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娘達からも忘れられ

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第二章

「もうね」
「そのうちか」
「見向きもしなくなって」
 そうなってというのだ。
「それでよ」
「何もなしか」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「そうなったのよ」
「そうなんだな」
「それで親戚でもね」
「もうか」
「あそこに行かないし」
「忘れられるんだな」
「あの人達があの場所に住んでいたことは知っていても」
 それでもというのだ。
「もう皆行かないしそのうちね」
「忘れられるか」
「そうなるわ」
 こう息子に話した。
「あの人達はね」
「何かな」
 ここまで聞いてだ、洋介は言った。
「寂しいな」
「そうよね」
「ああ」
 洋介は母にどうにもという表情と声で答えた。
「それってな」
「そうね、それであの人も娘さん達もね」
「あの娘達もか」
「大人になったら血のつながった両親のことはお話するそうだけれど」
「今のお父さんとお母さんがか」
「そうしてもね」
「それだけか」
 母の話を聞いて言った。
「ただ」
「そうよ、本当にね」
「それだけなんだな」
「ほぼ記憶がないから」
 二人の娘達はまだ赤ん坊と言っていい、そんな年齢である。
「だからね」
「それでか」
「聞いてそれで終わりよ」
「自分の娘さん達からもそうか」
「それでふわりからもね」
「忘れられるか」
「ふわりを捨てたのよ」
 母は息子に強い批判を込めて言った。
「そうしたからね」
「忘れられるか」
「そうなってもね」
 そうであってもというのだ。
「おかしくないわよ」
「そうなんだな」
「ええ、むしろね」
 息子にさらに言った。
「ふわりが忘れる様な」
「そうした風にか」
「私達はしないとね」
「いけないか」
「そうよ」
 こう言うのだった。 
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