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仮面ライダーカブト 明日のその先へ

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第二十章

「違うか」
「確かにね」
 影は笑ってきた。それを否定しなかったのである。
「もう僕には戦う理由がない。このダークカブトゼクターもね」
「そうだな。御前はあの時戦いを捨てた」
 根岸と共に炎の中に消えた時にだ。彼は戦いを捨て世界への憎悪も捨てたのだ。そうした意味で彼はもう闇の世界にはいなかったのだ。一人の人間になっていたのだ。
「だからこそダークカブトゼクターも」
「受け取るといいよ」
 ゼクターを一旦離してきた。
「君のものにね。するといいさ」
 ダークゼクターは一旦空を舞った。天道はそれを前にかざした左手で受け取った。
「今確かに受けた」
「うん。これで僕の役目は終わったね」
 影はにこりと笑って天道に言った。
「それじゃあ」
「待て」
 だが天道は立ち去ろうとする彼を呼び止めた。
「何かな」
「これからどうするつもりだ」
 彼はそうもう一人の自分に問うた。
「人間として生きるのだな」
「僕は人間さ」
 影は答えた。
「人間が人間の中に生きるのは当然だろう?君が僕に教えてくれたことじゃないか」
「その通りだ」
 天道もそれに頷く。
「では生きるんだ。人間としてな」
「そうだね。サッカーでもやろうかな」
「サッカーか」
「僕は君の能力を受け継いでいる。日下部という時だけれどね」
「そうだ。そうした意味で御前もまた天才だ」
 天道は自分自身に対して述べる。唯我独尊の彼に相応しい調子で。
「自分で道を切り開ける。安心しろ」
「自分でだね」
「そうだ。だから」
「わかったよ。これからは自分でね」
 影は言う。
「天の道は自分自身で歩いていく」
 天道は天を指差した。
「御前もまた同じだ。だからこそ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。じゃあね」
「また会おう」
 天道は言葉を告げた。
「縁があればな」
「そうだね。じゃあまたね」
 二人は別れた。天道も踵を返して元の道を帰る。影は今ようやく人になることができた。その足で歩きはじめる。道が今はじまったのであった。

 矢車と影山もまた二人道を歩いていた。かつて二人がよく歩いた道である。
「兄貴」
「どうした、相棒」
 矢車は影山の言葉に顔を向けてきた。
「俺さ、ネイティブじゃなくなったみたいな」
「ほう」
 矢車はその言葉に顔を向けてきた。
「それはどういうことだ?」
「変身しないんだ。念じてね」
 彼は言う。
「どうしてかわからないけれどな」
「あれは根岸という男の仕業だったらしい」
 矢車はそう彼に教えた。
「あの女が教えてくれた」
「あの女ってスマートレディが」
「そうだ。あの女が俺に教えてくれた」
 また語る。歩きながら。空は白く曇っているが二人の顔は曇ってはいなかった。
「相棒、御前は生き返った」
「うん」
「その時人間の姿に戻った。そういうことだ」
「そうだったのか」
「しかしだ」
 矢車はさらに影山に言う。彼は腕を組んでいて前を見ている。影山は少しうつむいていた。
 
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