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仮面ライダーカブト 明日のその先へ

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第六章

「あのお姉さんがかなり気になって」
「そうか」
 橘はその話をまずは無表情で聞いていた。
「それで最近よくあそこで」
「脈はないぞ」
 橘は剣崎にそう告げた。弱い照明で照らされた白い廊下を二人並んで歩きながら述べた。
「あの人は御前を見てはいないな」
「ってわかるんですか」
「誰が見てもわかる」
 橘の言葉は容赦がない。
「始や睦月も同じことを言う筈だ」
「同じってそんな」
「まあ恋愛をするのは悪くはない」
 それは認める。
「しかしあの人は脈がない。それはわかっておけ」
「はあ。何か腑に落ちませんが」
 剣崎のその心境は変わらない。だが橘はそれに構わず先に進む。剣崎も彼に並んで先に進む。そうしてエレベーターをあがってから上にあがる。エレベーターを出てやって来たのは高層ビルのかなり上の方であった。
 そこを進み事務所に入る。するとそこに烏丸がいた。
「お早う」
「お早うございます」
 二人はまず彼に挨拶をする。
「うん」
 烏丸は二人の姿を認めて席を立った。
「はい」
 二人はまた言葉を返す。それから事務所の中を見回した。
「三人はまだですか」
「ああ、実は朝から仕事に行ってもらった」
「仕事に?」
 橘は烏丸のその言葉を聞いて声をあげた。
「ワームの残党ですか」
「いや、違う」 
 だが烏丸はそれを否定した。首を横に振ってそれを否定したのだ。
「簡単に言うと偵察だ」
「偵察って」
 今度は剣崎が烏丸の言葉を聞いて声をあげた。
「やっぱり同じじゃないんですか?ワームの残党がいて」
「残党か」
 急に烏丸の顔色が変わった。
「そんな生易しいものだったらいいがな」
「生易しいって」
「ワームもネイティブももう」
 剣崎も橘も烏丸の言葉の意味がわからなかった。彼等にとってワームもネイティブの急進派も滅んだ存在だ。少なくとも今まではそう思っていた。
「もう一つ言おうか。彼等に言ってもらった先だが」
「はい」
「渋谷だ」
 こう告げてきた。
「渋谷に行ってもらった」
「渋谷ってあそこは」
 また剣崎は声をあげた。今度は驚きを含んでいた。
「そうだ、考えて見給え」
 烏丸は二人に対して述べる。
「どうしてワームが、ネイティブが姿を現わしたのか」
「まさか」
「あいつが」
 二人は直感でワーム、ネイティブの後ろにいる存在を感じた。それは彼等の知る限り一つしかなかった。
「可能性は否定できない。いや」
 烏丸も同じだった。彼もまたあの存在を察していた。
「一つしかないな」
「そういえばそうでした」
 橘は重苦しい様子で口を開いた。
「あいつが何処から来たか、そして今まで何をしてきたかを考えれば」
「今回のことも」
「そうだな。では三人が帰ってから会議を開いてくれ」
「わかりました」
 橘が烏丸に答える。ライダー達のリーダーは彼が勤めているのだ。剣崎がサブリーダーというわけである。これは橘の統率力と実績を買ってのことだ。彼がボードの最初のライダーであるということは大きかった。
「それでは」
「所長」
 事務所に広瀬栞が入って来た。彼女もボードに復帰していたのである。烏丸の秘書的ポジションにいる。黒いスーツとズボンという格好である。
「三人が戻って来ました」
「そうか、無事だったか」
「はい、何とか」
「何とかってまさか」
「渋谷でまた」
「私の危惧が当たったようだな」
 烏丸は栞の報告を聞き暗い顔で呟いた。
「残念なことだが」
「怪我はありません。それは大丈夫でした」
「そうか、彼等には悪いがすぐに会議だ」
 彼はそう栞に告げる。
「わかったな。それでは」
「はい」
「では君達も頼む」
 烏丸は橘と剣崎に顔を戻してきた。
「重要な会議だ。いいな」
「ええ」
 剣崎は深刻な顔でそれに応える。
「やっぱり俺達はあいつとの戦いを続けなければならないんですね」
「それが仮面ライダーとなった者の宿命だ」
 烏丸は沈痛な顔で剣崎に述べる。
 
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