと目を見開くジュビアさん。彼女たちの言う通りグレイティスさんの力は強い。ただ・・・

「あの感じ・・・どこかで・・・」

どこか見覚えのある動きに思考してしまう。その間にもグレイティスさんの猛攻は留まることを知らず、グラシアンさんは劣勢に追い込まれていた。

















第三者side

次々に与えられるダメージ。グラシアンはそれを何とか回避しようとするが、目の前の男はそれを上回る速度で攻撃をしてくるため、対処がままならない。

「お前・・・やっぱり・・・」

その際グラシアンは目の前の敵の正体に気が付いた。だが、それがわかったところで何も意味がなさないこともすぐに気が付いた。

(この状況を打破しない限り意味がない。あれ(・・)をやるべきか?)

自身の有している奥の手を使うか考えていたグラシアンだったが、このバトルのルールを思い出しそれを出すことはしなかった。

(残り時間はおよそ10秒ほど。それでこいつを仕留めきれるとは思えない。それだとただ情報を周りに見せるだけでメリットがない。ここはやり過ごすことを考えよう)

恐らく勝敗的にも逆転は難しいと判断したグラシアンは一度攻撃を受け流しいずれ回ってくるであろう自身のターンでゴールまで辿り着ければと考え、相手の攻撃を受け止めようとした。

「ぬるい」

しかしそれをこの男は許すことはなかった。

「!!」

見事に敵の拳を捕まえたと思ったその時、グレイティスはそんなことに構うこともなく拳を打ち出す。それは防御に徹したはずのグラシアンの顔面へと突き刺さり、意識が途絶えかけているのが誰の目からも明らかだった。

「やはり温い。貴様らを捨てれたのは結果的には良かったのかもしれないな」

まだ終了のアナウンスはなっていない。しかし、グレイティスは床に倒れているグラシアンに興味がなくなったのか、背を向けてその言葉だけを言い残した。

「やっぱり・・・あんただったのか・・・」

そんな中かろうじて出てきた言葉はそれだった。しかしその声は観客たちには聞こえていない。そして背を向けている男もそれに聞く耳を持っているのかわからない。

「マスター・・・」

そう言って意識を失うグラシアン。後に残された大男は彼を横目で見ると、脳内に響いてくるマトー君の声へと耳を傾けながら扉へと手をかける。

「お前たちのマスターはスティングだろ。腑抜けどもが」

そう捨て台詞を残しその男は次の部屋へと歩を進めた。









 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
二日目の競技パートであとやりたいのは一個だけなので次で終わるかな?
バトルパートの一試合目がやりたいからとりあえず頑張りたいですo(`^´*) 
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