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私の 辛かった気持ちもわかってよー

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5-2

 9月の初め、大会の会場は和歌山だった。二人っきりで電車に乗って・・・私、緊張で何を話していいのかもわからず、黙ったままだったのだ。行長コーチは夜に別行動で来ると言っていた。夕方近く、会場に着いて、軽く練習して、ホテルに入った。といっても、ビジネスホテルのようなものなので、お互いにお風呂に入って、簡単な夕食を取って・・・

「ねぇ その辺りを散歩しない? まだ、熱いから 明るいうちに夕涼み」と、誘われて、近くの公園に座って・・・

「山葵 あなた 本当に良く私についてきてくれたワ ありがとう 山葵が居なかったら ここまで、これなかったワ 私、きつい言葉言ってたのにー 頑張ってくれて 私ネ 新入生の名簿であなたの名前を見つけた時、心が躍ったのよ」

うっ くそー やっぱり、そうなのだ 私を的にしていたのだと、思っていたら

「夏の中学生の大会であなたの試合を見たって言っていたでしょ 覚えている?」

忘れるもんかー あの時のことは そして、あのウワサを流したのは、お前なんだろがぁー!

「あの試合のあなたを見て 思い出したの 私の中学の時に 似ていたの 私に・・速くてもスピンのかかるサーブで・・それに山葵のはその上にスライスがかかってた だから、入学式の時 再会して 絶対にペァを組んで 頂点に立つって決めた 幸いかどうか 西田が膝 痛めちゃって これは、偶然なんかじゃぁ無いってね 絶対に山葵を伸ばしてやるって そして、この子は私を超えるだろうって」

その時は、私は、何を勝手なこと言ってんだと、反感を覚えながら聞いていた。そして、この時しかないと、思い切って

「あのー 璃々香先輩 あの時のことって誰かに話しました?」

「あの時のことって?」

「ウチが・・そのー 襲われた・・こと」

「うふっ そんなこと話すわけないじゃぁない 別にどってこと無かったんだし ちょっと つまづいただけよ あんなこと・・・ 山葵 まだ 気にしてんの? もう 忘れたか思ってた」

「えぇー 本当ですか?」

「ウン そんなこと 今まで 忘れてた」

 本当だとすると、半分しか信じられなかったんだけど、岸森璃々香じゃぁ無かったんだ! 私 ずーと 思い違いしてたのー・・・逆恨みしちゃって ゴメンナサイ・・・

「もうひとつ 聞いていいですか?」

「なぁに?」

「先輩 彼氏って いらっしゃるんですか? ときどき、試合の時見る あの人」

「あっ バカねぇー 私 彼氏なんて居るわけないじゃぁない あれは、私のお兄ちゃんヨ 学志館大学の3年生 うまくないけどテニスやってるの 私のこと可愛がってくれてのよ」

「えっ そーなんですかー ウチ 彼氏かと思ってて・・」

「うふっ そう見えたの? 仲良いのよー お兄ちゃん 山葵のこと褒めてたよ 短期間で、すごく成長したって すごい 努力したんだろうなって それと、私に似てるって テニスのスタイルが 攻撃的で」

「そうですか 認めてもらえたみたいで うれしいぃー 先輩 明日 私 頑張りますね 先輩と一緒に 頂点に立ちたいです」と、私、単純だから、涙が出てきていた。

 次の日、私達は勝ち進んだ。私もサービスエースを何本も取っていったのだ。洛中国際付属のペァなんかも出場していたけれど、すでに敗退していて、私達は決勝まで進んで・・・だけど、最終このゲームを取れば、何とかタイブレークにまで持ち込めるという時になって、私、ファーストサーブが入らなくて、セカンドが甘くなってしまって、リターンが返ってきた時、璃々香先輩が動いて・・・その時、ガクッと膝から崩れ落ちていた。40-30になってしまった。

「山葵 ごめん 私 右足 力入らない 山葵 ファースト決まらなくても セカンドも思いっ切り打って! 山葵のサーブは向こうには返せないわ それが決まらなくても 怒らないから・・ 山葵のせいじゃぁ無い」

 そうなのか 璃々香先輩 脚のこと 無理してここまで・・限界なのだワ

 私は、チカラを込めて・・・だけど、フォルトの声が・・そして、セカンドの時、璃々香先輩は振り返って私のほうを見て、頷いていた。私は、精一杯身体を弓なりに反らして・・届け 先輩の想い・・・スピンで伸びて、バウンドした後大きく横にはずんで・・・ヤッターと思ったが・・

 私は、コートの外で涙が止まらなかった。どうしてぇー ボールひとつなのに・・一番大事な時にはずしてしまって・・・。

「すみません 先輩と頂点に立てなかった」と、泣きながら、ポツンと言う私の肩を、璃々香先輩は優しく抱いたまま何にも言わなかったけど・・・どれだけ時間が過ぎただろうか

「ごめんなさい 色々とネ 最後 山葵に押し付けた形になってしまって 私ね 本当は、山葵に嫉妬してた部分あるの 中学生のあなたの試合を見た時 私の形に似ていたけど、あなたは違ったの ステップを踏むようにボールを返していて 私には無い可能性があるように思えて・・・羨ましかった だから・・・」

 あれぇー 何だか、先輩の様子 いつもと違うなって感じていた。嫉妬していた?  って? でも、一応私に謝っている だけど、なんか心に引っかかる言い方。

「山葵 直ぐに 高校選抜の予選があって 京都府の大会もすぐよ まぁ 選抜は選ばれても辞退って形だけどね 泣いている間は無いよ 山葵はね 追い詰められて、初めて可能性を伸ばすのよ 現状のままだと、それは後退してるってことだからね 帰ったら、又、しごくからね いや 今度はライバル ね」 
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