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仮面ライダーカブト 明日のその先へ

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第四十章

「終わったか」
「ワームとの戦いは。これで終わりなのか」
「そうだ」
 ひよりに対して告げる。
「ひより、これで御前は人間として生きられる」
「人間として。僕が」
「そうだ。さあ帰ろう」
 ひよりに顔を向けて言う。
「人間の中にな」
「けれどこれからも戦いは永遠に続くんだよな」
 ひよりはその天道に顔を向けて問うた。
「人間とあのスサノオっていうのと」
「そうだ、これからもな」
 それは天道が最もよくわかっている。わかっているからこそ頷くのだった。
「あの首領が倒れるまでな。永遠に」
「そうか。長いな」
 ひよりはそれを聞いてあらためて言う。
「これからも。ずっとか」
「それが人間の、仮面ライダーの宿命だ」
 天道は達観したように告げる。
「だから俺は戦う。御前も世界も守って」
「済まない」 
 そのことにあらためて謝る。
「僕の為に」
「御前が謝ることじゃない。俺が自分で決めたことだ」
 しかし天道はその謝罪をよしとした。彼はそれ以上のものを見ていたのだ。
「御前を護り、世界を護るとな。この名に誓って」
「名前か」
「そうだ」
 ひよりのその言葉に頷く。
「天の道を行き総てを司る者としてな」
「それが御前の決めたことか」
「御前は御前の決めた道を歩め」
 こうも言う。
「いいな、それで」
「わかった。では僕は僕の道を行く」
 ひよりも天道の言葉に頷いた。そして今あらためて決意したのであった。
「御前と共に」
「わかった」
 天道はひよりのその言葉に応えた。そうしてハイパークロックアップで地上に戻る。ワーム、ネイティブとの果てしない戦いはこれで一旦は終わったのであった。
 
 戦いが終わりサルでライダー達は別れた。ゼクトのライダー達がまず別れの言葉を告げる。
「それじゃあな」
 剣崎がにこやかな顔で天道達に言う。
「今度の戦いはかなり激しかったけれどな。何とかなったな」
「それは当然だ」
 天道はそう剣崎に返す。自信に満ちた顔であった。
「俺がいたからだ。勝つのは当然だった」
「そうか。じゃあこれからもそうだな」
 にこりと笑って天道に告げる。
「あんたがいる限りな。どんな敵が来てもか」
「しかし御前達もそれは同じだ」
 天道は今度は剣崎達に告げた。
「御前達もいなければこの戦いには勝てなかった」
「そうか」
「そうだ。ではまたな」
「ああ、またな」
 剣崎はそのままバイクに乗り天道達と別れた。橘達他のライダーや栞、虎太郎達もこの場での別れを告げ去って行く。彼等はボードに戻って行った。次の戦いの為に。
 それは他のライダー達も同じだった。矢車と影山もまた別れる。
「御前達はこれからどうするんだ?」
「光を完全に俺達のものにする」
 矢車はそう天道に告げた。
「相棒と一緒にな」
「探偵事務所を開くことにした、兄貴と一緒にな」
 影山も言ってきた。
「そこで白夜の光を完全に俺達のものに」
「二人だけの光にする。そういうことだ」
「そうか。それではな」
「ああ」
「またな、天道」
 矢車と影山が別れた。こうして二人はその手で掴んだ二人だけの白夜の光を完全に自分のものにするべく新たな道を歩みはじめたのであった。
 次に別れたのは風間だった。彼は言う。
「俺はまた気ままにやらせてもらう」
「その腕でか」
「そうだな、ゴンも一緒だしな」
 最早離れられないパートナーのことを口に出す。
「また戦いがあったらやって来る。その時までは」
「お別れだな」
「そういうことだ。それじゃあな」
 胸のペンダントを輝かせながらその場を後にする。彼は風と共に去る。そうしてまた風と共に現われるのだった。
 神代は爺やに声をかけられた。
「坊ちゃま、そろそろ」
「うん、爺や」
「今度は御前か」
「ミサキーヌも一緒だ」
 天道に告げる。
「俺は一人じゃない。爺やもミサキーヌもいる」
「二人と共に何を目指すのだ?」
「ディスカビル家の復興、そしてスサノオとの戦いを終わらせること」
 毅然として天道に答える。
「その二つだ。全てにおいて頂点を極める男としてな」
「そうか、ではそのまま進め」
 天道が今の彼に贈る言葉はそれであった。それで充分であった。
「御前の道をな」
「また会おう。共に戦う友人として」
「ああ」
 神代は爺やと共に岬の下へ帰っていく。次に別れたのは田所達であった。
「俺達はゼクト本部へ戻る」
「また何かあったら連絡をする」
「次の敵との戦いの時にはか」
「そうだ」
 田所が天道に答える。
「何かあったら呼んでくれ、力になる」
「わかった。それではな」
「天道総司だったな」
 大和が彼に声をかけてきた。
「噂以上だった。見事だった」
「そうだな。その力また期待させてもらう」
 織田も言う。
「戦友として」
「戦友か」
 悪い気はしなかった。不思議と馴染む言葉であった。
「それでいいか」
「そうだな」
 黒崎の言葉にも微笑みで頷く。
「それでいい」
「そうか。ではまたな」
「何かあったら連絡してくれ」
 また黒崎に返す。
「いいな」
「わかった。それではまた会おう」
 田所の別れの言葉と共にゼクトのライダー達も去る。加賀美もまた。
「交番に戻るのか」
「落ち着く場所なんだよ」
 屈託のない笑みを浮かべて天道に言う。
「今の俺にはな」
「自分の居場所だからか」
「そうさ、居場所を見つけたんだ」
 にこりと笑ってそう述べる。
「俺もやっとな。悪いか?それで」
「いや」
 その問いには首を横に振る。
「いいことだ。人間は誰しも居場所が必要だ」
「ライダーであってもな」
「当然だ。仮面ライダーは人間そのものだ」
 天道はそう述べる。
「居場所があって当然だ」
「そうか、そうだよな」
 その言葉に頷く。加賀美にとっても天道にとってもその居場所が必要なのは言うまでもないことなのだ。加賀美もそれをようやく胸の中でわかってきたのだ。
「何か今気付いたな」
「気付くのは何時でもいい」
 天道はまた加賀美に告げる。
「気付かないことこそが問題だからな」
「そうだよな。じゃあ俺も今はそこにいるからな」
「そうか、美味いものが食いたくなったらサルに来い」
「御前はサルに入るのか」
「そうだ」
 微笑んでその言葉に頷く。
「ひよりの側にいつもいてやる。そう決めたからな」
「そうか。じゃあまた来るな」
「何時でも来い。御前の舌を唸らせてやる」
 加賀美も別れた。最後に残ったのは天道とひよりだけになった。
「御前はサルに入るのか」
「それでいいな」
「嫌だと言っても来るんだろう?」
 表情を変えずに天道の方を見上げて問う。
「今まで通り」
「そうだな。それが俺なのだからな」
「じゃあ師匠」
 そこに麗華が来た。樹花も一緒である。
「また四人で仲良くやりましょう」
「お兄ちゃん、またね」
「そうだな。その前に一つやることがある」
「それは何だ?」
 ひよりがそれに問う。
「これだ」
「それか」
 取り出したのはハイパークロックアップだった。左手に持ってそれを掲げる。
 するとハイパークロックアップは一瞬のうちに消えてしまった。まるで煙のようにだ。
「消えたか」
「過去の俺に送った」
 天道は言う。
「あの時の俺にな」
「戻っては来ないのか?もう御前の手には」
「いや、戻って来る」
 天道は自信に満ちた声でひよりに答える。
「次の戦いまでにはな」
「そうか、次の戦いまでにはか」
「イマジン」
 天道は言った。
「時間を行き来する者達が今度の相手になる。奴等との戦いにはハイパークロックアップが必要だ。無論他の敵もまだ出て来るだろう」
「ワームもか」
「他にもいる。俺達の戦いは続く」
「何時終わるかはわからないんだな」
「人の歩みが続く限りだ」
 天道は言う。
「それは永遠にな」
「それでいいんだな。御前はその時を永遠に戦って」
「俺がこの世に生まれ、仮面ライダーとなった理由はそれだ」
 天を見上げてひよりに告げる。
「太陽は。永遠に人と共にあるのだからな」
 その太陽の化身となって次の戦いに赴こうとする。彼は果てしない戦いの中で無限の輝きをもたらそうとしていた。仮面ライダーとして。


仮面ライダーカブト   明日のその先へ


                          2007・4・15
 
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