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元ヤン店員

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第二章

「あのファッションもね」
「元ヤンの」
「普段着もそうですけれど」
「派手なジーンズとかミニスカで」
「メイクもそうですが」
「只のそれで」
 ファッションに過ぎないでというのだ。
「高校時代からアルバイトもね」
「してたんですね」
「そうだったんですね」
「道理で仕事出来る筈です」
「何かと」
「うん、高校時代ずっと他のお店で働いていて」
 そしてというのだ。
「喧嘩とか万引きとか」
「悪いことしてないですか」
「真面目に働いていたんですね」
「高校時代から」
「そして卒業して」
 高校をというのだ。
「大学に通いながら」
「ここで、ですね」
「アルバイトしてるんですね」
「そうなんですね」
「テニスもしながらね」
 趣味のそれもというのだ。
「そうした娘だよ」
「あのファッションは何でですか?」
 女子高生のスタッフが訪ねて来た。
「ヤンキーの」
「あれだね」
「はい、どうしてですか?」
「ただのファッションらしいよ」
「そうですか」
「この前聞いたらああしたファッションが好きで」
 個人的にというのだ。
「やってるだけだよ」
「そうですか」
「本当に外見だけなんですね」
「そうした娘なんですね」
「元ヤンでも素行に問題がないなら」
 それでもというのだ。
「いいね」
「はい、言われてみますと」
「実際あの娘素行普通ですし」
「喋り方もそうですし」
「それならいいね、じゃあ一緒に働いていこう」
 藤田は皆に皆に言った、そうしてだった。
 優子それに他の店員達と一緒に仲良く働いていった、優子は仕事がない時は客として友人達と共に来たが。
 その友人達もヤンキーと言われるファッションだった、しかし。
「マナー普通です」
「むしろいい方です」
「馬鹿騒ぎも暴れたりもなくて」
「言葉遣いも丁寧です」
「そうだね、やっぱりファッションだけだね」
 藤田は優子の友人達の話を店員達から聞いて頷いた。
「お友達もそうならね」
「問題なしですね」
「それも全く」
「そうだね、ただ彼女のご両親がこの前うちに来たけれど」
 ここで優子は苦笑いで言った。
「お好み焼き屋さんで礼儀正しいけれどお二人共元暴走族で」
「ああ、それでですね」
「そのファッションがですね」
「秋山さんにいったんですね」
「そうみたいだね、ただお二人も真面目だから」 
 ファッションはどうでもというのだ。
「そちらもね」
「遺伝したんですね」
「それでああした娘なんですね」
「そうだよ」
 笑顔で言う藤田だった、そのうえで店に来た優子も見たが。
「今から入りますね」
「うん、宜しくね」
 真面目に仕事に入った彼女に笑顔で応えられた、その仕事ぶりには不安なぞそれこそ一抹もなかった。


元ヤン店員   完


                  2023・8・19 
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