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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第37話 救出 後編

「劉ヨウだと。まずいぞ。大守様からは臧戒を連行途中で抵抗したことにして殺せと仰せつかっておったのだぞ。このままでは我らの破滅だ・・・・・・。奴の父親は隣の郡の大守だったはず。お前ら今直ぐ臧戒を殺せ!臧戒さえ殺せば後はどうとでもなる。ええぇい!何をしておる。さっさと臧戒を殺してしまわぬか!」

隊長は冷静さを失い周囲の部下達に怒り狂いながら罵声を浴びせていた。

「させるか!」

私はこちらに気付いていない隊長に背中越しに心の臓目掛けて切り掛かった。

「ギィアアアアアーーーーーー!お、おのれ・・・。貴様・・・ただでは置かさ・・・・・・!」

隊長は目を血走らせて私を恨みがしい目を一瞬向けたが血を吐いて力無く前のめりに倒れ馬から落ちた。

「貴様らの隊長は死んだぞーーーーーー!」

私は大声で隊長を討ち取ったことを高らかに宣言した。

劉ヨウ様のお陰で只でさえ動揺していた兵士達は隊長の死を知って恐慌状態になり逃げ出していった。

「父上!」

私は檻車に向かって逃げ出す兵士の間をくぐり抜けて駆け出した。

檻車のある場所につくと4人の女が父上を助け出していた。

「父上!大丈夫ですか?」

私は彼女達のことより、父上の無事を確認することが先決だと思い父上に駆け寄った。

「馬鹿者!何という愚かな事をするだ」

父上は凄い剣幕で私の頬を叩いた。

私は突然、父上に叩かれたことに困惑した。

「仮にもあやつは大守の部下だ。何と言う軽はずみな事をするのだ!」

「父上を見捨てることなどできません!悪いのは奴らではありませんか!」

「あなたはあの方の娘ですの?」

金色のクルクルした髪型をした女が私に声を掛けてきた。

「随分と派手に暴れましたわね・・・・・・。お義父様と叔父様には迷惑を掛ける事になりますわ」

彼女は嘆息しながら愚痴を言った。

何なのこの女。

「全くだな・・・。もっと速やかに撤退するつもりだったんだが・・・・・・」

男の声が聞こえる方向を見ると劉ヨウ様がこちらに近づいて来られた。

「過ぎたことをとやかく言っても仕方ない。麗羽、それにみんな。この場所から直ぐに立つぞ。私達は急いで青洲に入るぞ。君たちは徐州を通って、エン州の山陽郡に向かうんだ。私の父上にこれを渡しなさい。必ず力に成ってくれる。これは路銀の足しにしれくれ」

劉ヨウ様はそう言うと父上に竹簡と布袋をお渡しになられた。

私は状況が掴めなかったので、劉ヨウ様に質問することにした。

「話しの内容が分らぬのですが教えて下さいませんか?」

「君達が逃げる手助けをすると言っているんだ。ここでのんびりしている暇はない。このことは直ぐに大守の耳に入るはずだ。その前に、私達と君達はこの郡を出る必要がある」

「劉ヨウ様。これは受け取れません。命を助けて下さっただけで十分でございます。これ以上、劉ヨウ様にご迷惑をお掛けする訳にはまいりません」

父上は劉ヨウ様に竹簡と布袋を返そうとした。

「父上。助けて下さると言っているのに何を躊躇なさるのですか?大守に捕まってやる道理などありません。裁かれるべきは大守です」

私は声高に父上に言った。

「娘さんの言う通りだ。君達は無事に泰山を出て、あなたがやろうとした事をやり遂げて欲しい。だから、これは遠慮せずに受け取って欲しい」

劉ヨウ様は真剣な表情で私と父上に言った。

「見ず知らずの私達にどうしてそこまでして下されるのですか?」

父上は劉ヨウ様に対し疑問に思ったことを聞いた。

「君達親子を助けたのは私の我が侭だ。君達を見捨てて後悔するくらいなら、先の苦労を被ろうと行動した方がましだと思った。お陰で私は今回、沢山の人間に迷惑を掛けることになった。だから受けて貰えないか?君達もこのまま大守に殺され、命の恩人の私達が窮地に立つのは望まないだろ」

劉ヨウ様は苦笑いをしながら言った。

父上は劉ヨウ様の話を黙って聞いていた。

四角四面が取り柄の父上も劉ヨウ様の言葉には折れるしかなさそうだ。

意地を張って義侠の行動をした恩人を窮地に追いやるなど父上には無理だと思う。

「劉ヨウ様。私は臧戒と申します。私は大守の不正を糾弾しようとしました。結果はこの有様ですが・・・・・・。劉ヨウ様のご厚情を有り難く受けさていただきます。あなた様の為にも私は必ずや大守を糾弾してみせます。このご恩は娘共々終生忘れはいたしませぬ」

父上は涙を流し謝意を示し頭を深く下げた。

「・・・そんなに気にしなくても良い。私がやりたくてやったことだ」

劉ヨウ様は父上の名前を聞いて一瞬驚いた顔をしていた。

どうしたのだろ。

「榮奈!何をしている。お前もお礼を申し上げないか!」

父上が私の方を見やって怒り出した。

「父上。そんなに怒鳴られなくても聞こえています」

父上に剣呑な態度で言った。

劉ヨウ様に向き直ると背筋を伸ばし拱手した。

「劉ヨウ様。ありがとうございます。ご恩は一生忘れません。無事逃げ仰せることが叶えば、私を家臣にしてください」

劉ヨウ様に感謝の礼と共に仕官を願いでた。

厚かましいと願いと考えたが、この機会を逃してら劉ヨウ様に仕官する機会などないと思った。

目の前の人物はエン州で知らぬ者等いない義侠の人だ。

私達の為に身の危険も顧みず助けてくださった人だ。

これ以上の主人は居ない。

「何を言っておる!劉ヨウ様。申し訳ございません。」

父上は私が劉ヨウ様に仕官を申し出たことに怒った。

いきなりだし非常識な行動だと思う。

「臧戒殿構わない。仕官の話し受けよう。君の名を教えてくれないか?」

私が無理かと劉ヨウ様を仰ぎ見ると劉ヨウ様は仕官を認めてくださった。

「ありがとうございます!私は名前を臧覇。字を宣高。真名を榮奈と申します」

「私の名前は劉ヨウ。字は正礼。真名は正宗だ。お互い無事逃げ仰せ、再開した暁には私の家臣になってくれ」

「はい!」

私は元気良く応えた。

後日談だが劉ヨウ様のお陰で食客達の半数が生き残ることができた。

劉ヨウ様は死んだ食客達を弔って下さると、食客達も家臣に取り立てる仰って下さった。

食客達は仲間が死んだことを悲しみながらも劉ヨウ様の家臣になることを心から喜んでいた。
 
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