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私の 辛かった気持ちもわかってよー

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12-2

 次の週の月曜日、部員が全員揃って、顔合わせをしていた。3年が6人、2年が5人、そして新入生が16人なのだ。全員で27人。行長監督に言わすと、こんなに大勢になったのは初めてということだった。やっぱり、理事長と校長が部室の増設を進めてくれて良かったと。

 練習が始まって、行長監督は新入の初めてテニスをやるという10人にラケットの振り方なんかを教えていて、コーチは中学からやっていたという6人を指導していた。私達、3年と2年生は隣のコートで練習していたのだけど、新入の6人の中でも多々良サナサは抜きん出て動きが良いのだ。それに、リターンのボールも速くて威力があるのだ。今のところは正確性に欠けるのだけど。

 その夜、お父さんが私と桔梗を呼んで

「だし汁とみそ汁の店 出すことにした。烏丸から三条通を少し入ったところで、空き店舗があったんでな カウンター6席なんだけど」

「えぇー えー いつからぁー? なんでぇー」

「だって ウチ等 まだ 学生やんかー 誰がやるん?」「メニュー 決めたん?」と、やつぎばやにお父さんに聞いていた。

「まぁ 聞け! それまで、定食屋をやっていて、設備もそのままなんで、投資も安くすむんだ それと、静香 手伝ってくれているの知っているだろう? 卒業したのだけど・・そのまま まだ 手伝いに来てくれているんだ」

「だよねー ウチも なんでかなーって思ってた 就職してないの? だからー まさか お父さん?」

「あぁー ・・・ 静香にって 思っている 5月にはと」

「そんなぁー ウチ等 どうなるん? ウチ等にやらせてくれるんちゃうん?」

「いゃ そのー まだ 卒業まで・・・ それに、大学にも行くかもしれないだろう? こういうのは 早くやらないと 同じような店が出来て来るかもしれんし」

「だからってー ウチ等がやりたいっていう 話やんかぁー」

「まぁ まぁ そーなんだよ だからー お前達にも 商品決めとか 店の改装なんかも 意見を出してもらってー それと 上手くいくかどうかわからんから 最初は静香にやらせてみてー」

「なんで 静香さんなんよー ウチ 高校辞めてもええから お店やる!」と、桔梗が無茶なことを言い出した。

「それは 許さん 高校ぐらいは 卒業しなさい 山葵もだ 子供達にスポーツを指導する夢があるだろう?」

「お父さん まさかとは思うけど・・ 静香さんと なんかあるの? 愛人とかで、お店持たすとか」私は、自分でもバカなこと言っていると思ったけど

「ばっ バカなー そんなわけないじゃぁ無いか なんちゅうこと 言うんじゃ お母さんの前で・・」

「だって 急に 静香さんってー 変!」桔梗も「うん うん」と、うなずいていた。

「じつは・・ 静香は・・ いや 健也は、昔、初恋の女に振られたとかで、それ以来、女には興味が無いということなんだが・・ そろそろ 自分の店も持ちたいだろうな・・ ワシも考えてやらんといかん」

「お父さん なんの話してるのぉー? なんで 静香さんに・・って」

「だから そのー なんだー 静香が卒業式を終えて、健也のとこに押しかけたというかー 健也も押し切られてー 悪い娘じゃぁないからな ふたりは 一緒になる だろう ゴホッ うん つまり 一緒に住んでいる いや 静香の親御さんに反対されて そりゃー そうだろう 親としては、けじめをちゃんとしてないとなー 今は 実家に戻ってるんだけどー いや そのー 絶対反対って訳でも無いんだけど・・だけど、相手が客商売ってのもなぁーって 不安だろー? 父親は公務員で、静香もゆくゆくは・・公務員の人とって思っていたみたいでなー だけど、卒業して就職もしないで、案じているようだった。 でも ワシも二人の仲は知らなかったんじゃー 最初は、どうしたら良いんだろうかと・・」

「お父さん 落ち着いて ゆっくり 話して ほんと 不器用なんだからー 結局 静香さんと健也さんは将来を約束したってことね? もぉうー 健也さん ウチってものがありながらー」

「おい! そんな話こそ 聞いて無いぞー 健也は 山葵のことは 妹みたいに・・ もしかして・・・それこそ なんかあったのか?」

「うふっ そうよ ウチもお兄ちゃんみたいに・・ ちょっと お父さんをからかっただけ! なんも 無いよ! それで その後は? なんで、静香さんは 新しいお店に?」

「まぁ そんな仲のふたりを、一緒に働かすわけにいかないじゃぁないか それに 駆け落ちみたいなもん 見過ごすわけにいかないだろう? だから、ワシは向こうの親御さんに 静香さんは、大学を出て起業するんです だから、ワシ等も後押しするし、成功したら、二人の仲を認めてくださいと、お母さんと一緒に頭を下げに行ったんじゃ だから、今度の店をしばらくやって、成功すれば、健也と所帯を持って、新しい店も構えれればなと思っちょる それで、静香には実家に戻れと言ったんじゃ」

「ふぅーん 何となく わかった でも 健也さんも情けないね そんな 押し切られただけで・・ 静香さんも、そんな思い切ったことするなんて・・・そんな人に見えなかった わかんないね 男と女って」

「なに 一丁前みたいなこと言ってんだ 人を好きになるって そんなもんだ 周りも見えなくて 一直線だよ でも それでも、うまく行くんだよ それが、結ばれた糸だ」

「わぁー 古臭いの! それで、ウチのお店のほうは? 静香さん 居なくなったら、困るんじゃぁない?」

「しばらくは、お母さんに 又 頑張ってもらうけど 今 八百政の娘さんが 夜は来出した 今年、短大に入ったと言うことだ バイトでな」

「ふーん タイミングが良すぎるねー お父さん ずーぅっと そんなこと考えてたんだぁー」

「そんなわけない! たまたま じゃ」

 私は、ちょっと健也さんのことは引っかかったけど、まぁ 私の勝手だっただけと・・ 一応、静香さんのことは、そんなに健也さんのことを好いていてくれるのならと納得していた。私からしても、上品で素敵な人だし。やっぱり、去年の暮れの二人の雰囲気 聞こえた3日の日 という その日 二人は 愛を確かめあっていたのだろうかと、余計な思いを巡らせていたのだ。 
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