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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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決意を胸に

<アリアハン>

「楽しい方々ね」
アメリアは嬉しそうに微笑みアルルに呟く。
「まったく…騒がしい連中じゃな!」
「す、済みません…父がアレなもので…皆………」
溜息混じりの老人の言葉に、申し訳なさそうに謝るティミー。

「大丈夫よティミー君!すごく楽しくて、幸せな気持ちになれるから……ね、アルル!」
「え…そ、そうね…確かに、リュカさんはトラブルメーカーで、厄介な事ばかり巻き起こすけど…一緒にいると楽しくて、心強くて、安心出来るわね…」
母の振りに思わず本音を語るアルル…


「悔しいなぁ…」
しかしティミーは何やら悔しがっている。
「何故ティミー君?」
「はい…アルルにとって、心強くて、安心感がある男は、僕だけであって欲しかったから…まだまだだなぁ、僕も…」
そんなティミーの台詞を聞いて、思わず爆笑するアルル。
「あはははは…そうよ、まだまだなのよ!あのトラブルメーカーを押さえ付ける事が出来れば、貴方だけに安心感を寄せられるわよ!」

「えぇ!あのトラブルメーカーを!?ハードル高いなぁ…あの人は独特の感性で生きているからなぁ…」
そして室内に笑い声が巻き起こる。
とても幸せな笑い声が…
因みにミニモンは、黙々とケーキを食べている。


「ふふふ…ティミー君はお父さんを尊敬しているのね」
「はい、一部を除いて尊敬しております!」
「どういうお人のなの?」
リュカの事を色々と聞いてくるアメリア…
「あの…あまり父に興味を持たない方が…」
照れくささとリュカの手癖の悪さが相俟って、父について語るのを少し躊躇うティミー。

「ふふふ…ティミー君、自分のお父さんなのだから、自信を持って良いのよ」
「そ、そうですね………えっと、父は想像を絶する不幸な幼少期を過ごしました。母親を攫われ、父親を目の前で殺され、10年という時を奴隷として虐げられ………それなのに父さんは、何時でも明るく前向きで優しく生きてます。心身共に強く、如何なる困難にも負けない…そんな男が僕の父なんです!父が居れば、どんな事態も解決してしまう…何ら確証はないけど、そう思わせる心強い人物です!」
自分では気付いていないが、リュカの事を語っている時の彼は目を輝かせ、それはもう嬉しそうなのだ。

「それじゃ、剣術の腕前も凄いのかしら?」
嬉しそうに父を語る彼の事を、これまた嬉しそうに眺める娘に向け、急に尋ねるアメリア…
「え!?…そ、そうね…正直、アリアハンの兵士全員でかかっても、かすり傷一つ付けられないわね!バラモスと戦った時だって…リュカさんはワザとバラモスを怒らせ、攻撃を自分一人に集中させてくれたから倒せたんです。でもリュカさんは、バラモスの強烈な攻撃を物ともしなかったんです!物理攻撃も魔法攻撃も掠らず、顔色一つ変えることなく避け続けたんですよ!正直、(オルテガ)より強いでしょうね…」

「まぁ…頼もしいですねぇ!…じゃぁ、バラモスを倒し世界を平和に導いた、本当の英雄はリュカさんなのかしら?アルルの事が世界に知れ渡っているけど、真の英雄はリュカさんって事?」
「そ、それは…」
母の何気ない言葉に、自身の非力さを痛感し言葉を詰まらせるアルル。

「それは違いますお義母さん!」
しかしティミーが力強く否定する。
「確かに父は強く、バラモスを楽に倒せたのはあの人のお陰です!しかし、バラモスを倒した功績は、勇者であるアルルの功績です!リュカは共に戦った仲間であり、そう言う意味で英雄と呼ばれるのは妥当ですが、リュカが真の英雄と言われるのは間違ってます!例えリュカが居ても、アルルの存在無くては、バラモスは滅びなかったでしょう!」
力強い言葉と共にアルルを見つめるティミー。
そしてアルルは…
「それでねお母さん…まだ話してない事があるんだけど………」
遂に意を決し、平和の訪れがまだである事を話そうとするアルル。

「あらぁ~…何かしら?もしかして初孫報告?」
「………い、いえ…流石にそれはまだです…」
母のホンワカした返しに、一気に力が抜けるアルル…
リュカで慣れたはずなのに、やはり実母だと勝手が違うらしい。

「あ、あのね…実は…まだ世界に平和は訪れてないの!!」
そして語り出す。
闇の世界の事、大魔王の存在、アルル達の旅がまだ続く事…更にはオルテガが生きているかもしれないと…



「………そう、貴女は明日にでも再度旅立つのね…」
瞳に悲しさを含み、アメリアが娘を見つめる…
「そ、そんな…やっと平和が訪れたと思ったのに…アルルが英雄として戻ってきたと思ったのに…」
アルルの祖父は、絶望感から項垂れてしまう。
「でも大丈夫よ!リュカさんも居るし、仲間も沢山居ます…何より私にはティミーが付いていてくれる!必ず大魔王ゾーマを倒し、世界に平和を取り戻します!」


少しの間、沈黙が室内を支配する…
しかしアルルは決意を秘めた力強い瞳で(アメリア)を見つめ続けた。
そしてアメリアはも、ある決意を持ってアルルに話しかける…
「私も一緒に行きます!」

「………」
「な、何を…い、言ってるの…お母さん…!?」
絶句するティミーと、辛うじて問い返すアルル。
「もうこれ以上は待ってられないわ!あの人が…オルテガが生きているのかもしれないのなら、私は自ら会いに行きます!今の貴女になら分かるはずよ…愛する人と離れ離れになる事の辛さが!」
アメリアは本気だった!
瞳に灯る決意の炎は強く、ただひたすら夫への愛が満ち溢れている。

「き、危険よ!私達は大魔王を倒しに旅立つのよ!お母さんは戦う事なんか出来ないでしょ!あ、足手纏いだし…それに………」
「今だから言うけど、あの人が旅立った時、私もついて行こうと考えた…でも、まだ幼い貴女(アルル)を連れて行く事も…残して行く事も出来ず、断念せざるを得なかった……確かに私は戦えないわ。間違いなく足手纏いでしょう!でも…話を聞いていると、リュカさんの側に居れば、アリアハンに残っているよりも安全なのではないですか?」
アメリアの決意は揺るぎそうにない…

アルルは説得の言葉が見つからず、困惑のままティミーへ目で助けを求める。
「お義母さん!確かに(リュカ)は強く頼もしいです…しかし、あの人も万能ではない!大魔王へと近付けば、それだけ敵の強さも増して行きます…そんな状況で、素人を守りながら戦い続けるのは困難の極み!どうか考え直して頂けませんか?貴女にもしもの事があっては……「いいじゃねーか!行きたいって言ってるんだから、連れて行けばよ」
ティミーの台詞を遮って、アメリアの同行を擁護したのは、みんなの残したケーキを独り占めにして食べていたミニモンだった!

「お前の親父はバケモノレベルで強い…素人のおばさんが1人増えても、守りきってくれるぜ!如何なる困難も、どんな事態にも大丈夫だよ!」
普段口の悪いミニモンが、リュカの事を褒めちぎる…
果たして何を考え…何を成そうとしているのか…?



 
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