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私の 辛かった気持ちもわかってよー

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第11章
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 新年は、4人揃って、朝のお祝いの後、商売繁盛の神様にお詣りにいくことになっていた。揃って行くのは3年振りなのだ。お父さんとお母さんは着物姿で、私はブラウンの台形スカートで桔梗はクリーム色のボックスプリーツで、だけど、ほぼお揃いのダッフルコートだった。

 お詣りを終えて、近くのティーラウンヂに、チョコケーキが有名なお店で、私も桔梗も食べたいと言ったのだ。

「山葵は今年 あと1年だな 進学は考えているのか?」

「ええ 漠然とですけど 今のまま進んで、子供達にスポーツを教えることを学んでいきたい」

「そうか テニスも続けるのか」

「うん 大学のクラブは弱いから 別のクラブチームに入るつもりです」

「うむー それもよかろう」

「あのー お父さん 聞いて良い?」

「うっ なんだー 言ってみなさい」

「健也さんのこと いつまでもウチに居てくれるのかしら?」

「あぁ そのことか 健也とは 真面な話したことは無い! ただ、ワシはあんなちっぽけな店 あいつが継いでくれるんだったら、それでも良いし 独立してと思うんだったら、援助はするつもりだ」

「健也さん それでいいと思うけど もし、健也さんが出ていったらお店どうすんのよー」

「その時は まぁ 細々と出来るとこまでやるさー 別に お客様にうまいって言ってもらえて、家族が普通に喰っていければ、それで良い お前達も贅沢したかったら、自分で金持ちを見つけるんだなぁー」

 私は、この人は不器用だから、お店を大きくするなんてことは考えなくてもいいんだけれど、もっと、なんか夢みたいなものないんかなーって、少し、不満だったのだ。本当は、せっかく家族が揃っているのに、もっと、話すことがあるだろうと思っていて、家に帰ってからお父さんは飲み始めようとしていたが、桔梗もリビングに呼んで

「お父さん ウチ等をお金持ちのところに追い出そうとせんとさー せっかく可愛い娘がふたり居るのに、もっとお店のこと考えようよー ウチ等もお手伝いさせてもらうからサー なぁ 桔梗?」

「えっ えぇ まぁー」と、桔梗は突然のことで戸惑っていたが

「ウチは場合によっては 大学に行かんでもええって思ってるの」と、私の言葉に釣られたのか

「ウチも・・・ あんまり勉強もできひんし 大学まで・・行かんでも・・」と、

「まぁ そー言ってもらえるのも嬉しいがなー 嫁に行かんのもなぁー」

「お父さん ウチ等 まだ 二十歳にもなってないんやでー 今から、そんな心配せんとってーな」

「そりゃーそーだ じゃぁ 美人姉妹が作る京和食の店ってのは どうだ?」

「お父さん もう 酔っぱらってる? なんか 言い方がやーらしい!」

「そうだよー だからー スイーツのお店とかー」と、桔梗もようやく乗ってきたが

「うーん それも 良いけど 競争相手多すぎて 新しいお店って 難しいよ 普通に 気楽に入れるご飯屋さんとか・・」

 そんなことで、いろいろと勝手なことを言い出して盛り上がっていった。夕方になって、お父さんが、小腹がすいてきたから、軽く食べれるものをと言ってきたので、私とお母さんが台所に立って・・・俵型のおにぎりを、筋子を軽く炙ったもの、鮭の焼いたもの、きゅうりの薄切りを塩もみしておぼろ昆布で包んだもの、そして、私は里芋のお味噌汁を作って用意したのだ。すると、食べていたお父さんが急に真面目顔で

「なぁ 山葵 だし汁とかみそ汁を売りにして、小さなおにぎりをつけるってのはどうだろう? 立ち食いのカウンターだけでもいいじゃぁなか どうだろう ちょっと 小腹を満たす まぁ テーブルがあっても喫茶店代わりにひと休みも出来るカナ」

「うん ソレッ! あんまり そーいうお店無いものね 美味しいもの作れる自信もあるしー それに、投資もそんなにかかんないかもネ」

「ウン 良い いぃー 今は、学生でも そーいうの 求めてるカモ ハンバーガーとか飽きが来てるのよ」と、桔梗も賛成してきた。

 その後は、話はどんどん進んだのだけど、肝心の 誰が、どこでとか何時からとかの話にはならなかったのだ。

 
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