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蕾の少女

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第四章

「問題よ」
「全くだな」
「誰なのかしらね」
「何処となく聞くかな」
「情報集めたいわね」
 こんなことを話した、そうしてだった。
 青空を親として観ていっていた、すると。
 娘は日増しに奇麗になっていく様に見えた、そして。
 そのうえでだ、お洒落度もアップしていってだった。もう美少女と言ってもいい位にまでなっていた。
 だがそれでもだった。
 誰かを好きになった、そのことはわかってもだった。
 両親はそれが誰かわからずそれでだった。
 娘に勘付かれない様に密かに聞いても答えは得られずだった。
 娘の友達からも何処となく聞いてもだった。
「わからないな」
「そうね、あの娘が誰を好きになったか」
「ちょっとな」
「わからないわね」
「交際しているかどうかもな」
「わからないわ」
「ああ、これはという手がかりがな」
 これがとだ、夫は妻に話した。
「本当にな」
「ないわね」
「どうしたものだろうな」
「まあね」
 妻は夫にその考える顔で答えた。
「粘り強くね」
「情報を集めるか」
「こうしたことは焦らないで」
 そうしてというのだ。
「粘り強くね」
「やっていくことか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「今はね」
「調べていくか」
「あの娘に気付かれない様に」
 このことには気を付けてというのだ。
「そのうえでね」
「やっていくか」
「ええ、根気よくね」
 こう話してだった。
 二人で親として娘の想い人が誰かも調べもした、だが。
 娘が五年生から六年生になった時にだった。
 塾から帰る娘を迎えに来た時にだ。
 車の窓からだ、娘がだ。
 同じ位と思われる年齢の黒髪が奇麗で爽やかな顔立ちの背の高い男の子と目をキラキラさせて話しているのを見た、そして。
 その彼の顔を覚えてだ、何も見なかったふりをしてだった。
 娘を助手席に入れて家まで送った、その後で。
 夫にだ、迎えに来た時に見た相手のことを話すと。
 夫はふと気付いた顔になって妻に話した。
「同じ小学校で三丁目のな」
「うち二丁目だけれどね」
「中紙さんのところの舜君だな」
「その子なの」
「ああ、実は中紙さんの会社と僕の会社は取引相手で」
 それでというのだ。
「お家に招かれたこともあるんだ」
「ご近所だし」
「それ言ってなかったか」
「言ってたかしら」 
 妻は首を傾げさせて応えた。 
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