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ハドラーちゃんの強くてニューゲーム

作者:モッチー7
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第3話

 
前書き
アニメ版のハドラーの月命日が16日と決まった様なので(涙)……
その月命日にうぼのあん氏(https://www.pixiv.net/users/159931)の16年前に戻ってやり直すハドラー(https://www.pixiv.net/artworks/86959749)を参考に(パクった)、ハドラー様が魔法騎士レイアースの獅堂光の様な姿になるお話を作ってみました。

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/8799426

ハーメルン版→https://syosetu.org/novel/285717/

星空文庫版→https://slib.net/116880 

 
2周目(こんかい)における勇者アバンとの最初の戦いを終えたハドラーちゃんは、その足でヨミカイン遺跡の魔導図書館に向かう。その目的は、大魔王バーンに通用する呪文を手に入れる為である。
今使える呪文はバーンには全く通用しない。
ハドラーちゃんがそう思える最大の理由が、1周目(ぜんかい)バーンから貰った極大閃熱呪文(ベギラゴン)の存在である。
悪く言うと、ハドラーはバーンに出会うまで極大閃熱呪文(ベギラゴン)が使用出来なかったと言う事になる。
更に言えば、そんな極大呪文をポンポン部下にくれてやれるバーンの底無しと言っても良い底力の空恐ろしさを思い知らされる。
(どう考えたって……バーンからの貰い物がバーンに通用するとは思えん。となれば、それを超える呪文を身に着ける必要が有るのは必定だ!)

なのだが、魔導図書館に着いてしばらくして、ハドラーちゃんが不機嫌になる出来事が2つほどやって来てしまった。
1つ目は、ハドラーちゃんの現在の衣装。
魔族の力と超魔生物の力の両方が使えるのは好都合だし、ダイにへし折られた覇者の剣も元通りなのはありがたい。けど、何故か弱い小娘の姿で復活させられているのだ。
そのせいで、外見的な威厳や貫禄が完全に失われ、魔王軍の中でもヒュンケルと同じくらい浮いた外見(そんざい)になってしまった。無論、外見だけでは魅力や実力は計りきれないのも事実だし、外見でとやかく言う奴など名声や成果などで黙らせれば良いと言われればそれまでであるのだが。
それでも、魔王軍の頂点である以上、魔王の威厳を大事にするのがハドラーちゃんの筋であり意地なのである。
と言う訳で、豪勢な衣装で小娘の様な外見を誤魔化さなければならないのだが、どう言う訳か魔軍司令時代のハドラーがバーンにされた仕打ちを思い出させる忌々しいマントまで無傷でハドラーちゃんの手元に戻っていたのだ。
魔軍司令時代の時はノリノリで着用していたあのマント。その重厚なデザインになった本当の理由は、ハドラーの胸元に内蔵された黒の核晶(コア)と呼ばれる最凶の極大爆弾を隠蔽する事。
そんな事とは露知らずに着用していたのだから、あの時のハドラーは正にピエロである。
それを、バーンを裏切ってハドラーの敵となったバランに教えられた時は、ダイやバランとの決闘を邪魔された怒りと、バーンに捨て駒扱いされた悲しみと、なに1つ自由が無かった己の立場への悔しさが入り混じり、大人げ無く絶叫しながら泣き崩れたハドラー。
故に、ハドラーちゃんにとって魔軍司令時代のマントは、この世から完全に消し去りたい黒歴史以外の何者でもないのである。
因みに、バーンの側近中の側近である筈のミストバーンもその事実を知らなかったのだが、ハドラーの胸元に内蔵された黒の核晶(コア)を起爆させたのがミストバーンだった為、ハドラーちゃんがこの事実を知る術は無い。
が、先ほど言った通り、今のハドラーちゃんの外見はか弱い少女そのもの。だから、黒歴史でしかない魔軍司令時代のマントを嫌々ながら渋々着用しているのである。魔王としての外見的な威厳と貫禄を守る為に。
因みに、ハドラーちゃんは今でも胸元に黒の核晶(コア)が埋め込まれていないか常に念入りに確認し、その度に安堵するのであった。

そしてもう1つは、死の大地の調査に向かわせたガーゴイル達の報告が、ハドラーちゃんの予想とは大きくかけ離れていた事に起因する。
「穴を掘っている?」
「はい。海底から死の大地に穴を掘っているのです」
ガンガディアは意図が判らなかった。
「その様な事をして、何か意味があるのかね?」
その質問に対し、ハドラーちゃんがガーゴイルに質問する形で返した。
「その穴に何かを持ち込む様子は無かったか?」
それを聞いたガンガディアが漸く合点がいった感じとなった。
「なるほど。つまり、その穴の奥が大魔王バーンが地上を消滅させる為の重要な場所となる訳ですね?」
それを聞いたガーゴイル達がマジで青くなった。
「えっ……」
呆れるガンガディア。
「まさかと思うが……そこまで調査せずに引き返したのかね?」
みるみる小さくなっていくガーゴイル達。
「いや……あの……」
どんどん底無し沼にはまっていくかの様に墓穴を掘るガーゴイル達……とは別の意味で青くなっている者がいた。
ハドラーちゃん自身である。
(海底から穴を掘っていると言う事は、そこがいずれ魔宮の門となる場所。そこに穴だけがある……まさか!?)
「もうよいガンガディア」
「は?ですが、部下のたるみを修正しておきませんと―――」
「言わんとしている事は解るが、まだ大魔宮(バーンパレス)が完成していない時点で、死の大地の調査はこれで終わりだ」
「……よろしいのですか?」
ハドラーちゃんが残念そうに答えた。
「……ああ。今死の大地に行ったところで、出来る事は大魔宮(バーンパレス)建城の足を引っ張るだけ。バーンに逢える可能性が極めて低い」
「つまり、奇襲する意味が無いと?」
ハドラーちゃんが残念そうに首を縦に振る。
大魔宮(バーンパレス)は、死の大地の地下に隠されていた大魔王バーンの最重要拠点。地上消滅計画遂行時のバーンの居城にして地上界消滅作戦の要でもある。
そもそも、現在のハドラーちゃんはバーンの現在地を知らない。確かに悪魔の目玉を使ってフローラ王女とのやり取りをバーンに魅せ付けたが、それだって悪魔の目玉同士のテレパシーの様なモノを利用したに過ぎない。
だからこそハドラーちゃんは死の大地の地下にある大魔宮(バーンパレス)に賭けたのだ。
が、その賭けは空振りに終わった様だ。
どうやら、バーンは納期度外視で大魔宮(バーンパレス)やピラァ・オブ・バーンの機能美や性能美を追求している様である。地上を完全確実に消滅させる為に。
(いきなり出鼻を挫かれる形になったな。ま、この点は俺がバーンの本気を診誤ったにも非が有るがな)
その結果、ハドラーちゃんはプランBに全振りする覚悟を決めた。
それは、アバンの使徒やアバン自身にちょくちょくちょっかいを出して彼らの成長を促しつつ、バーンの配下達をじわじわと嬲り殺し、最終的にはバーンをハドラーちゃんの眼前に引き釣り出すのである。
だからこそ、今回の様に死の大地の調査が空振りになった時の為に、あえて勇者アバンの旅立ちの切っ掛けであるフローラ王女誘拐未遂事件を起こしたのだ。
ハドラーちゃんにとっては、そのプランBの方が気晴らしの心算だったが……
(こんな遠大な計画の方に全力を注がねばならなくなるとはな……永い戦いになりそうだ……)

更にしばらくして、悪魔の目玉からキギロがアバンと交戦したとの報告が入った。
「ま、今回は上手く逃げられちゃいましたが、また向かってる来る事が有れば……よろしいですね?ハドラー様お気に入りのアバンの頸を斬ってしまっても」
それに対し、ハドラーちゃんは鼻で笑いながら了承した。
「だとすればそこまで。アバンは俺の遊び相手に成れる器ではなかった……それだけの話だ。好きにしろ」
「ハァイ!では、失礼!」
悪魔の目玉の報告が終わった途端、ハドラーちゃんが腹を抱えて大笑いした。
「クックックッ!観たかガンガディア」
「キギロの顔が、不自然に半分しか映ってませんでしたな」
キギロ(やつ)の強がり、なかなかに笑えたぞ……ここまで来い、アバン!」

一方、既に敗走を隠す為の嘘がバレている事に気付かないキギロが悪魔の目玉に八つ当たりをする。
「このチクリ魔共め!ボクが気付くのにもう少し遅れていたら……」
対して、キギロに理不尽に殴られた悪魔の目玉が逃げ出した。ただ真面目に現状報告をしていただけだと言うのに……
「ハドラー様にこの醜いお姿を御見せするところだったじゃないか!」
その後、空と地面(・・)を確認したキギロは、わざと仰向けに倒れた。
「だが、今は夜だ。よーしよし、ボクはまだツイてる!」
ハドラーちゃんがキギロに与えた使命。
それは、超巨大なマンイーターを使ったモンスター群の凶暴化。
地中に潜む巨大マンイーターが日中は地底で魔力を蓄え、夜間になると森中に張り巡らせた無数の根を使ってモンスター達に魔力を分け与える。そうする事でモンスター達は急激に力が増し、極端に大きくなる個体を発生させ易くするのだ。
そんなキギロの最後の切り札を遂にきろうとしているのである。

話をヨミカイン遺跡の魔導図書館に戻すと、ハドラーちゃんは1冊の本に夢中になって行った。
「良い……良いぞこの場所!素晴らしい!」
その本とは、「破邪の洞窟調査資料 途中経過」である。
「地上の神が人間どもに破邪の力を与える為に造った大試練!未だ完走者0の底無し巨大ダンジョン!階数が増えれば増える程困難になる攻略!1階に1つ用意された呪文習得所!これだ!これこそ、俺がバーンの頸を斬る為に手に入れるべき力だ!」
正に、夢見る乙女の様に目を輝かせるハドラーちゃん。だが、「破邪の洞窟調査資料 途中経過」から教わった術には1つ問題があった。
「ただ……その破邪の洞窟がある場所がカール王国の領土内とは……まあ、カール王国もいずれは陥落させる心算だが、それまでは、大人数で破邪の洞窟の調査を行うのは……難しそうだな……」
そして、冷静になったハドラーちゃんがキギロの嘘報告の内容を思い出した。
「あ。そろそろアレ(・・)を回収してやる時間だったな……しにがみ!」
ハドラーちゃんに呼ばれたしにがみ達がハドラーちゃんの眼前に集まる。
そして、ハドラーちゃんの命を受けて何処かへと飛び去って往った。
「もし……キギロが俺の知ってる通りの運命をまた(・・)辿るのであれば、こちらも考えておけねばな……」

数日後……

1体のさまようヨロイが地底魔城の片隅に向かって歩いていた。その手にはジョウロが握り締められていた。
そして、1本の幼木を発見し、その周りの床に水をかけて濡らし始め―――
「オォイ!この空っぽ野郎!水をかけるならちゃんとボクにかけろ!周りの岩ばっか濡らしてどうするんだよぉ!」
そう、結局アバンに敗れたキギロは、習得したての大地斬をもろに受けた直後、自身の体内に種子を作ってそこに自分の自我と記憶を遷し、それをしにがみ達に回収させる形で地底魔城に逃げたのである。
だが、何故かさまようヨロイがしにがみ達を叩きのめし、キギロの種子を奪って地底魔城の片隅に埋めてしまったのだ。
「それと、ボクを植える場所を変えろ!こんな薄暗い所に植えるな!」
それに対し、さまようヨロイの答えはこうだ。
「そんなに太陽が恋しいかね?」
「当たり前だろ!植物は陽の光を浴びて育つのだ!そのくらい解れ空っぽ!」
さまようヨロイの目が怪しく光る。
「なら……その光を阻む物を壊したいとは思わんかね?邪魔だとは思わんのかね?」
キギロは、正体不明の異様な不気味さを感じて背中を冷たくした。
「な……何を言ってるんだ?おまえ……」
その時、キギロはハドラーちゃんが言ったバーンへの愚痴を思い出した。
「あの太陽至上主義のボケ老人がいる限り、地上が俺の物になった事実は誰も認めんであろうな……全く、忌々しいボケ老人だよ」
その途端、キギロは嫌な予感がした。
「まさか……その声は……」
だが、キギロの嫌な予感に反して、さまようヨロイはこの場を離れた。ジョウロを握りしめたまま。
「あー!?帰るな!戻って来い空っぽぉー!」
1人地底魔城の片隅に残されたキギロは、1人寂しく愚痴をこぼす。
「大魔王バーンめ、良い趣味してるよ。ボクがちょっとしくじっただけで、こんな薄暗い所に植えちゃってさぁ」
そしてそれは、キギロにアバンへのリベンジを決意させるだけの屈辱となった。
「見てろよぉ!大魔王バーンに勇者アバンめぇー!」

ただし、例えさまようヨロイに種子を奪われる事が無くとも、どの道殺風景な場所に植えられる運命であった。
「野菜を育てる過程であえて水を抜いたり過酷な環境下に置いてストレスをかけると、野菜自身がその場に適応しようと果実の中に糖分や栄養を蓄え、結果的に果実が美味しくなる……らしいのだ」
「それをキギロで試すとは、名誉欲が強いキギロには堪える罰ですな」
「この屈辱が、キギロを更に強大にしてくれる……かもな」
そしてそれは、ハドラーちゃんに新たなる決意を固めさせる事にも繋がった。
(ならば……アバンやキギロだけでなく、この俺自身にも適度なストレスを与えて視るとするか。この……)
ハドラーちゃんが「破邪の洞窟調査資料 途中経過」をチラッと見る。
(破邪の洞窟を使って)

その頃、魔界では複数のドラキーがとある豪邸を覗き見していた。
本来ならこの様な絢爛豪華な豪邸を建てるに適さないのが魔界の特徴であって、そこに豪邸を建てると言う事は相当な実力者と言える。
その実力者の豪邸を覗き見するのだから、このドラキー達もかなり剛勇であり、同時に無謀者である。
が、そんな盗人らしからぬ勇気を買われたのか、ドラキー達はなんのお咎めも無く、とある洞窟に吸い込まれていった。

そのドラキー達が入って行った洞窟の奥で、1人の男が勝ち誇った笑みを浮かべた…… 
 

 
後書き
三条先生ごめんなさい。
破邪の洞窟の内容を勝手に書き換える以外にドラゴンクエストIX以降の呪文をハドラーちゃんに覚えさせる方法が思いつきませんでした。

キギロ「オォイ!この空っぽ野郎!ボクの活躍を書くならちゃんと丁寧に細かく書け!たった数行で済ますんじゃない!あー!?帰るな!戻って来い空っぽぉー!」 
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